ビッグデータ超入門 の商品レビュー
Dawn E. Holmes著、岩崎学訳『ビッグデータ超入門』(東京化学同人、2020年)はビッグデータの基本知識、実社会への影響をまとめた入門書である。『超入門』との書名が何を意味するか分からなかったが、原題は『Big Data: A Very Short Introducti...
Dawn E. Holmes著、岩崎学訳『ビッグデータ超入門』(東京化学同人、2020年)はビッグデータの基本知識、実社会への影響をまとめた入門書である。『超入門』との書名が何を意味するか分からなかったが、原題は『Big Data: A Very Short Introduction』である。「入門の入門」の訳として成程と感じた。ビッグデータはGAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple)ら民間企業が主導している。本書も民間企業の動きを詳しく説明している。 本書は2020年3月3日刊行である。新型コロナウイルス(COVID-19; coronavirus disease 2019)が世界的な課題になっている。そのため、「ビッグデータと医療」の章は特に興味深い。ビッグデータを用いたインフルエンザやエボラ出血熱の感染拡大の予想は現実よりも5割も過大であった。 これは医療介入を考慮せずに患者が同じ割合で増え続けると予想したためである。「医学的および公衆衛生的な措置は患者数の減少というプラスの効果をもたらすと予想されるが、これらはモデルに反映されていなかった」(63頁)。医療介入の意義を示すものである。 日本は新型コロナウイルスに限らず伝統的に、悲観的な予想を公表することに消極的である。パニック阻止の大義名分を掲げるが、実態は不都合な事実を隠蔽する体質である。また、医療崩壊が起きるという供給側の都合で検査体制の充実による現状の正確な把握にも消極的である。それはビッグデータの活用という世界の先端的な潮流に逆行する。 本書はダークウェブにも言及している。「麻薬取引、ポルノ、マネーロンダリングに使用される違法なダークウェブサイトを含むこれらの多くはきわめて好ましいものではない」と断言する(96頁)。プライバシーを守る匿名技術が依存性薬物の売人などの犯罪者に悪用されたとのスタンスである。 本書はドラッグなどを許容するアングラ文化が匿名ネットワークを支えているとは考えない。残念なことに日本には、それがリベラルとの発想すらある。昭和のアングラ文化を引きずった感覚はグローバルな民間感覚とは逸脱している。
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