刃物たるべく の商品レビュー
職人の思考様式、価値観は現代から見ると もはや異国のもの、昭和以前の 職人が出てくる小説とかこれからの読者は 理解できるんだろうか? 作務衣を着て、こだわりポイントを解説し 商品がなぜ高いかをプレゼンする、 広告によくでてくる「職人風」のオジサンとは 別物の、プロユースで効能も...
職人の思考様式、価値観は現代から見ると もはや異国のもの、昭和以前の 職人が出てくる小説とかこれからの読者は 理解できるんだろうか? 作務衣を着て、こだわりポイントを解説し 商品がなぜ高いかをプレゼンする、 広告によくでてくる「職人風」のオジサンとは 別物の、プロユースで効能も価格も現実的な 商品を制作することの難しさ。 一方で、一つの刃物を何百時間も研ぎ、 実用性とは無縁の、一点の曇りのない刃文を 目指す姿勢。 とても複雑な職人気質を、失われるギリギリの タイミングで記録した好著。 丁寧に刃物を研ぐ職人の著者だけに 言葉も研ぎ澄ましたに違いない。
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2020年。 著者は私より3つくらい若い人のようだ。ほぼ同じ時代を生きて、昭和の半ばから終わり、そして平成今日まで生きている。 千代鶴是秀の名など私も父から聞いたかもしれない。名工とその周辺の話や昔の家族の介護の話まで身に覚えのあることばかりだ。一つ一つのことを丁寧に描いている...
2020年。 著者は私より3つくらい若い人のようだ。ほぼ同じ時代を生きて、昭和の半ばから終わり、そして平成今日まで生きている。 千代鶴是秀の名など私も父から聞いたかもしれない。名工とその周辺の話や昔の家族の介護の話まで身に覚えのあることばかりだ。一つ一つのことを丁寧に描いている。共有、共感できることが多い。 大工だった自分の父のことが常になぞらえられる随筆だ。そして最後に紹介されるのが名工ながら名誉を求めず親しみやすい人柄だった職人の事。筆者もこの人にこそ共感を持っているのだろう。名工の軌跡をなぞった人が、こういうところに共感を持つ、時代とはそういうものだろう。読み応えのあるいい随筆だった。 図書館で背表紙が目に飛び込んできて手に取った本だった。出会いとはこういうことかと。
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