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精神疾患と心理学 新装版 の商品レビュー

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2022/12/10
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フーコーの初めての著作だが、すでに「狂気の歴史」のアウトラインが引かれている。さらに「狂気の歴史」よりもずっと後に改訂されているらしく、はっきりした物言いは「狂気の歴史」の概略以上にもなっている。 例えば、狂気(ここでは分裂病)を可能にするのは、「我々の文化の世界に対する読み」であり、人間がもはやそこに自己を認めることが出来ないような読み取りをしているという生存条件の現実の葛藤によるという下り。 我々は常に「社会」とか、「世の中」とかいう形で世界を切り取り、つねに意味を読み取っているが、そこにどのように自己を位置付けられているかが、つねに我々の矛盾した経験を生んでいる。(酷い世の中だと我々は世界を読み取る) で、これをさかさまにしたのが精神疾患、その土台にある心理学である。世界が酷いのではなく、人間の構造に起因して、この世界を酷いものとして読み取っていることにより鬱病になると。 本当に酷い世の中であるのに、それは鬱病のせいであるとして、世の中のやり切れなさを感じるひとを患者として疎外し、世界のほうを治癒するのが心理学の役割である。 ところで、本を読む人が、読む動機などなく、実は読みたくない本を読んでいることで、理解以前にその本の評価を下げるということが普通に行われているのは、消費者として面白がらせないもの=悪い、とするクソ退屈、消費者化を推し進める世の中のせいなのかもしれない。

Posted byブクログ