断想集 の商品レビュー
時間がなくてパラ見だったけど示唆に富んだ素晴らしい内容。 最近思うけど、こう言う本や俯瞰で物事を見る人の発言は、今何が起こっていて、その原因は何かという差異を埋めることができる。なるほどな、と思うことができるのでオススメ。
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不勉強でレオパルディ自体は知らなかったのだけど、本屋さんで見かけて何となく買ってみた本。 「世間とは立派な人間たちに対抗する悪人どもの同盟、あるいは寛容な人たちに対立する卑怯者どもの集まりだということである」から始まって、世間と人間がいかに欺瞞に満ちていて、他人の不幸を餌に生きているか、ということを延々と語っている。正直、それ一辺倒なのでちょっと疲れる(笑)。 しかし、ギリシアの古典なんかを引きながら19世紀の人が書いたものだけど、ここはTwitterか?と思うほど違和感なく現代人のふるまいと言説に通ずるところがあり、人間というのは全く変わらないものだなと改めて感じる。 おもしろいなと思ったのは、 「虚言は真実を欠いていても効果を発揮するが、真実は虚言なしには何もできない。……自然は、想像力や幻想といった道具に依拠せずには、人生を愛すべきものにすること、いや耐えうるものにすることもできないではないか。」 とか、 「すなわち人間は、短期間の場合を除いて、いかに反対のことが確実かつ明瞭であるとしても、心の平穏のために必要でいわば生きるために欠かすことのできない事柄が真実であると自分の中で信じ込む――それを他人に隠しておいたとしても――ことを避けられないのである。……それは、文明人が、時にはある仕方で、時にはまた別の仕方で、直接的にせよ間接的にせよ最終的に人生を捧げてきた幸せそのものである。」 の辺り。 飛躍はその人の本質である、みたいな言葉を読んだことがあるんだけど、後者はそれに近いと思う。その人の隠し持っている核のようなものが思いがけず露呈してしまうときがあり、それは往々にしてエゴの塊で全然綺麗ではない。「この世に存在するものの中で最も嘘に塗り固められた馬鹿げた事柄」とレオパルディは書いている。私はそれが露わになる瞬間がすごく好き(悪趣味であることは自覚している)。そう感じるのはたぶん私だけではないと思うけど(そうだよね?)、これは支配欲に近い暴力的な感情、快楽なのだ。レオパルディが言うように、他人が醜いことを確認すると安心してその人を受け入れるような気持ちになる、卑しい動物の仕草。そう思いつつも、人がこういう人間の醜さに拘泥するのは、その中にも何がしかのうつくしさを見出そうとしているのではないか、この果てに何かがあるのではないか、という風にどうしても考えたくなる。彼が醜さをこれでもかと書き連ねたのも、その営みのうちではないのかと。なんの根拠もない。 もしかしたらこれが私の核(の一つ)なのかもしれない。醜さで終わってしまっては救いがない、救いがなくては困るのだ。どうしてと考えれば、真っ暗な闇の中を覗き込むことになる。 レオパルディは「これから述べる事柄に関して、私は長い間真実であると考えたくなかった」という書き出しでこの本を始めている。彼にとっては闇を探ること、自らの醜い核を引きずり出してくる作業がこの断想集だったのだろうか。そう考えると、斜に構えた風でかなり純な人だったのではないかと思ったりもする。
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