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コックファイター の商品レビュー

4.7

4件のお客様レビュー

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2020/12/30

闘いに負け、全ての鶏と、全財産を無くした闘鶏家フランク。前半は、最大の目標の大会を目標にしたフランクの再起。とても美しい羽色の鶏イッキーとの出会い、金策に奔走し、優秀な鶏を集める。後半は数々の大会をこなし、いよいよ最大の目標の大会へ。闘鶏に携わる人々の人生や、フランクの長い付き合...

闘いに負け、全ての鶏と、全財産を無くした闘鶏家フランク。前半は、最大の目標の大会を目標にしたフランクの再起。とても美しい羽色の鶏イッキーとの出会い、金策に奔走し、優秀な鶏を集める。後半は数々の大会をこなし、いよいよ最大の目標の大会へ。闘鶏に携わる人々の人生や、フランクの長い付き合いのフィアンセとのエピソードも盛り込まれている。あることがキッカケで決して喋らないと誓いを立てたフランクの一人称の語りが良い。傷つきながらも死ぬ間際まで闘志を燃やし続ける鶏達の雄々しき姿は残酷で、強烈な印象を残す。

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2020/11/27

「オフビート」とは、例えば正統派ハードボイルドに対して少し調子っ外れの主人公の行動や言動を指す形容詞かと思うが、本作の主人公フランク・マンスフィールドが大切な闘鶏もキャデラックもトレーラーハウス(一緒に住んでた巨乳娘も)全て失って、なぜか聾唖のギタリストとしてクラブで一晩稼ぐ場面...

「オフビート」とは、例えば正統派ハードボイルドに対して少し調子っ外れの主人公の行動や言動を指す形容詞かと思うが、本作の主人公フランク・マンスフィールドが大切な闘鶏もキャデラックもトレーラーハウス(一緒に住んでた巨乳娘も)全て失って、なぜか聾唖のギタリストとしてクラブで一晩稼ぐ場面はまさに「オフビート」らしいサイドストーリーだな。 解説にもあるように本書は60年代アメリカ南部における闘鶏の実態(いかに社会的に認知された立派なスポーツだったか!)とそれを生業とする伝説のハンドラーの復活を描いた素晴らしい物語。 薄暗い地下で行われる賭博の世界という先入観を覆す闘鶏の奥深さは十分に興味深く、主人公フランクが「話さない」誓を立ててまで最優秀闘鶏家賞を獲得するまでの(あっちこっち寄り道しながらの)物語も素晴らしく面白い。 チャールズ・ウィルフォードは60年代に活躍したパルプノワール作家で、80年代以降に再評価され、本書も今ごろ翻訳されたみたい。翻訳者の解説も短いけど良かった。 4.3

Posted byブクログ

2020/09/09

フランク・マンスフィールドはアメリカ南部で闘鶏の世界に生きる。そして最優秀闘鶏家賞を取れるまで口をきかないという願を立てた。ハードボイルドな男の明暗は… 1962年に書かれ闘鶏の細かい技法や調整法、細かい金勘定をびっしりと伝えてくれる。それが退屈どころかすごく面白く、またフラン...

フランク・マンスフィールドはアメリカ南部で闘鶏の世界に生きる。そして最優秀闘鶏家賞を取れるまで口をきかないという願を立てた。ハードボイルドな男の明暗は… 1962年に書かれ闘鶏の細かい技法や調整法、細かい金勘定をびっしりと伝えてくれる。それが退屈どころかすごく面白く、またフランクの内面もストーリーも良かった。 最初はクライムノベルかと思っていたけれど、一応ハードボイルドの範疇に入るかと思う。 女性にモテるフランクの女性観もちょっと興味深かった。

Posted byブクログ

2020/07/02

 ここのところ、ぼくの読書傾向に何故かアメリカ南部小説が急浮上し続ける。独特の熱気と湿度、人種差別と粗暴と貧しさ。そんなイメージに、汗をぬぐう主人公の野望と苦労が混じる。それにしてもチャールズ・ウィルフォードという作家は、相変わらず大した凄玉である。1988年に亡くなった天才的作...

 ここのところ、ぼくの読書傾向に何故かアメリカ南部小説が急浮上し続ける。独特の熱気と湿度、人種差別と粗暴と貧しさ。そんなイメージに、汗をぬぐう主人公の野望と苦労が混じる。それにしてもチャールズ・ウィルフォードという作家は、相変わらず大した凄玉である。1988年に亡くなった天才的作家の墓石を前にして、ぼくらは彼の死後に生前の作品を読むということしかできないでいる。しかし今もなお翻訳され、彼の古い(原版は1962年なのだから!ワオ)作品は現在に蘇り続けては世界を掻き回そうとしている。前世紀のノワール作家チャールズ・ウィルフォードは、大衆小説作家にも関わらず、やはり怪物としか思えない。  本書は、扶桑社ミステリーのノワール・セレクションに選別されているが、はっきり言ってミステリーでも、ノワールでもないだろう。闘鶏家の男の生き様を描いた、まさに闘鶏だけの小説なのである。とは言うものの闘鶏シーンは冒頭少々であるだけで、残りは沈黙の主人公フランクが、いかに闘鶏チャンピオンとなるかの夢を実現するまでの準備小説と言ってもいい。夢を実現するまで言葉を離ささないという、己に課した、孤独で奇妙な契約が、彼の生き様を凄まじいものにしているし、そのうえで失うものも多く、漂泊と流浪の終わりの見えない旅が、ノワール的であり、ロード・ノヴェル的である。あくまでミステリーではないけれども。一つの野太い冒険小説と言ってもいい人生物語である。お待ちかねのクライマックスとなる闘鶏シーンはラストのお楽しみである。まさに血が騒ぐ物語だ。  何よりも魅力的かつ個性的な登場人物たちとの出会いが良い。キャラクターたちには実在感があり過ぎて、造形されたものとは思えないくらい、暑く、深みのあるキャラばかりだ。旅は道連れというけれども、我らがフランス・マンスフィールドは、男にも女にも何故かもてるらしい。次々と出会いや幸運が待ち受けるなかで、自分の努力を決して怠らない。喋らない沈黙の主人公だからこそ、彼に絡む人間たちは、彼にだけは喋るのかもしれない。  だが、一人称の叙述は、フランクの心情をとても流暢に、読者だけには語ってくれる。その物語の、あまりの魅力にぼくらはページを離れることができなくなるだろう。物語には喜劇も悲劇も含まれる。流される鶏たちの血と、栄光と死も。鶏たちは、試合では、殺されるまで闘う。負けるとは、死を意味する。その肉は、闘鶏家のなんと夕食にあっさりと変わる。食物連鎖に含まれるスポーツ。夢見る者と愚か者たちのゲーム。それを生業にする者たちの夢、幻である。  闘鶏に何の関心もない読者であれ(ほぼ誰だってそうだろう)、この本を読むことで触れるのだ。闘鶏という、かつてフロリダ界隈に席巻した熱狂的文化、その夢や愚かさ、そして熱さに、尻っぺたを蹴とばされるのだ。思いのほかのキックは、むしろ心地よいほどである。唯一無二の独自なる小説であり、芳醇な媚薬のような魅力溢れる作品である。闘鶏とは、嘘も仕掛けも許さない正当な闘いである。そう自分の生き様を誇りに思う沈黙のヒーローが、何を失い、何を勝ち取るのか。心が持って行かれること請け合いの、凄玉小説の登場である。  食わず嫌いの方にもお勧めだ。荒々しいが旨味たっぷりの古くて新しいチキン料理である。是非ご賞味あれ。

Posted byブクログ