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個人事業者の税務調査対応ケーススタディ の商品レビュー

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2021/04/10

個人事業者に対する税務調査対応を中心に記載された意欲的な書籍。個人事業者でよくありがちな帳簿の不備、必要経費の範囲などが事例をもとに解説されており、臨場感のある内容であった。個人事業者を顧問先に持つ税理士には必読ともいえる書籍だ。 P135 実際に現金で支払った外注費について、領...

個人事業者に対する税務調査対応を中心に記載された意欲的な書籍。個人事業者でよくありがちな帳簿の不備、必要経費の範囲などが事例をもとに解説されており、臨場感のある内容であった。個人事業者を顧問先に持つ税理士には必読ともいえる書籍だ。 P135 実際に現金で支払った外注費について、領収書がなかったものの、調査で認められた事例がいくつかあります。 《カレンダーにメモ書きしていたケース》 この事例では、外注費はすべて現場で現金払いをしていました。 現場でのやり取りで、領収書を発行してもらう手間をかけることもできず、領収書等の原始資料はほぼ残されていませんでした。 唯一、記録として残っていたのは本人がカレンダーに記載していたメモだけでした。 カレンダーに、「いつ・誰に」応援(外注)を頼んだかを記載していたのです。 納税者は、確定申告時にこのカレンダーをもとにして外注費を計算していました。 1日当たりの人工代は決めており、カレンダーで日数を計算して外注費を算出していたのです。 この事例では、売上げをみれば1人ではこなせない仕事量で、外注費があることは明白で、領収書がないからといって外注費がまったくないということはありえず、カレンダーに記載していたメモをもとに、外注費を認めてもらうことができました。 ただし、その外注費について、支払の相手が実在する人物であることの確認のため、住所や連絡先などを提示するよう求められました。 《後から領収した旨の書面をもらったケース》 同じく現金払いしていた外注費について、何も資料が残っていないケースがありました。 この事例では、売上げの請求書に現場名と人工が記載されていました。 請求書に2人工とあれば、納税者のほかにもう1人案件従事者がいたことになり、外注費が生じていた証明になる可能性があります。 1日当たりの人工代はほぼ決まっていたため、売上げの請求書に記載してある人工を1年分集計し、年間の外注費の金額を計算することができました。 しかし、税務調査においては誰に支払ったのかがわからなければ、経費として認めてもらえないことがあります。 この事例でも、年間でどれくらいの外注費があるのかは判明したものの、当初は誰に支払をしたのかがわからず、経費として認められないと言われていました。 しかし外注先がいつも同じだったため、相手方に「確かにこの金額を受領した」と一筆書いてもらい、それを税務署に提示することで経費として認めてもらうことができました。 いずれのケースも外注費があったことが合理的に確認できたこと、支払の相手先が判明したことにより、最終的には経費として認めてもらうことができました。 ご質問のケースのように領収書がない場合には原則として外注費が認められません。しかし、何かしらの根拠を示すことで理解を得られるかもしれず、何らかの資料に基づき説明を心がけるとよいでしょう。 P152 ご質問のように、長期化の様相を呈した税務調査について、1月末までに修正申告書を提出することと引き換えに、一定額の経費を認めることを提案された事例がありました。 この事例では、納税者は毎年欠かさず確定申告書を提出していましたが、税務調査により、経費に生活費が多く含まれているとの指摘を受けていました。 納税者は自分の運営するブログで、本業以外にも購入した商品の紹介や旅行地の紹介、旅先で食べたものについて記事を書いていたことから、これらはすべてブロガーとしての経費である旨主張していました。 一方、税務署は商品の購入代金や旅費、旅先での食費などの支出は事業に係る直接的に必要な経費とは言えないとして、経費計上を認めないとの指摘を行っていたのです。 結局、双方が主張を譲らず、税務調査は長引き、年を越すこととなりました。 年が明け1月も半ばとなったところで、税務署側から上述の提案を受けたのです。税務署側にしてみれば、調査が長期化していることに加え、確定申告期が始まることから早期決着を意図した提案であったと考えられます。 この調査では元帳をもとに経費が1件ずつチェックされ、経費として認めないもの、一定割合を認めるものを区分した書類が作成されました。 納税者としては、満額で経費を認められないことについては不満もありましたが、調査対応を一刻も早く終えたいとの思いはあったことから、税務署側の提案を受け入れることにしたのです。 別の事例でも紹介しましたが、一定額の経費を減額して修正申告すれば、早期に調査を終了するとの提案を受けたこともあります。 逆に納税者の側から落としどころを提案し、調査が決着したケースもあります。 税務調査は適正な課税を目的として行われますが、状況によっては妥協的な落としどころにより決着するケースもあります。

Posted byブクログ