愛と髑髏と の商品レビュー
こちらも、既読短編がちらほら。 「人それぞれに噴火獣」 噴火獣とは、シメール(フランス語でいうキメラ)。 妄想、空想の、火を噴く複合獣の怪物…。 あまりにも皆川博子世界観やんけ……。 無垢と邪悪が共存する少女の抱く、幼い妹への鬱屈、父母へのおさない憎悪、身近にいる若い男への憧れ...
こちらも、既読短編がちらほら。 「人それぞれに噴火獣」 噴火獣とは、シメール(フランス語でいうキメラ)。 妄想、空想の、火を噴く複合獣の怪物…。 あまりにも皆川博子世界観やんけ……。 無垢と邪悪が共存する少女の抱く、幼い妹への鬱屈、父母へのおさない憎悪、身近にいる若い男への憧れ…。 み、皆川博子だ…。 その若い男と少女の父親がどう考えても愛人関係やろがいってのも含めて…皆川博子……。 「復讐」 狂女ものだ…。 それでいて、狂母ものだ……。 愛も憎しみも、狂気も、すぐにくるりとすり替えられる。 「暁神」 夢オチにしては………???? っていう、いつもの皆川博子幻想短編小説。 そういう感じなのにちゃんと後味が悪いんだぜ…すごいよな……。
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- ネタバレ
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読後静かな興奮に包まれる。この美しくて狂おしい小説世界は魅惑的で、私もここに加わりたいくらいだ。 8作品、一つ一つが濃密。作り物ではなく、たしかにそこに生きている人々がいると感じられる。不幸で底知れぬ、匂い立つような情念が漂っている。 特に好みだったのが「丘の上の宴会」。死んでいると明かされた時の驚き!今村家のみんなも何だか楽しそうだし、雪子も淡々と自分の死を受け入れて通夜の支度のことを考えたりしているところ、好きだった。もう他人の反応を気にする必要もないのだ。
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毒杯とわかっているのに、呷りたくなるような。 甘美で恐ろしい短編集でした。 『人それぞれに噴火獣』が好き。 世界に馴染めない「子供」であると同時に既に小さな「おんな」で、両者が共存する我儘が哀しく恐ろしい。
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幻想小説。美しく静かな狂いと歪みに浸された「をんな」たちの話が8つ。 装飾の施されたとても美しいティーカップにとぷりと入った毒入りの紅茶を飲んでしまったような感覚。ゆるりじわりと毒に犯され、見てはいけない何かを見ているような、そんな。 美しい文章で綴られる毒が気持ちいい。
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皆川博子作品は数冊読みましたがこの短編作品も個性豊かで語彙がとても豊富でおられ、心地良いけどどこかお話はダークでありながら読み手のペースを崩さない感じの著者であると感じています。又改めて再読したいと思う作品でした。
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初期の短編集、伝説のそれというだけあって、よみながらぞくりとする。 甘さのある毒なぞ、考えたくもない、! という事で若い頃から敬遠気味だった怪奇小説・・とはいえ皆川さんモノは年に一回くらい読んできた・・麻薬の味。 解説に有る通り「スズラン」のテイスト・・根に毒を持つ美しい花の装い...
初期の短編集、伝説のそれというだけあって、よみながらぞくりとする。 甘さのある毒なぞ、考えたくもない、! という事で若い頃から敬遠気味だった怪奇小説・・とはいえ皆川さんモノは年に一回くらい読んできた・・麻薬の味。 解説に有る通り「スズラン」のテイスト・・根に毒を持つ美しい花の装い。 今90歳の筆者、200歳まで生きて欲しい・・文を読ませてほしい。 この作品は1985年物の復刊・・だけに皆川氏が怪奇小説のあるジャンルを確立するに至った助走の煌めきを感じる。 晄、色彩の表現が随処に有るせいか、読みつつも時に、眩暈を覚えたり、幻惑に誘い込まれる。「通常で無い」人・・女、娘が多い 文となると接写感覚のせいもあり「心身共に」ぎりぎりの場面がどの短編にも多い。巧いなぁと思う反面「通常で無い」という私の主観からすると共感持てぬ、受容できぬことになる・・そのストレスが読みたいと思わせる媚薬に反転している。 8つの短編中、7編は犯罪が絡む「をんな」の様。「をんな」と表示するだけで妄想に反転するけど。
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「実際、毒のない文学、毒のない話が面白かろうはずがない」…解説の服部まゆみさんの言葉に深く頷きます。 毒が満ち満ちていました。好きです。 犯罪を犯すお話が多かったですが、それに至る心情が一筋縄ではいかず…人の心って割り切れないし、こう!と周りが表現できるものでもないけれど、皆川さ...
「実際、毒のない文学、毒のない話が面白かろうはずがない」…解説の服部まゆみさんの言葉に深く頷きます。 毒が満ち満ちていました。好きです。 犯罪を犯すお話が多かったですが、それに至る心情が一筋縄ではいかず…人の心って割り切れないし、こう!と周りが表現できるものでもないけれど、皆川さんの描く人々は、心に溜まっていく澱がよくわかります。 だんだん溜まっていって、もう無理…戻れない、となったところで、妹のお臀を押したり、近所の兄さんを灰皿で殴ったり、鈴蘭入りの水を飲んだりするんだ。。 犯罪を描いても、どこか幻想的で良かったです。「猫の夜」は犬好きにはかなりキツイですが、これが1番残ります。壊れた秩序はこれからどうなるの。。 復刊なので生まれる前とか1桁の年齢だった頃に書かれたお話ばかりでしたが、今でも読めるの嬉しいです。
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久しぶりに皆川さんの短編を読んだが、その絶妙な毒にクラクラした。 すべて人間の醜いともいえるエゴが剥き出しなのに、繊細なレース編みみたいな幻想的な美しさをもつ短編。解説の服部まゆみさんが言いたいことを全て言ってくれている。 特に「舟唄」の愛の形が好き。
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「風」★ 「悦楽園」 「猫の夜」★ 「人それぞれに噴火獣」★ 「舟唄」★ 「丘の上の宴会」 「復讐」 「暁神」 解説 服部まゆみ 編者解題 日下三蔵 語り手あるいは視点人物が実は@@だった、という私好みの叙述でもあり。 皆川博子独特の、デストルドーというかタナトスというか、が、...
「風」★ 「悦楽園」 「猫の夜」★ 「人それぞれに噴火獣」★ 「舟唄」★ 「丘の上の宴会」 「復讐」 「暁神」 解説 服部まゆみ 編者解題 日下三蔵 語り手あるいは視点人物が実は@@だった、という私好みの叙述でもあり。 皆川博子独特の、デストルドーというかタナトスというか、が、ひたひた。 中年女性(生活)の挫折=少女性(夢想)の勝利、というラインが、嗜虐被虐の一点に押し込められていくという……これはもう立派な文芸批評の対象になりうる作家性だ。 中年女性については「舟唄」、少女については「人それぞれに噴火獣」、そして少女性を離れた寓話としては「猫の夜」。 凄まじいの一言に尽きる。
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最近初期作品の復刊が多くて、いちファンとしてはうれしい限りです。この作品集は、1970年代からの幻想小説が収められたものですが、時代の違いを感じる単語はあろうとも、作品そのものに漂っている世界の描きかたには古さがありません。 夢と現のあわいを漂わせる、艶めいた毒気漂う筆致で綴られ...
最近初期作品の復刊が多くて、いちファンとしてはうれしい限りです。この作品集は、1970年代からの幻想小説が収められたものですが、時代の違いを感じる単語はあろうとも、作品そのものに漂っている世界の描きかたには古さがありません。 夢と現のあわいを漂わせる、艶めいた毒気漂う筆致で綴られる物語は、「お話」の魅力がけして起承転結だけにとどまらないことを改めて感じさせてくれます。ミステリ要素があろうと、恋愛を絡めた悲喜劇であろうと、作者の手わざにかかればそれは要素のひとつに過ぎない、と思うのです。あくまで、描く人々の愚かさ脆さ美しさ醜さや、世界の残酷さ哀れさ滑稽さ、その感触をつぶさに楽しむのが本質、などと思ったりするのです。 この作品集で一番好きなのは「復讐」です。全体像がラスト二ページで鮮やかに翻った展開はまぎれもなくミステリ要素なのでしょうが、そこで見えてくる「復讐」のほんとうの意味の闇深さがたまらなくぞくりとさせられたのでした。 甘い毒、などといっては稚拙な比喩になってしまいますが、まさにそのようなわかっているのにやめられない、そういう感覚を抱かせる一冊でした。
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