1,800円以上の注文で送料無料

共生微生物からみた新しい進化学 の商品レビュー

5

1件のお客様レビュー

  1. 5つ

    1

  2. 4つ

    0

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2021/08/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

コロナ禍が始まって1年半、共生微生物という観点で見た進化なのだが、出版は、ちょうど、コロナ禍の始まりの頃。それを思えば、本書で書かれている事実を政権や自治体の意思決定者が、あらかじめ、しっかりと理解できていれば、現在のような事態にはならなかったのではないかと思えてくる。結局の所、科学思考が、一般庶民の問題だけではなく、政策担当者(政治家や官僚)の教養となっていない、さらには、歴代そうしたことを無視して、政治にのみ関心を寄せてきたことの結果であったことが、現在の結果を招いたことを、本書から明確に読み取ることができるだろう。 人間社会は、他の生物から独立に成立して生活圏を維持できているわけもなく、微生物も含む多様な生物との共生態となっているということの前提を理解することは、特段、本書の広範な分野の取り扱いや引用文献の広がりに、めげるものでもないだろう。むしろ、当然のことで、政策的な本質は非常にシンプルだと思われる。本書にも引用されているが、東北大震災の教訓として、海岸線を長大な防波堤を築くことは、「想定外」の津波に対応することができるはずもなく、むしろ、いかに、いち早くアラートを出し、そうした危機的な状況から逃れることを指示(あるいは、示唆)できることができるかだ、ということだろう。 そもそも、人間にかぎらず生物は、微生物のみならず多様な生物との相互作用を通じて生存圏を維持するしかない。だから、抗生物質の多用は抗生菌の誕生を生むしかなく、ワクチンはとくにコロナのようなRNAウィルスに対抗するには、単に、ウィルスのバリエーションを増やしてしまうといったことになってしまうことになってしまうことを、知っておく必要があるだろう。

Posted byブクログ