日本企業のコーポレート・ガバナンス の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
コーポレートガバナンス、それも対象を日本企業に絞った上で、更にテーマをエージェンシー問題に絞って一般企業・金融機関のガバナンスに関する仮説をデータを用いて検証する本。非常にアカデミックで、論文集といった趣が強い。 本書の根底にある考え方は、「欧米(といっても欧と米でもだいぶ考え方が異なるが)風のガバナンスを日本の一般企業・金融機関に導入するだけのガバナンス改革は本当に日本企業の企業価値を上げているのだろうか」という疑念だと思う。 実際に地域銀行を採り上げた章では、社外取締役の導入が情報の非対称性等を考慮して進められていることが確認されている。実務に合った判断を下している企業に対して画一的な社外取締役の増員を要請するのは必ずしも望ましくない。 一方で、本書で述べられているほど因果関係をしっかり示せないまま社外取締役の増員を躊躇っている企業も実態としては多いと邪推しており、そういった企業のためにも本書の実証研究は役立ちそうである。 非常に多くの気づきと学びを得られる本であった。
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