海軍学卒士官の戦争 の商品レビュー

吉田俊雄(著者)

2020/09/20

p102
信じてそう思いこむと、そのときから、もう目が見えなくなる。いや、見ようとしなくなる。

p151
これは秀逸だった。責任者は主計長がとるが、あとはお前に委せる。思うようにやれ、といわれたら、だれでもハリ切る。

p172
戦場では人の生死にはあまり心を動かさなくなる。麻痺してしまう。そうでないと、生きていけない。

p294
「へんだと思ったら、まず停まれ」というのは船乗りの鉄則である。一度停まり、状況をできるだけ単純にてして、そこで現実を読み直す。恥ずかしいことでも何でもない。結果がよくなければ、何にもならないのだから。

p318
首都ラングーンにいたるマンダレー・ラングーン道路では、機動力を駆使してラングーンに突進する英印軍が、同じ道路をラングーンに向けて退却する日本兵を追い越していく不思議な光景が、いく度となく見られたという。

p339
戦場では、錯誤が起こりやすい。錯誤の起こらないのがおかしいほどで、そのくらい種々雑多な情報が一度に殺到する。戦場では、ミスの少ない方が勝つ、とさえいわれている。

p345
そのころ、仲間うちで、「煙になるなよ」と口をついて出る挨拶には、しみじみとした実感がこもっていた」

p347
「明日はわが身」とつねづね割り切ったつもりではいたが、かけがえのない一生を、祖国を目の前にして終わらねばならなかった人たちの不運なめぐりあわせへの哀しみが、いつまでも離れなかった」