職場の現象学 の商品レビュー
非常に重厚な本だった。普通のビジネス書のようには読めない。私のお世話になった先生が「経営学は宗教書」と冗談交じりに言っていたが、本書は良い意味で実直に経営学と哲学を架橋して、学際的なアプローチにより「職場」というものをかなり丁寧に考察している。露木の博士論文の知見が下敷きにあるこ...
非常に重厚な本だった。普通のビジネス書のようには読めない。私のお世話になった先生が「経営学は宗教書」と冗談交じりに言っていたが、本書は良い意味で実直に経営学と哲学を架橋して、学際的なアプローチにより「職場」というものをかなり丁寧に考察している。露木の博士論文の知見が下敷きにあることも大きな要因となっている。現象学という哲学の理論を用いて経営の現場を考察する手法は斬新だ。組織の人間関係を考慮するとき、意外にもその対象は他者ではなく自分を対象とし、「何のために生きる自分か」、「本当の自分とは何か」(p.32)を見出すことが重要としており、まさにこうした立場が哲学的(現象学的)と感じる点である。そうした作業を経て、他者との見解とじっくり突き合わせで話し合う・対話することが肝要と読み取った。決して「会話」をすればよいのではない。問題解決の方向は、自分が間違いないと実感できることをベースに、それと「考え」の世界を作ることという。創造的なことは「人と人との関係のなかからしか生まれてこない」(p.346)というメッセージを、私なりに職場で展開していきたいと感じた。
Posted by
- 1