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善とは何か の商品レビュー

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2020/12/29

 日本語によって初めて哲学を体系的に論じた大哲学者西田幾多郎。西田は今年生誕150年を迎えた。癖の強い難解な論理構造と、彼の拵えた数多の造語が容易ならざるものとして立ち塞がり、自然と読者は晦渋な読解を余儀なくされがちなのであるが、大熊は実にのびのびと西田の『善の研究』を読み解いて...

 日本語によって初めて哲学を体系的に論じた大哲学者西田幾多郎。西田は今年生誕150年を迎えた。癖の強い難解な論理構造と、彼の拵えた数多の造語が容易ならざるものとして立ち塞がり、自然と読者は晦渋な読解を余儀なくされがちなのであるが、大熊は実にのびのびと西田の『善の研究』を読み解いてゆく。予備知識を持たない全ての読者に西田を届けることに成功した画期的な入門書であり、〝程よい難易度の誠実なる良書〟という社会が最も希求する要望にひとつの模範的な解答を提示してくれた。

Posted byブクログ

2020/07/30

西田幾多郎の最初の著作である『善の研究』の第三編「善」の内容をていねいに解説している本です。 『善の研究』といえば、「純粋経験」というキーワードを駆使した日本で最初の独創的な哲学書として知られていますが、本書があつかうのは第三編の倫理学で、西田の独創性はあまり見られず、むしろ西...

西田幾多郎の最初の著作である『善の研究』の第三編「善」の内容をていねいに解説している本です。 『善の研究』といえば、「純粋経験」というキーワードを駆使した日本で最初の独創的な哲学書として知られていますが、本書があつかうのは第三編の倫理学で、西田の独創性はあまり見られず、むしろ西洋の倫理学説を分類・紹介し、その批評をおこなう内容となっています。とはいえ、諸学説の吟味を通して、統一的な「人格」の実現を倫理学の根本的な原理とする西田自身の立場へ読者をみちびく議論がなされており、西田の「純粋経験」を倫理学という側面から学ぶことができます。 本書は、ていねいな語り口で西田の議論をパラフレーズしており、『善の研究』を読もうとする読者にとってすぐれた手引きになるのではないかと思います。できることならば、他の諸編にかんする著者の講義を受けてみたいと感じました。

Posted byブクログ