仏教経済学 の商品レビュー
本書、タイトルにひかれて購入しました。著者(クレア・ブラウン教授)は米国で労働経済学を教えている先生ですが、自由主義的な経済学(あるいは市場万能主義的な経済学)に強烈な違和感を持ち、自身がチベット仏教の信者であることもふまえて、経済学に仏教のエッセンスを注入すべくその思いをまとめ...
本書、タイトルにひかれて購入しました。著者(クレア・ブラウン教授)は米国で労働経済学を教えている先生ですが、自由主義的な経済学(あるいは市場万能主義的な経済学)に強烈な違和感を持ち、自身がチベット仏教の信者であることもふまえて、経済学に仏教のエッセンスを注入すべくその思いをまとめた本になります。 本書では、仏教経済学とは何かを具体的に語るというよりは、自由主義的経済学との対比を通じて読者に仏教経済学のイメージを持ってもらい、さらに仏教経済学の優位性を主張しようとしています。このアプローチはまさに仏教そのものでもよく使われる手法で、たとえば空海は「三教指帰」のなかで、儒教、道教、仏教の3つを寓話的に比較し、いかに仏教が最も優れているかを論じています(ただしこの場合は3つすべて世の中に既に良く知られている概念を比較してはいますが)。 本書ではこのような相対的アプローチで仏教経済学を説明されていますが、私の印象としては、何か新しい概念が生み出されたというよりは、主流派経済学ではないが経済学者の間で既に存在する概念(例:炭素税、人間開発指数、ケイパビリティアプローチ、真の進歩指標)をパッチワークにした感が否めませんでした。その意味では大変もったいないというか惜しい本だと感じました。著者がやりたいことは非常に有意義だしユニークなのですが、パンチ力が弱いという印象です。どうせなら続編を書いていただきたく、その際は仏教学者との共著にしたらいかがでしょうか。もっと仏教のエッセンスを盛り込むと、大変面白い本になるポテンシャルがあると感じました。中庸、智慧と慈悲、顕と密、空など、経済学と絡めるとかなり面白いであろう概念が山ほどあると思います。
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- スモール・イズ・ビューティフル - 理想は最小限の消費で最大限の幸福を得ることである - 尊ぶべきは、小さな社会と細やかな心 とても面白かった。また読み返そう!
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