複雑系経済学入門 増補 の商品レビュー
マルクス、ケインズ、計画経済などの批判と自然科学、工学が複雑なものを複雑なものとして受け入れていることを取り込んで提唱された概念であるが、残念ながらこれが複雑系経済学である、とはっきりしたものが見えてこなかった。また、複雑系経済学だからこそできることというものも見当たらない。確...
マルクス、ケインズ、計画経済などの批判と自然科学、工学が複雑なものを複雑なものとして受け入れていることを取り込んで提唱された概念であるが、残念ながらこれが複雑系経済学である、とはっきりしたものが見えてこなかった。また、複雑系経済学だからこそできることというものも見当たらない。確かに従来の経済学よりは現実を上手く表現できるのかもしれないが、それだけである。もちろん何が起きていたのかを説明することは重要なことであるが、それは従来の経済学がやってきたこと同じである。多少なりとも経営、政策に取り入れられているという実績が欲しいところである。増補として最新の研究成果を色々と挙げてはいるが、やはり研究成果であって実際の経営の結果ではないところに学問の領域にとどまっているといわざるを得ない。なお、第1部のマルクス、ケインズ、計画経済、新古典派経済学に対する批判はそれらの問題点が何であるのかが明確に示されており、これらに代わる新しい枠組みが必要であると思わせるのに十分な説得力を持っている。とりあえず第1部だけでも読んでおくといいと思う。
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これまでの科学では複雑な現象の背後に単純な法則や規則があると考え,それを明らかにしようとしてきた。 複雑系科学は複雑なものを複雑なものとして捉える。方法論の根本的な転換。 複雑系科学は物理学や数学,認知科学など幅広い分野に広がっている。本書は経済学において「複雑さ」がどのよ...
これまでの科学では複雑な現象の背後に単純な法則や規則があると考え,それを明らかにしようとしてきた。 複雑系科学は複雑なものを複雑なものとして捉える。方法論の根本的な転換。 複雑系科学は物理学や数学,認知科学など幅広い分野に広がっている。本書は経済学において「複雑さ」がどのような学問的発展をもたらすかを論じている。 複雑性は「対象の複雑さ」「主体にとっての複雑さ」「認識における複雑さ」の3つの側面がある。著者は新古典派経済学を批判する中で「複雑さ」にたどり着いたという(478-479ページ)。 複雑系経済学は,新古典派経済学の均衡の理論的根拠である「無限合理性」と「収穫逓減」を否定し,現実の経済は異なる原理(限定合理性,収穫逓増)をもとにしている。 合理性に関して,人間には「視野の限界」「合理性の限界」「働きかけの限界」がある(222ページ)。そうした限界があるとき,経済システムは「ほとんどの変数がある程度独立に動きうる柔軟性をもったシステム」である(252ページ)。企業についても利潤最大化をする組織と単純に捉えるのではなく,従業員一人ひとりが上記の3つの限界をもつため,定型的判断とプログラムに従いつつイレギュラーな事態にも対応しているとみる。 新古典派経済学の均衡理論を支える2つの基礎を否定している点が一番印象に残った。本書の指摘を念頭においた上で,今後も経済学を学んでいきたい。スラッファも学びたい。 また,物理学や数学に関する説明がわかりにくかったので,物理学や数学も勉強したい。。。
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