流星シネマ の商品レビュー
久しぶりの吉田篤弘さん! 読み終えるのがもったいない…という気持ちで読了。でも『屋根裏のチェリー』『鯨オーケストラ』という続きがあるんだものね。ほくほく。 カナさんの「シを書きなさい」で、外国人にとって難しいという日本語の高低ピッチに気づかされた。オケが音合わせする基準となる音...
久しぶりの吉田篤弘さん! 読み終えるのがもったいない…という気持ちで読了。でも『屋根裏のチェリー』『鯨オーケストラ』という続きがあるんだものね。ほくほく。 カナさんの「シを書きなさい」で、外国人にとって難しいという日本語の高低ピッチに気づかされた。オケが音合わせする基準となる音、「ラ」と絡めて書かれているのも興味深い。 P44 ”どういうわけかカナさんは、「シ」の音を一音上げて発音していた。 それは、ポエムの「詩」ではなく、生き死にの「死」と云うときの音の高さだった。 (略) 僕の中で「死」の音はラの音で、そう思うと、オーケストラが演奏を始める前にラの音を合わせているのがーーもともとそう見えていたけれどーーなおさら厳粛な儀式のように思えた。” カナさんが「シを書きなさい」と言った理由が面白い。今はここにいない人の声や、桜の声を聴いて書き留めておきなさいということなのだと。 P89 ”わたしたちが生きて暮らしている世界がここにこうしてあるということは、わたしたちのいない世界、わたしたちの行ったことのない知らないところがあるということです。その世界のことを一度も考えたり書いたりすることなく、こちらのことばかり考えて暮らしていくのはもったいない。わたしがあなたに、シを書きなさいと云ったのは、そういう意味です。” p154 ”「いい? 太郎君。(略)シの音に表されるものは一冊の詩集に集められた一篇の詩を意味するのか、それとも、命を持ったものがこちらからあちらへ渡っていく死のことを云うのか、(略)わたしには分かりません。それは、わたしの中で分かち難いひとつのものになっていて、だから、平仮名でもカタカナでもいいけれど、シという音、その響きに結晶したものを、わたしはいつでも探しています」” カナさんの編集というものの定義に思わずexatly!と頷く。 編集者の仕事とは、混沌としたものとか、散り散りになってしまったものとか、みんなが忘れてしまったものをひとつにまとめていくこと、ふさわしい輪郭を見つけていくことだと言うのだ。 アルフレッドも同じようなことを言っていたという。 「小さなかけらを拾い集めて、大きな輪郭を見つけ出すこと」。 まさに。だからわたしは編集の仕事で面白いのはそこだ。皆が忘れてしまうことを拾い集めて形を作る。わたしがやらなければ消えていったものたちーーそう思っていた。
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楽しみにしていた本。 物静かにわくわくがとまらなかった。 中盤以降どんどん入り込んでいき、この穏やかな世界観に浸れることがとても幸せに感じる。雨が降っている場面で、現実でも雨が降ってくれて、それもまた気持ちよかった。 吉田篤弘さんの本は、読み終える最後の一行に近くなると少し寂...
楽しみにしていた本。 物静かにわくわくがとまらなかった。 中盤以降どんどん入り込んでいき、この穏やかな世界観に浸れることがとても幸せに感じる。雨が降っている場面で、現実でも雨が降ってくれて、それもまた気持ちよかった。 吉田篤弘さんの本は、読み終える最後の一行に近くなると少し寂しい様なもっと浸っていたい様な気持ちにいつもなる。 続きの「屋根裏のチェリー」がとても楽しみ。
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『鯨オーケストラ』を先に読んでしまったので、あーなるほどこの人物はこういう人なのね、というのが答え合わせが出来た感じ。 鯨オーケストラではすっかり落ち着いた雰囲気だった太郎さんがここでは迷ったり悩んだりと忙しい。 それにしても『鯨オーケストラ』でサラッと書かれていたアキヤマ君の...
『鯨オーケストラ』を先に読んでしまったので、あーなるほどこの人物はこういう人なのね、というのが答え合わせが出来た感じ。 鯨オーケストラではすっかり落ち着いた雰囲気だった太郎さんがここでは迷ったり悩んだりと忙しい。 それにしても『鯨オーケストラ』でサラッと書かれていたアキヤマ君のエピソードは実はかなりヘビーだったのに驚いた。
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ガケの下の町に住む、〈流星新聞〉の編集者・太郎くんとご近所の人々の物語です。誰もが何か切ないものを抱えているけれど、町の時間は穏やかにゆったり流れているようです。引っ越したいなあ。〈流星シネマ〉とは昔町にできてすぐ潰れた映画館だそうですが、この本自体が〈流星シネマ〉に相当するので...
ガケの下の町に住む、〈流星新聞〉の編集者・太郎くんとご近所の人々の物語です。誰もが何か切ないものを抱えているけれど、町の時間は穏やかにゆったり流れているようです。引っ越したいなあ。〈流星シネマ〉とは昔町にできてすぐ潰れた映画館だそうですが、この本自体が〈流星シネマ〉に相当するのでは、と思います。
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安定の吉田篤弘さん節というのか、現実と架空のちょうど間の世界観で個性ある魅力的なキャラクターたちが生きてます。 そしてやっぱり文章というか言葉選びというか言葉遊びというか、ほんと好きでまたちょいちょいページの端に折り目をつけてしまいました。 今作は結構しんみりする部分が結構あっ...
安定の吉田篤弘さん節というのか、現実と架空のちょうど間の世界観で個性ある魅力的なキャラクターたちが生きてます。 そしてやっぱり文章というか言葉選びというか言葉遊びというか、ほんと好きでまたちょいちょいページの端に折り目をつけてしまいました。 今作は結構しんみりする部分が結構あってこれまで読んできた著者の作品とは違う印象もありました。 ちょっと読むのに時間をかけすぎてしまい感想が散らばってまとまらないのですが、良かったです。
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かつて鯨が流れついた川があったガケ下の町。 地域新聞の編集をしている主人公の、思い出が切ない。 出てくる町、店に行ってみたくなる。 雨の日の描写で、雨の匂いがした。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
崖の下の町の川に大昔鯨が流れ着いたなんて、夢がある。その骨が見つかったとあらば尚更だ。 吉田先生にしては珍しく人死にに対する悔恨が出てくる。ラストの8ミリフィルムのシーンはこちらまでハッとしてしまった。 上映の途中で外に出てしまうカナさん格好良いな。 ノスタルジーの様でどこにも無い町の魅力的な人たちとお店と職業。
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鯨が埋まるという町に暮らす人々の話。 なんでもない日常の話かと思ったら、意外にもいくつもの出来事が起こる。太郎くんとゴーくんの過去の事件は、ちょっと胸が痛い。 鯨の件は、ロマンだなぁ。あれが入って、さらにオーケストラまで入れるという、チョコレート工場の大きさにも驚き。
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この世界はあらゆるものが寄せ集まって出来ている。人もその一部で、人ひとりも様々な要素でできている。 人の、様々な物語が、その一部分で響きあって繋がりあって、この温かな物語になっていたんだと感じた。
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なんでもないこと、なんでもない人たちが集まってきれいにひとつの物語になっていく。出てくる料理も美味しそう。みんな素敵な人たち。とくにバジくんが好き。
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