歌え、葬られぬ者たちよ、歌え の商品レビュー
一見ダラダラ家族の話だが、後書きも含め、非常に重たーい作品である。しかし不思議と不快な感じがしない。作者の意図は「しっかり目を見開いて、自分の耳で聞いて自分の心で感じろ」というメッセージに感じられた。13歳の主人公は母親と同居してるが、全然まともに親子関係が展開されない。理由は複...
一見ダラダラ家族の話だが、後書きも含め、非常に重たーい作品である。しかし不思議と不快な感じがしない。作者の意図は「しっかり目を見開いて、自分の耳で聞いて自分の心で感じろ」というメッセージに感じられた。13歳の主人公は母親と同居してるが、全然まともに親子関係が展開されない。理由は複雑に絡み合って、泣き寝入りせざるをえない状況から、傷が癒えてないからだった。それは彼女だけの問題ではなく、なんつうか皆に共通してて、やっぱり黒人からしてみると、注目すんのはそこじゃねんだよ!ってのあるんだろうね。
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人種差別と階級格差、貧困・ドラッグ・暴力が蔓延するアメリカ社会を背景に、南部ミシシッピ州で苦渋の生活をおくる家族の心情と失った親族への鎮魂の想いが語られていきます。記憶のなかで生きる亡き人の生霊(ゴ-スト)との対話、もって生まれた業(カルマ)との葛藤のなかで悶々として生きる登場人...
人種差別と階級格差、貧困・ドラッグ・暴力が蔓延するアメリカ社会を背景に、南部ミシシッピ州で苦渋の生活をおくる家族の心情と失った親族への鎮魂の想いが語られていきます。記憶のなかで生きる亡き人の生霊(ゴ-スト)との対話、もって生まれた業(カルマ)との葛藤のなかで悶々として生きる登場人物の姿は、著者の体験した不幸な出来事と重ね合せた現代アメリカの病巣を抉り出す物語として描かれています。読み終えてから、じわじわと心に沁み込んでくる文学作品です。
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「ザリガニの‥」と人気を二部刷る勢いのあった良作。個人的には前者の方が優しく語りかける口調が読み易かったが。こちらのアグレッシブな口調は一度引きずり込まれたら激しく脳内に粘液をまき散らす感触がある。 ミシシッピ州刑務所が背後で大きな影を落としている。 語り手はジョジョ・レオニ・...
「ザリガニの‥」と人気を二部刷る勢いのあった良作。個人的には前者の方が優しく語りかける口調が読み易かったが。こちらのアグレッシブな口調は一度引きずり込まれたら激しく脳内に粘液をまき散らす感触がある。 ミシシッピ州刑務所が背後で大きな影を落としている。 語り手はジョジョ・レオニ・そして葬られぬもの・・リッチー 前者2人はほぼほぼ生の声、動きを見せ、対照的な部分を残しつつも、温かいまなざしと温度感が流れて行く。 リッチーは謎。 地獄のようなパーチマン、祖父ビッグ・ジョセフの友達だったリッチーとそこで知り合い、彼は死んだ。その謎をジョセフは語りたがらない。 ネイションを持たない「人工合成の国・・アメリカ」その建国から虐殺の歴史は始まり、発展に連れてますます白人以外の人々の力が必要とされてきたのに、足蹴にされたままの暗黒の裏歴史。 ブラック、プアホワイトともに悲惨な形が続く絵図を繰り広げ、生まれた子供らは先代の地獄を当然のように繰り返していくしかないのか。 しかしウォードの筆力はそんな虐げられたくらい感触を描きつつも不思議と力強く生命力が迸っている。ジョジョが天性として有している魂を聞く声・・葬られぬ者たちの歌声が響きこだましている。
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静かに淡々と流れる歌のように、静かに、しかしはっきりと力強く語られる物語。 少年ジョジョは黒人の家庭に生まれ、貧困の中、妹ケイラの面倒を見る。 母レオニは出所する夫マイケルを迎えるために、ジョジョとレオニを車に乗せ刑務所に向かう。 レオニは明らかに母性に問題がある母親で、息子や娘...
静かに淡々と流れる歌のように、静かに、しかしはっきりと力強く語られる物語。 少年ジョジョは黒人の家庭に生まれ、貧困の中、妹ケイラの面倒を見る。 母レオニは出所する夫マイケルを迎えるために、ジョジョとレオニを車に乗せ刑務所に向かう。 レオニは明らかに母性に問題がある母親で、息子や娘に愛情を感じながらも、長続きせず、苛立ちが先に立つ。 少年ジョジョはそんな母親を幾分覚めた目で見ており、祖父母の方に強く愛情を感じている。 しかしジョジョにはもう一つ親に語れない秘密がある。ジョジョにはなぜか亡くなった者の姿や声を見聞きできるのだ。祖父と同じ刑務所にいたリーチの黒い影がジョジョには見え、リーチがなぜ死んでしまったのか?その事をなぜ祖父は語らないのかが気にかかる。 アメリカの貧困層に生きる人々(黒人だけでなく、白人も)が、自らの置かれた場所、そして黒人というだけであまりにも理不尽に扱われることから逃れられない絶望感のようなものに窒息しそうになりながらも、生きていくということを選択せざるを得ない、そんな叫びのような、歌。
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読みながらフォークナーを思い出した。 青木耕平氏の解説によると著者ジェスミン・ウォードにとってフォークナーは文学的英雄の一人であり、影響を受けていると本人も公言しているとのことだった。 「粗野な森 ボア・ソバージュ」サーガの一つ。粗野な森とは、ウォードが自分の育ったミシシッピ、デ...
読みながらフォークナーを思い出した。 青木耕平氏の解説によると著者ジェスミン・ウォードにとってフォークナーは文学的英雄の一人であり、影響を受けていると本人も公言しているとのことだった。 「粗野な森 ボア・ソバージュ」サーガの一つ。粗野な森とは、ウォードが自分の育ったミシシッピ、デ・ライルを基に作り上げた架空の街である。
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春の刊行から気になっていた本書。長い休業から再開してくれた本屋さんがうれしくて奮発して買った本書。どこまでも現実的で進行形の悲しみに押しつぶされながら読むかもしれないとは予想しても、じぶんの醜さに向き合う読書になるかもしれないと覚悟しても、それでもこんなにも痛い読書になるなんてお...
春の刊行から気になっていた本書。長い休業から再開してくれた本屋さんがうれしくて奮発して買った本書。どこまでも現実的で進行形の悲しみに押しつぶされながら読むかもしれないとは予想しても、じぶんの醜さに向き合う読書になるかもしれないと覚悟しても、それでもこんなにも痛い読書になるなんておもってもみなかった。それは油断かもしれないけれど。それでもいま、読まないという選択肢はなかった。芝刈り機が世界一暴力的に迫り、子どもの叫びが額を貫き、背負うべきものを骨身に知らせる。アメリカ文学の語りを堪能し、歌には耳を澄ませた。
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キィキィと黒板を爪で引っ掻く音を無理やり聴かされてるような、壊れた家族のくそったれなロードノベルだったはずなのになあ。なんで癒されてるんだろ。
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