難聴者と中途失聴者の心理学 の商品レビュー
当事者の声も聞くことができてよかったです。これからも聞こえについて困りごとがあっても生きやすい世界になっていってほしいと思いました。
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身近に難聴者や中途失聴者がいる方に是非読んで欲しい。 聴覚障害者の実際について、当事者の体験談から専門的な話までわかりやすくまとめられた本。 聴覚障害と一言に言ってもその聞こえにくさには様々なグラデーションがあり要因も多岐に渡る。またそこから来る社会生活上の困難もそれぞれで、タイ...
身近に難聴者や中途失聴者がいる方に是非読んで欲しい。 聴覚障害者の実際について、当事者の体験談から専門的な話までわかりやすくまとめられた本。 聴覚障害と一言に言ってもその聞こえにくさには様々なグラデーションがあり要因も多岐に渡る。またそこから来る社会生活上の困難もそれぞれで、タイトルの「聞こえにくさをかかえて生きる」という表現がしっくりきた。単に聴覚機能の障害というよりは、聞こえにくさをかかえていることによる生活上の困難そのものを取り扱った本だと思う。 印象深く読んだのは、ろう者は皆が等しく聞こえないので心情的に一致団結しやすいが、難聴者集団では聞こえづらさに応じて意識の断絶が生まれてしまい、「内なる差別」が発生するというくだり。難しい……。 また、終盤で情報保障の一環としての要約筆記にふれられた段があり、「要約か全情報か」と要約することの是非を問うているけれど、個人的には日本語の話し言葉を一字一句漏らさず伝えるのは善し悪し分かれる点であると感じる。 用意された原稿の有無や場によるだろうけれど、誰もが書き言葉のように理路整然と話せるわけではないし、個人の文字情報処理の得手不得手によっては音声をすべて文字化したことによって逆に話についていけなくなるという事態も想定される(文章の読解が苦手なひとは健聴者にも多く存在する)。海外映画の翻訳が音声と字幕でまったく同じ台詞にはならないように(一般に字幕だと一度に読み取れる文字数になるよう訳されていると聞いたことがある)、要約は必ずしも悪い側面ばかりではない。ただ、筆者の方は恐らく要約筆記技能者の入力速度の問題で情報量が足りなくなることを問題視されているのだと思うので、そこは技術の進歩で改善されることを期待したい。 APD(聴覚情報処理障害)についてもまとめられた項目があり、難聴と感じるほどではないものの軽微の聞こえにくさを抱えた当事者としては参考になった。参考文献にあったAPDの本も読んでみたい。
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