商う狼 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
「金は刀より強い」と十組問屋の旦那衆の古臭いやり方から、経済改革を果たした男、杉本茂十郎。 経済を廻すものは誰なのか? それは何のために行うのか? 橋や建物の改修工事は? 永代橋が崩落したために妻と跡取り息子を亡くした男が何を求めたのか? 今こそ、読むべき作品なのだと感じました。 前作は大奥を舞台にした女性の職業小説でしたが、今回は江戸というお上のいる大きな都市での経済改革をした男性の物語というべきでしょう。 この辺りは私の歴史の知識が浅くて、杉本茂十郎という人物がいたことも知りませんでしたし、元々は飛脚問屋の婿養子になった人物。飛脚の運賃に関する上奏をしたため、「飛脚定法」という価格を定めたそうです。 そのことがきっかけとなり、十問屋衆と争うことになります。 そこから始まる物語は、まるで今の社会を映し出す鏡のようでした。 十問屋が甘い汁を吸っている大企業の姿に見え、必死に経済改革を推し進めようとする茂十郎を陥れるようになるお上は現在の政府に。 「貧すれば鈍する」、「衣食足りて礼節を知る」という言葉があるように、お金というのはこの小説の中でたびたび例えられる血液のようなものだと思います。それが茂十郎が語るようにお上や大店の人々の手によって詰まってはいけない。 そんなことになれば、人間であれば死んでしまう。 そんなことも考えてしまいました。 そして、茂十郎がこの仕事に命を懸けるきっかけとなった永代橋の崩落事故。ここで、彼は妻と息子をなくすのですが、その後、肝心の橋の再建をするのに、資金をどこから調達したらいいか、意見がバラバラ。 本当に江戸時代の話なのかしらと思ってしまいましたよ
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