キッズライクアス の商品レビュー
自閉症スペクトラムの高校生マーティンは世界を『失われた時を求めて』と結びつけて解釈する。 初めての普通校、周囲の人の反応、恋に落ちた相手、戸惑いながらも関係を築こうとする。他者を完全に理解できなくとも好意を抱くことはできる。 マジョリティの価値観による幸せが、そのままマイノリティ...
自閉症スペクトラムの高校生マーティンは世界を『失われた時を求めて』と結びつけて解釈する。 初めての普通校、周囲の人の反応、恋に落ちた相手、戸惑いながらも関係を築こうとする。他者を完全に理解できなくとも好意を抱くことはできる。 マジョリティの価値観による幸せが、そのままマイノリティの幸せとなるとは限らない。 普通とは何か、普通にならなきゃいけないのか。成長するということは別の人間になるということじゃないんだよ。マーティンがマーティンのままで成長する姿が教えてくれる。 生きづらさを抱えた人に届けたい一冊。
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青年の心情、見ている景色が美しく表現されていて、彼が嫌悪を抱くものも描写が可愛いなと思いながら読んでました。 青年の恋愛を通して現実の周りや彼の中の想像の世界への見方の変化が起こるところの表現は特に綺麗で引き込まれていきます。 本の装丁も綺麗でしたし、翻訳者のあとがきも含めて素...
青年の心情、見ている景色が美しく表現されていて、彼が嫌悪を抱くものも描写が可愛いなと思いながら読んでました。 青年の恋愛を通して現実の周りや彼の中の想像の世界への見方の変化が起こるところの表現は特に綺麗で引き込まれていきます。 本の装丁も綺麗でしたし、翻訳者のあとがきも含めて素晴らしい本です。
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16歳のマーティンは、自閉症スペクトラムです。米国では支援学校に通っていますが、映画監督の母親が撮影のためしばらくフランスへ行くことになり、姉のエリザベスと一緒に行くことになった。マーティンは、フランスで初めて普通の学校へ通うことになった。マーティンは「失われた時を求めて」を愛読...
16歳のマーティンは、自閉症スペクトラムです。米国では支援学校に通っていますが、映画監督の母親が撮影のためしばらくフランスへ行くことになり、姉のエリザベスと一緒に行くことになった。マーティンは、フランスで初めて普通の学校へ通うことになった。マーティンは「失われた時を求めて」を愛読していて、フランス語もしゃべれる。そして恋に落ちる。 初めての普通学校、周囲の友人たちの反応。メールで連絡を取り合う米国の支援学校の友人。父親が不在な理由。揺れ動く気持ちがよくわかる。 マーティンの目線で書かれているので、自閉症への理解にもつながるのでは? 訳者にも発達障害の子どもがいるという。
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自閉症の高校生マーティンの一人称でつづる物語。すごくよかった。 母が仕事で1か月間フランスに滞在するので、姉ともども同行することになり、マーティンは現地で「普通の」学校に通うことになる(アメリカでは療育センターに通っていた)。 その学校でめぐりあった思いがけぬ恋。新しい友人た...
自閉症の高校生マーティンの一人称でつづる物語。すごくよかった。 母が仕事で1か月間フランスに滞在するので、姉ともども同行することになり、マーティンは現地で「普通の」学校に通うことになる(アメリカでは療育センターに通っていた)。 その学校でめぐりあった思いがけぬ恋。新しい友人たちとの理解と誤解、衝突。 いつもとちがうものや、不規則なものが苦手で、こだわりの強いマーティンの心情や感性が、繊細な表現でつづられていて、実在感がリアルに伝わってくる。 自閉症というのははたして「治療」すべきものなのか。「僕らは僕らとして生きることしかできない 変えさせようとするのはやめて欲しい」とマーティンは考える。 たしかにそう。だいいち、自閉症でない「普通(定型発達)」の人たちだって、互いに理解しあえなかったり、衝突を繰りかえしたりしている。自閉症のマーティンは、たしかに、人の感情を推し量るのが苦手かもしれないけれど、その分余計に深く考えている。彼が、何度も傷つきながらもあきらめずに、人々と関わりを持とうとする姿は尊い。 ********** でも、養育センターで教わったさまざまな技術(人の表情から感情を推し量る方法とか)や、両親の教え――たとえばマーティンが幼いとき、両親が根気よくキャッチボールを教えたり水泳を習わせたりしたこと――も、マーティンにはたしかに役立っている。もちろん、13歳のとき父から『失われた時を求めて』をもらって、それが愛読書になり、周囲の世界を理解する足場になったことも。だから「治療」はできないし、またその必要はなくても、周囲の世界とある程度うまく関わっていくためのいろんな方法は学んでいけるのだろう。マーティン自身、友人たちとわだかまりを解いた場面で「療育センターでの訓練が、新しい世界でうまく応用できたようだった」と感じている。(とはいっても、またそのあとに別のショックを受けることになるのだけど。山あり谷あり。逃げずに立ちむかうマーティンはえらい。) 両親をはじめ、周囲の大人たちがみんな不完全でもがいているのもいい。だって大人って、ほんとにそうだから。父はマーティンに対してすごく愛情深いし、理解も深いけれど、たぶん社会的な現実の把握が甘くて、破綻をまねいている。母親は有名な映画監督で、仕事での評価は高いし、マーティンへの愛情ももちろん深いけれど、自分の理想型に息子をはめたがっているところがまだあって、ちょくちょく的外れなことを言う。愛情だけでもだめだし、理解が深ければそれでいいというものでもない。答えの出ない世界だからしょうがない。でも、ふたりともマーティンと正面から向きあっているから、そういう不完全さのなかからもマーティンは自分なりにいろんなものを吸収しているのだろう。そう思うとなんか泣けてくる。 わたし自身は発達障害の家族がいるわけではないのだけど、ひきこもりの息子と、メンタル不調の息子をかかえて、どういうふうに向きあっていけばいいのかと日々悩んでいるので、いろんなところが刺さってきて、かんたんにはまとめられない本だった。Kindleで買ったので、折りに触れてまた参照します。
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自閉スペクトラムの10代男子本人視点での物語。 慣れない土地、初めての同世代の子たち、周囲の状況とずれてしまう、話していると周りがいきなり怒りだす…と、毎日ハラハラで、理不尽だらけなのが実感できる。 その中でも、思春期ならではの異性との出会いがあり、衝突があり、離れてまた近づき…...
自閉スペクトラムの10代男子本人視点での物語。 慣れない土地、初めての同世代の子たち、周囲の状況とずれてしまう、話していると周りがいきなり怒りだす…と、毎日ハラハラで、理不尽だらけなのが実感できる。 その中でも、思春期ならではの異性との出会いがあり、衝突があり、離れてまた近づき…、 誰だって、自分のコアを変える必要はない、それぞれ多少違うのが当たり前で、周りとぶつかりながら自分の世界を広げていければいいな、と思える本。
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傑作 物語を通じて一人の心情を追い痛み伴う青春はあれど誰も排除しない切なく美しい物語 他者を理解するのは難しいけれど尊重して距離を保つ生き方をするフランスの少女 自分がどう生きたいかを模索する主人公との恋の物語 読んでよかった。
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