新しい目の旅立ち の商品レビュー
ゲンロン連載で読み、単行本となって再読。何とも不思議な「旅」を綴った哲学エッセイ。都市の中産階級出身と自負している人は特に、読みながら思考のうつろいを感じられると思う。不思議な読後感で夜に読みたい一冊。
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当初の旅の目的が期待外れに終わり、ふと我に帰り、「私は何から逃げているのか?」と自問する作者。 それは、「地球愛護」という皮を被った「人間愛護」への疑念であり、最後には、「僕は都市の人間だ。そして僕は生きていきたい」と覚悟を決める。 同じ場所に帰っていく作者は、しかし、新しい...
当初の旅の目的が期待外れに終わり、ふと我に帰り、「私は何から逃げているのか?」と自問する作者。 それは、「地球愛護」という皮を被った「人間愛護」への疑念であり、最後には、「僕は都市の人間だ。そして僕は生きていきたい」と覚悟を決める。 同じ場所に帰っていく作者は、しかし、新しい目を獲得したことで、全く違う場所で生きていくのだ。 地球に住む我々は、「自らの役割を最大限に果たす」という責任を押し付けられている。 「社会における善人」として最大限に振る舞うことが、暗に要求されているが、これはどういうことか?と、作者は問い掛ける。 我々は何にせかされ、干渉され、強請されているのだろう?人間たちの自作自演は、地球にとっては、痛くも痒くもないこと、いや、それも含めて「全て」地球上で起こる「自然」なことなのに。 地球が助けてくれ、と叫んだのか? 結局のところ、「人間が」生きていく上で、「いい気分」になれるように自分自身に働きかけているだけなのではないか? 作者は、それに気付き、都市に帰っていった。 彼は、2度と、「地球を守る」などという、カッコいいだけの虚言など口にしないのだろう。
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タイの作家の作品って読んだことないなと思って内容見ずに手にとってみたのだけど小説ではなくエッセイだった。作者はタイのメディア王の息子でアメリカで教育を受けておりデザイナー、映画監督、ミュージシャン、作家として活躍しているのだそうだ…。まぁ平たく言ってしまうと金持ちの道楽ボンボンっ...
タイの作家の作品って読んだことないなと思って内容見ずに手にとってみたのだけど小説ではなくエッセイだった。作者はタイのメディア王の息子でアメリカで教育を受けておりデザイナー、映画監督、ミュージシャン、作家として活躍しているのだそうだ…。まぁ平たく言ってしまうと金持ちの道楽ボンボンっていう感じだけどそれなりにどれもものになっている感じなのが凄いかもしれない。彼の国の実態がわからないのでなんとも言えないけれども…。ということでこの作品だけど作者があるスカラシップを得て外国で一定期間暮らすことになり選んだ先がフィリピンと日本でそのフィリピン編がこちら。自然と人間、みたいなテーマとぼかしてあるのだけど正直どういうスカラシップなんだろう...という気がしないでもない。いったんフィリピンに渡ったはいいけどどうも違うと迷った挙げ句に黒魔術の島があると聞きつけてそこに渡る。シキホール島といって実在するのだけどそこに渡って何故か日本人が経営しているコテージに滞在し地元の若者に島内を案内してもらったり「黒魔術師」のところに行ったりするのだけど正直なところそんなにおどろおどろしいこともなく日本の田舎にもちょっと前までいたような呪い師、くらいのイメージ。その合間にスピノザだソローだと哲学的な思索にふけるのだけども…そうです…全然良さがわからず哲学的な思索も鼻につくし、とあまり良い印象は得られませんでした。私は。結局のところ何が言いたかったのかいまだによくわからずで…。
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現実の旅と思索の旅を行ったり来たりしながら進む。作者のぼんやりしていた自然に対する考え方が徐々にはっきりして、都市で生きる力を得て旅を終える。 訳者解説では、タイの時代背景と作者の関係がコンパクトに理解でき、より内容に深みを与えてくれている。
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「自然に帰る」事に憧れつつ行詰りを感じたタイの作家が訪れた「黒魔術の島」。 そこでの体験からまずスピノザ、そして、フォロー、ラヴロック等を参照し、そこにある「ロマンティックな神秘主義」に気付き、それを脱ぎ捨て街(スピノザ)に戻る。という思索の過程を綴る哲学紀行。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
竜頭蛇尾。 かなり期待させる冒頭から、1/3くらい読み進んだあたりで、ん?まだここ?もしかしてこの先、何もない?という不安が頭をよぎる。 そして、案の定、たいしたことはなんもなかった。 ゲンロン叢書ですから、当然、期待してたんだけどな 何もなく終わるのでもよいのだけど、それにしてもね。 スピノザとソローを読めば、この本を読む意味はあんまりないんでは? 現代においてスピノザとソローをガイドに思考する入門書? どこまでも平凡だった。
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哲学と旅。硬すぎず、軽すぎず。 タイ人が書いた作品だが、もともとの文章との相性か、日本語訳者が上手なのか、読みやすかった。 自分がフィリピンを旅したこととも重なり、この本とはいい出会いだったと思う。
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「世界規模の問題」を語る本も、「個人的な悩み」を語る本もあるけど、その「間」を繋ぐ本は滅多にない。哲学書より哲学が詰まった一冊。まさかの展開に脱帽しつつ、その意外な結論は、意外なほどに僕自身の感覚にもしっくりくる。きっとこんな不思議な後味と腹落ち感を、多くの日本人が得るはず。 ...
「世界規模の問題」を語る本も、「個人的な悩み」を語る本もあるけど、その「間」を繋ぐ本は滅多にない。哲学書より哲学が詰まった一冊。まさかの展開に脱帽しつつ、その意外な結論は、意外なほどに僕自身の感覚にもしっくりくる。きっとこんな不思議な後味と腹落ち感を、多くの日本人が得るはず。 読み始めから痺れる。思考を巡る旅の行く先が気になって、めくる手が止まらない。そして何より、文章そのものから漂いまくるイケメン感。そんな本の雰囲気を、日本語で再現したであろう福冨先生の翻訳力にも感服。 東浩紀氏いわく「ほんとうの哲学」を実践するタイ人イケメンによる一冊。
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