夕暮の緑の光 新装版 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
「端正な文体に秘めた人生への熱い思い」と帯にあったけど、本当に端正で力強い文章で素敵だった。良い本を読んでいると文章と踊っているような気分になるが、この本はしっかりと手を握って、リードされているような心地よい安心感があった。 古本への愛、故郷への愛。「平明な語りが散文として体をなすには、作者の胸の裡に何か熱いものが蔵されているのでなければ意味がない。『何か熱いもの』とは人生に対する愛情といいかえてもいい。」と書かれているが、まさに愛に裏打ちされた文章は読む側の胸の裡へも呼応して熱をもって響くのだ。 書かれている長崎や諫早の情景は、見たことがないのににおいと光をともなって頭に浮かんでくる。私の生まれる前の時代、本に封じられたその空気感まで伝わってくるように思うのは愛と文章の力としかいいようがない。すごい。 「モクセイ地図」、「土との感応」あたりの水や土の話は特に好き。
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