公共図書館が消滅する日 の商品レビュー
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本書は、近年問題となっている公立図書館の過剰なまでのサービスや、商業化についてそうなった経緯を論じた書物である。図書館学というものに明るくない私にとって初めて知ることばかりであったが、戦後体制の構築の中で図書館関係者が自ら発展の道を閉ざし、わずかな成功例にすがり幻想を抱き続け自滅していった、と論じている。論旨は明快で非常にわかりやすかった。一方で同じ内容を繰り返し何度も語っている節もありやや読みにくい、冗長に感じる部分もあった。 私の出身地はいわゆる「町村」であり公民館の一角に図書室があり、小学生の頃に町立図書館ができたのは記憶しているが、2000年代でも町村立図書館の設置率が低いという事実には驚いた。恵まれていた地域だったのだと認識した。
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現在の日本社会で公立図書館の役割や存在意義がほとんど理解されず、図書館関係者が生き残りに奔走している最大の原因が、関係者による戦後図書館史を巡る事実誤認と理解不足にあると断じて、解き明かそうとする本。
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『中小レポート』や『市民の図書館』によって図書館は発展した、という通説を見直し、現在にもつながる図書館の問題点を指摘する図書。けっこう辛辣な感じ。 戦後、大図書館、中央図書館をもって、図書館サービスを総括し、末端にまで行きわたらせるという図書館運営が考えられた。しかし図書館業界か...
『中小レポート』や『市民の図書館』によって図書館は発展した、という通説を見直し、現在にもつながる図書館の問題点を指摘する図書。けっこう辛辣な感じ。 戦後、大図書館、中央図書館をもって、図書館サービスを総括し、末端にまで行きわたらせるという図書館運営が考えられた。しかし図書館業界からは中央集権的という批判が出る。それではと『中小レポート』や『市民の図書館』のように中小図書館を図書館業界の中心に置き、図書館を発展させ、ゆくゆくは大図書館までつなげて図書館サービスを末端にまで広げようと考えられた。ところが『中小レポート』や『市民の図書館』に出ている中小図書館が理想とされてしまう。結局、今に至るまでこれらに代わる図書館の指標は現れていない。さらに農村部の小図書館などは『小図書館の運営』で指摘されているとおり、中枢図書館が必須とされてるにも関わらず、図書館業界はこれを黙殺してしまう。今の図書館は国の予算制度や大図書館に頼らない、小図書館を切り捨てた、各図書館の自助努力を要請される状況下で成立してきたということだった。それはきつい… 悪書追放運動と図書館の貸出重視によって図書館が貸本業者を衰退においやった、という点もあまり意識していなかったので覚えておきたい。 公共図書館は今後ナショナルプランが必要だろう、ということだったがその具体的な内容は言及されてはいなかった。
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