新・紫式部日記 の商品レビュー
※この物語はフィクションです。 「紫式部日記」と勘違いして読んでしまう人もいるかもしれないので、この一言を添えて欲しい。 あくまでも創作物語。 現代語で書かれているので文章は読みやすい。 源氏物語を書く紫式部と、支援する藤原道長。 その物語の裏には政治的な思惑があり徐々に横暴...
※この物語はフィクションです。 「紫式部日記」と勘違いして読んでしまう人もいるかもしれないので、この一言を添えて欲しい。 あくまでも創作物語。 現代語で書かれているので文章は読みやすい。 源氏物語を書く紫式部と、支援する藤原道長。 その物語の裏には政治的な思惑があり徐々に横暴になっていく道長。 紫式部の娘賢子と、一条天皇と中宮彰子との子敦成が、実はすり替えられていたという説。 そういう設定を源氏物語に出てくる冷泉院に結びつけるところは、なるほどと思いました。 清少納言とのやり取りも、お互いの悩みを打ち明け合う相手として、そんな時間があったとしたら面白いなと。 大河ドラマもある程度フィクションで楽しめているので、こういった切り口も面白かったです! 時代背景は大まかには史実通りでしょうが、研究者それぞれに色んな視点があるものなのでしょう。 他の文献も読んで答え合わせをしたくなりました。
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「新・紫式部日記」夏山かほる著、日本経済新聞出版社、2020.02.21 228p ¥1,760 C0093 (2024.03.10読了)(2024.03.06借入) 題名からすると『紫式部日記』の現代語訳か、『紫式部日記』の話なのかと思い読まなくてもいいかなと思ったのですが、本...
「新・紫式部日記」夏山かほる著、日本経済新聞出版社、2020.02.21 228p ¥1,760 C0093 (2024.03.10読了)(2024.03.06借入) 題名からすると『紫式部日記』の現代語訳か、『紫式部日記』の話なのかと思い読まなくてもいいかなと思ったのですが、本の説明を読んでみると紫式部の物語ということなので、読んでみることにしました。 冒頭で、紀貫之が出てきたので、面食らいましたが、同時代の藤原兼輔の和歌でこの本のテーマを提示したかったようです。 紫式部は、小姫として登場します。十六歳です。すでに「源氏物語」は書き始められています。花山帝出家事件に遭遇したと思ったら、すぐに十五年後に飛びます。父の越前への赴任に伴う同行、帰京、結婚、妊娠、夫の死、夫の死のショックで身ごもっていた子は死産、と書いてあります。確か、賢子という子がいたはず、と思いながら読み進めてゆくと、驚愕の展開が待っていました。作家の想像の翼は自由に羽ばたけるので、恐れ入りました。すでにいくつもある『紫式部物語』に新たに参入するには、新機軸を加えなっければ意味がありませんので。 小姫の宮仕えは中宮彰子へと思っていたら道長の妻の倫子の下で女房勤めを始めています。この辺もおやおやと思いながら読み進めました。女房名は、藤式部です。紫式部という名前は、最後まで使いませんでした。それなのに、本の題名が「新・紫式部日記」ですからつじつまが合いませんね。 倫子の下で一年ほど仕えた後、中宮彰子の下へ物語作者兼教育係として出仕しています。 「源氏物語」の内容についての話がたびたび出てきます。道長から今後の展開についての注文がついたりもします。何回か石山寺へも行っています。 興味深く読めました。 【目次】(なし) 序 (人の親の心は) 第一章 (寛和の変・花山帝出家事件) 第二章 (藤式部・物語作者として出仕) 第三章 (中宮彰子の出産) 第四章 (「源氏物語」の続きは?) 第五章 (春宮は二の宮) 第六章 (道長薨去) 終章 (人とは、惑うもの) ☆関連図書(既読) 「小説紫式部」三好京三著、鳥影社、2006.04.24 「散華(上) 紫式部の生涯」杉本苑子著、中央公論社、1991.02.20 「散華(下) 紫式部の生涯」杉本苑子著、中央公論社、1991.02.20 「紫式部」山本藤枝著、火の鳥伝記文庫、1987.03.21 「小説紫式部 香子の恋」三枝和子著、福武文庫、1994.12.05 「紫式部日記」紫式部著・山本淳子訳、角川ソフィア文庫、2009.04.25 「紫式部の娘 賢子」田中阿里子著、徳間文庫、1992.05.15 「藤原道長」北山茂夫著、岩波新書、1970.09.21 「平安人物伝藤原道長(コミック版日本の歴史44)」静霞薫原作・中島健志作画、ポプラ社、2015.01. 「大鏡(ビギナーズ・クラシックス日本の古典)」武田友宏編、角川ソフィア文庫、2017.12.25 「道長ものがたり」山本淳子著、朝日新聞出版、2023.12.25 (アマゾンより) あなたは使い捨てられてはなりませぬ。私のように―― 栄華をきわめつつある主の藤原道長から、物語の女房を命じられ、華麗な「源氏物語」を書き継いできたが…… 宮中に渦巻く陰謀に、物語が切り結ぶとき。 第11回日経小説大賞受賞! (選考委員:辻原登・髙樹のぶ子・伊集院静) 『源氏物語』を書いた紫式部の一代記。「紫式部日記」が実在の作品であるだけに、あえて「新」とタイトルにつけフィクションを紡ぎ上げたところに、作者の周到な企みがうかがえる。 本作には最新の源氏物語研究の成果が活かされている。紫式部の生涯や、『源氏物語』誕生秘話を描いた著作は、専門家によるとそれほど珍しくはない。しかし、本作は、平安時代においては、物語を書く行為そのものが政治性をおびていたことを明らかにするところが新しい。 「日記文学の傑作、しかも『源氏物語』の作者の日記に新たな日記を捏ち上げ、ぶつけるという、これほどの大胆不敵はない。パロディならともかく、真正面からオーソドックスに、とはハードルが高過ぎる。 しかし、作者は鮮やかにそのハードルを跳び越え、極上の宮廷物語を物した。『源氏』を構成の中心に据え、それを下支えする本物の「紫式部日記」、それに被せるように架空の「日記」、そしてもう一つの物語『伊勢物語』を、有機的に、歯車のように嚙み合わせ、重層的な展開が可能になった。『源氏物語』そのものが、一層の輝きを放って読者に迫って来るという功徳も齎された」(辻原登氏選評より) (2024年3月11日・記)
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源氏物語をちゃんと読んでいないので内容を知ることができてよかった。道長が途中から予言の書と思い込み式部に栄華を極めるよう圧力をかけ脅したりして式部の執筆の邪魔をするが権力に負けず自分の源氏物語を書き切る強さ、その強さの裏には弱さもあり悩みながら書いていたことを知る。ここでも替え玉...
源氏物語をちゃんと読んでいないので内容を知ることができてよかった。道長が途中から予言の書と思い込み式部に栄華を極めるよう圧力をかけ脅したりして式部の執筆の邪魔をするが権力に負けず自分の源氏物語を書き切る強さ、その強さの裏には弱さもあり悩みながら書いていたことを知る。ここでも替え玉説があり彰子が産んだ女児と式部と道長の間に産んだ男児と取り替える。この時代は血筋を重んじると思っていたが権力の方が優っていたことを知る。
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恐ろし内容…。 でも、もしかしたらこんなこともあったかも。 だから、『源氏物語』がうまれたのかしら…。
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期待しないで読み始めたが、道長が藤式部に手をつけたところらへんから面白くなり、道長と藤式部の男子の赤子を、帝と彰子の女子の赤子ととりかえたことに、衝撃を受けた。貴族の弱肉強食の世界や、藤式部の源氏物語が生まれた背景を知れて、面白かった。
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藤原道長の野望をかなりエグいものとして語っていますね。 源氏物語の冷泉帝が、あのお方に重ねられているなんて!
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この時代の歴史にさほど詳しくないので(学校の日本史で学んだ程度)、どこまでが史実に基づいたものでどこからが著者の設定なのかしら?と思いながら、でもなんかワクワクしながら読みました。実際はすごく奥の深い、メッセージ性もある内容でしたが、やっぱり「タブー」の世界をのぞき見るワクワクも...
この時代の歴史にさほど詳しくないので(学校の日本史で学んだ程度)、どこまでが史実に基づいたものでどこからが著者の設定なのかしら?と思いながら、でもなんかワクワクしながら読みました。実際はすごく奥の深い、メッセージ性もある内容でしたが、やっぱり「タブー」の世界をのぞき見るワクワクもあって、それが読み進められる原動力となった感。 この本を読む少し前に、源氏物語(田辺聖子さん訳のもの)をひと通り読んでいたことが、さらにこの作品を楽しめた一因だったかもしれません。
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佐藤可士和さんが産経新聞で紹介していたこともあり、以前読みました。平安フィクションとして非常に面白かったです。日経小説大賞受賞作で、選考委員の技巧派辻原登さんが絶賛しているし、「業平」を完結したばかりの高樹のぶ子さんもしぶしぶライバルと認める実力派の作者です。ラノベレベルと論評し...
佐藤可士和さんが産経新聞で紹介していたこともあり、以前読みました。平安フィクションとして非常に面白かったです。日経小説大賞受賞作で、選考委員の技巧派辻原登さんが絶賛しているし、「業平」を完結したばかりの高樹のぶ子さんもしぶしぶライバルと認める実力派の作者です。ラノベレベルと論評している人は、辻原さんや高樹さんを凌ぐ実力の作家なのかな? 感情的なネタバレをしている人がいますけど、ブクログは投稿数が少ない割に、hontoや楽天ブックスに使われているので、売れないように印象操作したいんでしょうね。並のレベルの新人のデビュー作にそんなことはしないとでしょうから、並外れて面白い作品と言うことだと思います。辻原登さんが新人を褒めることはめったにないので、悪意の匿名レビューより辻原登さんを信頼した方がいいと思います。
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彰子が最初に産んだのは実は女子で、後一条帝は藤原道長が紫式部に産ませた子だった!…ってな設定。 源明子と明子腹の子ども達や東三条院詮子とかは全く出てこないし、後一条に皇子が生まれてたらややこしい話になってたけど、結局のところ、彰子の第一子出産に関する第一級史料が「紫式部日記」であ...
彰子が最初に産んだのは実は女子で、後一条帝は藤原道長が紫式部に産ませた子だった!…ってな設定。 源明子と明子腹の子ども達や東三条院詮子とかは全く出てこないし、後一条に皇子が生まれてたらややこしい話になってたけど、結局のところ、彰子の第一子出産に関する第一級史料が「紫式部日記」であるとこがミソなのかな。何気に道長のヤンチャを全て押さえていて大事にいたるまでは見逃してあげてた藤原倫子が「ザ・刀自」。 式部が自分の引退と入れ替わりに娘に出仕させてることの解釈とか、え、じゃあ大弐三位って後冷泉の実の伯母じゃんとか、色々広がって面白い。参考文献が倉本一宏と今西祐一郎に偏っているのが気になるところではある。
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安徳天皇は女だったしかも壇ノ浦で死んでいなかったとか、源義経は成吉思汗になったとか、上杉謙信は女だったとか、徳川家康は自分に子種がないと思っていたとか、歴史もののトンデモ設定自体はウェルカムだが、それも、虚実の虚がうまく実にはまって、一瞬でも、もしかしたらそうかも!と思わせるものであってこそ、また、その物語世界の中でのもっともらしさあってこそ。 その点で、この作品の根幹をなすトンデモは、そりゃないだろう、としか思えず、他の美点をも台無しにするものだった。 中宮彰子の第1子は実は女で、ちょうどその数か月前に生れていた紫式部と道長の間の男児とすり替えた、というのがその設定だが、権力の維持に汲々とし、自らの娘所生の皇子誕生に血眼になっていた本作の道長や、あまり内面の描かれぬ倫子はまだしも、夫の一条帝をひたすら大切に思うという設定の彰子がそれを願うのはありえなすぎて、不快感すら覚えた。また、そもそもこんな悪行に手を染めてまでやるには、二度とチャンスがない等、必死になるべき事情もなく(実際、年子で男子が誕生するんだから)、ますますこんなネタ使う必然性がない。ご存じ源氏物語の即位してしまった罪の子冷泉帝だって、実の両親は皇子・皇女で、ホントの血筋でも状況によっては皇位継承可能なわけで、藤原道長と正五位下左少弁藤原為時女の間の子が帝位を竊むのとはワケが違う。 こういう設定にするからには、翌年、敦良親王誕生の時、すり替えの秘密を知る各人に大葛藤が起きるはずなのに、それは全く描いていない。 また、(現代の男系論者が聞いたら卒倒しそうだが)親戚なんだから天皇家の血が流れていなくたって、オレの孫ならいいんじゃい、という本作の道長だったら、(本作では光源氏のモデルは自分だと認識しているので、本作の敦成とパラレルな)源氏物語の冷泉帝の栄華を期待してしかるべきだが、不吉な冷泉の呼び名を付けるよう道長が式部に強制したことにしているのも釈然としない。 このトンデモ設定で効果があるのは、紫式部の父・為時が、このネタで越後守任官をユスリとったと暗示するところ(p.128)くらいだ。 また、この設定によって、賢子(大弐三位)(この設定だと一条皇女ということになる!)の年齢が10歳近く若くなってしまうが、それで辻褄合うのだろうか? 大弐三位の事績で、この設定ゆえに納得いく!みたいなものもないし。 著者は若いころ国文の研究者だったようだが、「平安期において、中宮位にあった后は年を経て栄華が勝ると皇后の位に移った。」(p.55)などとおかしなことを書いたりしていて、専門はずれているのかも。彰子の皇太后冊立も、敦明親王立坊の密約と「取り引きするように」(p.214)などと書いているが、もちろん姸子を中宮にするために遷っただけだし(姸子の中宮冊立のことはもっと前に起きたかのような書き方になっている)。また、安和の変を「高明親王の悲劇」として恰も「将来を嘱望された親王」だったから政変に巻き込まれたかのように書いているが(p.173)、7歳で臣籍降下している高明は、もちろん本人が親王だったこととは直接関係なく、為平親王の舅になったために左遷に遭ったのである。 藤原行成がかなりよい役回りを得ているので、一条崩御前の次の春宮についての進言をどう描くのかと思っていたら、力の入った書きぶりで、道長による定子・敦康の廃后・廃親王の脅しを回避するため斎宮密通伝説を持ち出したという解釈を採用していたのも、こちらは説得力があった。
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