短編ミステリの二百年(vol.2) の商品レビュー
評論付きの海外ミステリアンソロジー。今回はハードボイルドやディテクティブ・ストーリーといった味わいのものが多い印象です。 お気に入りはフランク・グルーバー「死のストライキ」。工場のストライキに巻き込まれてしまった百科事典のセールスマン。彼が売り物である百科事典を読み込み蓄えた知識...
評論付きの海外ミステリアンソロジー。今回はハードボイルドやディテクティブ・ストーリーといった味わいのものが多い印象です。 お気に入りはフランク・グルーバー「死のストライキ」。工場のストライキに巻き込まれてしまった百科事典のセールスマン。彼が売り物である百科事典を読み込み蓄えた知識でもって事件に挑むさまが実に痛快です。災難なようだけれど、実際に災難だったのは犯人の方だよねえ。 ロイ・ヴィカーズ「二重像」も印象的な作品でした。妻でさえ間違えるほどにそっくりな男の出現と、彼によってもたらされた殺人事件の謎。果たして謎の男は本当に存在するのかどうか、最後までどきどきさせられました。
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本巻では、はじめに、バッド・シュールバーグ「挑戦」、クリストファー・ラ・ファージ「プライドの問題」、ラッセル・マーニー「チャーリー」と、初めて知る作家の作品が並ぶ。ジャンル小説として、ミステリーをどのくらいの範囲で考えるかは各人様々であろうが、これら3編は、かつて日本で“都会小...
本巻では、はじめに、バッド・シュールバーグ「挑戦」、クリストファー・ラ・ファージ「プライドの問題」、ラッセル・マーニー「チャーリー」と、初めて知る作家の作品が並ぶ。ジャンル小説として、ミステリーをどのくらいの範囲で考えるかは各人様々であろうが、これら3編は、かつて日本で“都会小説"として紹介された作品群に属するものらしい。この辺り、編者の考え方が現れている。 その後、ハードボイルド系の作品が並ぶ。 ハメットの「クッフィニャル島の略奪」、結婚祝い品のガードに派遣されたオプの前で、機関銃まで用いた強奪が実行されるという、そのド派手な舞台設定に驚いた。島内でのアクション場面の後、犯行グループの正体を暴いていくところは、正に推理による謎の解明。 チャンドラーの「待っている」。以前に読んだことがあるのだが、解説を読んで、二人の関係をどう理解するか、誰が死んだのかという本作のポイントが、原文をいかに解釈するかで変わってくることが分かった。この点、日本語文を読むだけの人間からは、翻訳者にお任せのところ。 グルーバー「死のストライキ」。テンポ良い進行が楽しめる。 そしてこから、スタウト、アリンガム、クリスピン、ヴィガーズとビッグネームが続く。それぞれ面白さは保証できるが、ヴィガーズの「二重像」は、分量も併せて読み応えがある。妻も見分けることのできない夫そっくりの男が、周囲に頻繁に現れる。別人なのかどうか誰もが訝しむうちに、殺人事件が発生してしまう。夫にそっくりな男は存在するのか、それとも夫が‥‥。 小森氏の解説というか評論は、実に盛りだくさん。特にパルプマガジンとスリックの違い、読者層や原稿料の問題など、なかなか他では読めない話で面白かった。
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創元推理文庫が満を持して編纂した200年に渡る短編ミステリの集大成全六巻でこれはその第二弾。1920年から1950年までに出された作品から編者が厳選した11篇が収録されている。最初期の作品が収められた第一巻に比べるとこの第二巻はハメットやチャンドラーといったハードボイルド黎明期の...
創元推理文庫が満を持して編纂した200年に渡る短編ミステリの集大成全六巻でこれはその第二弾。1920年から1950年までに出された作品から編者が厳選した11篇が収録されている。最初期の作品が収められた第一巻に比べるとこの第二巻はハメットやチャンドラーといったハードボイルド黎明期の作品も収められていて少しミステリっぽくなったかな、という印象。どれも新訳というから力がかなり入っているのは確かかな。個人的に大好きなチャンドラーの「待っている」という作品がこんなに良かったか、という感慨があったのは良かった。ただ本作も第一巻と同じく編者のあとがきというかエッセイが長い。この時代にはこういう作品があってこういう理由でこれらの作品をチョイスした、という話なのだけど脱線があったり世評に対する反論などがあったり…もう少し簡潔に書けるでしょ?という思いがどうしても拭い去れず、で。読まなければいいのだろうけど内容にはやはり興味があってちょっと我慢しながら読んだような感じ。そこが少し残念でした。
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短編ミステリの歴史をさぐるアンソロジー。この第2巻は1920年代から50年代までの作品が収録されている。この頃になるとハメット、チャンドラー、スタウトなど、馴染みのある作家が出てきて、やはり抵抗なく読める分、面白さは1巻よりも上がってきた。それでもまだ個人的に全然知らない作家や、...
短編ミステリの歴史をさぐるアンソロジー。この第2巻は1920年代から50年代までの作品が収録されている。この頃になるとハメット、チャンドラー、スタウトなど、馴染みのある作家が出てきて、やはり抵抗なく読める分、面白さは1巻よりも上がってきた。それでもまだ個人的に全然知らない作家や、何故選ばれたのか分からない凡作も混ざっている。基準がはっきりしないな~。 後半の長大な評論は賛否分かれるだろうけど、大好きなクイーンやカーが登場してきたので、その部分はとても面白かった。
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