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敗残者 の商品レビュー

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2021/04/21

 何をもなすことなきダメ男というモチーフはあんがい文学に好まれるものだし古今東西を問わず例にいとまがないけれど、これもホッジャ体制下のアルバニアという特殊な社会を舞台を描かれれば少々味わいが変わる。なにしろ鎖国という時代離れしたことを20世紀の後半になってからやらかした国家である...

 何をもなすことなきダメ男というモチーフはあんがい文学に好まれるものだし古今東西を問わず例にいとまがないけれど、これもホッジャ体制下のアルバニアという特殊な社会を舞台を描かれれば少々味わいが変わる。なにしろ鎖国という時代離れしたことを20世紀の後半になってからやらかした国家である。とはいえ作中でそのことが強調されることはほとんどない。特殊な社会体制下であっても人はそれなりに生きてゆくもので、恋に出世に小競り合いにと忙しく、立場によっては特権も貪れれば贅沢もできる。そういった日常が不意に帳消しにされてしまうあたりが、往時のアルバニアだったのかも知れないが。  甘美な恋に溺れていた主人公は、その突然の破綻によって人生のあらゆるものが狂ってしまう。確かに強烈すぎる経験だっただろうし、社会そのものが人生に直接的に容喙してくる世界のグロテスクさでもあろうけれど、その後の主人公の長い不能については充分に理解が及ばなかったのが正直なところである。アルバニアの鎖国体制が崩れ、人びとがこぞって国を離れる船に乗ろうとしたとき、敢えて下船するという選択をした主人公の抱える諦念や不能感を支えるものは、奇矯な社会体制だけではなかったことは確かなようだ。主人公の抱える絶望はもう少し深い。  それは希望の船になどなりはしまいよという予言は結果として的中することになるけれど、この苦い物語が実際の船出の翌年、1992年に刊行されていたという事実は、この作家の直感の鋭さを現しているように思うし、「閉じ込められてしまった俺」という主題を普遍的なものにしているようにも思う。  なお作者のファトス・コンゴリ、文化大革命ただ中の中国に数学で留学していたという非常に珍しい経歴の持ち主であるらしく、その経験を反映させた「象牙の龍」という作品もあるらしい。これもぜひ読んでみたい。  また、アルバニア語からの直接の訳出をして下さった井浦伊知郎氏の蝋も最大限に感謝したい。以前翻訳されていたイスマイル・カダレ「死者の軍隊の将軍」もすばらしかった。アルバニア語からの直訳が日本語で読めるというのは本当にありがたいことだと思う。

Posted byブクログ

2021/01/10

地理的にはヨーロッパだが、長い間オスマントルコであったため、宗教的にはイスラムが多い不思議な国。読んだ。うん、全然ヨーロッパじゃないな。もっと全然土臭いんだけど、アフリカとかじゃ全然ないな。自然とか大気の感じ違う。アジアとかの、天気良くて穀物果物たっぷり感もないな。ただただ閉塞感...

地理的にはヨーロッパだが、長い間オスマントルコであったため、宗教的にはイスラムが多い不思議な国。読んだ。うん、全然ヨーロッパじゃないな。もっと全然土臭いんだけど、アフリカとかじゃ全然ないな。自然とか大気の感じ違う。アジアとかの、天気良くて穀物果物たっぷり感もないな。ただただ閉塞感があって(鎖国してた位だからな)人物もすごく若者と感じたが、それなりの年いってる人らで、言葉悪いが、途上って感じがした。もっとこういう本ー沢山読むべきだし、皆さんにも読んで頂きたい。

Posted byブクログ