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宅地の防災学 の商品レビュー

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2020/08/30

釜井「宅地の防災学」 著者は京都大学防災研究所教授。 ちきりん氏推奨、たしかに必読。 新築至上主義→宅地造成→斜面の平坦化→谷埋盛土→斜面災害の温床。 江戸時代は土地の私有は必ずしも一般的ではなかった(使用権に近いイメージ)→地滑りがおこるような土地は元来土壌が攪拌するので良...

釜井「宅地の防災学」 著者は京都大学防災研究所教授。 ちきりん氏推奨、たしかに必読。 新築至上主義→宅地造成→斜面の平坦化→谷埋盛土→斜面災害の温床。 江戸時代は土地の私有は必ずしも一般的ではなかった(使用権に近いイメージ)→地滑りがおこるような土地は元来土壌が攪拌するので良質、かつ水利も有利、よって農業に有利→数十年に一度の地滑りを集落全体として甘受し、共同で復興→翻って現代では土地の私有がエリア全体の復興を妨げるケース多し→一体どちらがレジリエンスか? 陣内「東京の空間人類学」は、江戸の「坂の街」「水の都」としての魅力を語り尽くしていたが、言い換えれば、これを平坦化することが新しい災害を生んでいる、、、 「谷埋め盛土の地すべりなどという不思議な宅地災害も、逆に海外から見れば、問題の所在すら掴みにくい現象である。そもそも、海外では谷を埋めて真っ平らな都市を作るという必然性があまりない。なので、この問題は優れて国内の社会問題である。すなわち、あえて大胆な言い方をすれば、災害の多くは、その地域の人間の営みが招いた人災であるという命題に行きつく。」(p316)。 「災害や戦争によって無念の死を遂げた人々も、その家の先祖となって、近くの丘や森の少し小高い所から家郷の行く末を見守っている。これが、文明開化、占領、高度経済成長によっても変わらなかった日本人の死生観である。われわれの時代の災害復興は、再び家郷にあって死者を弔うことを可能にするものでありたい」(p 318)。 気候変動、地震活動期、そして資本主義問い直しの時代における自衛の書。

Posted byブクログ