「心の哲学」批判序説 の商品レビュー
レヴィナスなどの現象学の研究者である著者が、英語圏の「心の哲学」の議論を批判的に検討し、その問題点を解明している本です。 著者は、チャーマーズの議論などを参照して、そこに見られる物理世界の因果的閉鎖性のテーゼを批判しています。著者によれば、意識は記憶をはじめとするさまざまな情報...
レヴィナスなどの現象学の研究者である著者が、英語圏の「心の哲学」の議論を批判的に検討し、その問題点を解明している本です。 著者は、チャーマーズの議論などを参照して、そこに見られる物理世界の因果的閉鎖性のテーゼを批判しています。著者によれば、意識は記憶をはじめとするさまざまな情報を統合・整序する役割をもっており、主体の生存適合性を向上させることから、進化論的に獲得されてきた可能性があると論じています。こうした考えにもとづいて、「哲学的ゾンビ」のような思考実験にもとづいて意識の物質世界への働きかけを否定する立場に対する反論が提出されます。 そのうえで著者は、「現象的意識から身体行動へ至る道をどう説明するか」という古典的な心身問題をとりあげなおし、メルロ=ポンティの思想を参照しながら、意識にまつわる問題を解き明かすための手がかりを求めます。そこでは、知覚現象は私が積極的に世界へと働きかけることによって引き出した情報であるという見方が提出され、実践との結びつきのなかで知覚をはじめとする意識現象のありかたを考察するという見通しが示されています。 著者は現象学の立場を標榜していますが、フッサールの主張するような「内在」からいっさいの問題を解き明かそうとする立場に固執するのではなく、現代の自然科学における諸成果を参照するなど、柔軟な立場から意識について考えなおそうとしています。本書では直接言及されてはいませんが、実践との密接なつながりのなかで知覚の役割を考えるという著者の立場は、ギブソンのアフォーダンスの考えかたに通じるところもあるような気がします。
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意識についての洞察メモ→ https://twitter.com/lumciningnbdurw/status/1312243561543294979?s=21
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