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出生前診断の現場から の商品レビュー

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2024/09/26

こちらの本は、専門家の医師の立場から、出生前診断の現在とその課題について述べている。出生前診断は急速に進歩しており、新型のNIPTは母親の血液を10㏄ほど採取するだけで、胎児がダウン症かどうかをほぼ確実に判定できる。そして、高齢出産が増え障害児を産むリスクが高まる中で、NIPTを...

こちらの本は、専門家の医師の立場から、出生前診断の現在とその課題について述べている。出生前診断は急速に進歩しており、新型のNIPTは母親の血液を10㏄ほど採取するだけで、胎児がダウン症かどうかをほぼ確実に判定できる。そして、高齢出産が増え障害児を産むリスクが高まる中で、NIPTを希望する患者が急増しているという。しかし、十分な理解がないまま受診すると、もし陽性判定が出た場合に悩み苦しむことになる。そのために入念な事前のカウンセリングが必要なこと、あらかじめ十分な知識を得て、さらに陽性と判定された場合どうするかを決めたうえで受診する必要があることを伝える。晩婚化が進む今、ますます重要になってくる指摘である。

Posted byブクログ

2024/06/30

新型出生前診断NIPTが2013年に日本でも開始されたが、この検査はどういう検査でどういうものをもたらすかということを産婦人科医の立場から書いた本。 「安楽死が合法の国で起きていること」を読んで、いわゆる「すべり坂」が、出生前診断の現場でどのように起こっているかを知りたかったのだ...

新型出生前診断NIPTが2013年に日本でも開始されたが、この検査はどういう検査でどういうものをもたらすかということを産婦人科医の立場から書いた本。 「安楽死が合法の国で起きていること」を読んで、いわゆる「すべり坂」が、出生前診断の現場でどのように起こっているかを知りたかったのだが、その点について詳しく書かれているものではなく、むしろ出生前診断を今から受けようとする人たちへのアドバイスのようなものがどちらかと言うと詳しく書かれている。 NIPTも問題点として挙げられるのは、3つの染色体の病気21トリソミー(ダウン症)、18トリソミーと13トリソミーの3つしか判定できないこと、陽性となると侵襲的な確定検査である羊水検査が必要となること、高額であると言う事であるが、筆者は羊水検査以外は解決が可能だという。確かにこれから、検査できる染色体異常はもっと増えるだろうし、費用も検査実施施設が増加すると下がっていくだろう。何より、遺伝子検査が主流になると、もっと確実な検査が安価で受けられるだろう。 問題は、優生思想の観点からそれでよいのか、ということだ。 現在、NIPTの感度は陽性的中率が35歳で80% .40歳で90%以上と推定されている。そして、陽性の場合ほとんどが中絶を選ぶ。母親の選択(プロチョイス)が優先される。 プロチョイスか、プロライフか、の二択で考えると、無論プロチョイスを否定しない。むしろ尊重したい。アメリカのいくつかの州で中絶が禁止されているのを苦々しく思う。しかし、人工中絶と出生前診断は全く違うものだ。この二つを同時に語るのは危険だと思う。 出生前診断は、筆者も終章で触れているように、「パーフェクトベビー」を求める「エンハンスメント」の商業的利用につながるだろうし、「複数の世代にわたる、自由で平等な人格相互の対等な関係を崩していに、平等という概念すら失わせることになってしまう」だろう。 それは、「人間の品種改良」であり、やはり優生思想に必ずや繋がるだろう。 「安楽死」にせよ、「出生前診断」にせよ、人の命にダイレクトに関わる選択は、民間任せでなく、慎重すぎるくらいのカウンセリングと、法整備と罰則規定がなくてはならないなと思う。 この本で紹介されたシモーナ・スパラコの「誰も知らない私たちのこと」の一節 人工死産を選択した主人公の呟き 「最後の小さな一蹴り。(中略)ついうっかりしたような、小さめの一蹴り。その後は何もない。」 まだ子を抱くことをしていない「母になる前の人間」は、障害があるからという理由で簡単に中絶してしまうだろう。想像もつかないものね。どれだけ自分が親となって子どもを愛するか、など。 重い障害を持つ子の親としては、この子を産む前に検査しなくて良かったと心から思う。 「プロライフ」か、「プロチョイス」か、の二択、まあ、そういう、是が非か、の問題ではないということだ。 リアリティはやはりグレーゾーンにある。

Posted byブクログ

2022/07/17

分かりやすくて読みやすかったけど、人工妊娠中絶後の患者の心理状態に対する、「わたしたち産科医療従事者がかならず真正面から向き合って理解してあげなければならない現実」という表現は…。理解しなければならない、では駄目だったのかな。

Posted byブクログ

2020/12/22

図書館で、「書評に載った本」という目立つコーナーに置いてあり、つい手にとってしまった。私自身もやや、高齢出産で、妊娠期に少しは気にした経験もあるし、万が一、40代半ばの今妊娠したら(!)という恐怖心すらあるので人ごとではない。仕事でもプライベートでも、ダウン症の方と触れ合うことは...

図書館で、「書評に載った本」という目立つコーナーに置いてあり、つい手にとってしまった。私自身もやや、高齢出産で、妊娠期に少しは気にした経験もあるし、万が一、40代半ばの今妊娠したら(!)という恐怖心すらあるので人ごとではない。仕事でもプライベートでも、ダウン症の方と触れ合うことは大いにある。偏見はないつもりだが、十分に理解しているかと問われれば、自信をもってはいとは言えない。 出生前診断というものについて、非常にくわしく書いてあり、わかりやすかった。メディアが発信する情報の曖昧さや、受け取る側が誤解しやすい面もよくわかった。 母体血による出生前診断が可能になったことを”危惧する”という報道を、すればするほど、その診断を希望する女性が増える、というような。(自殺報道が自殺をあおる側面があるのに似ている)。 最初の方は、出生前診断というものが何か詳しく説明してある。中盤は、著者自身の考えを織り交ぜながら、診断を受けようとするカップルが、どういう覚悟でいるべきなのかが述べられている。結論から言うと、しっかりと二人で話し合い、胎児が染色体の病気であるという確定診断が下った場合に赤ちゃんをあきらめる、という決断をしたカップルが、診断を受けるべきであって、「染色体の病気である可能性は低い」という診断を得て安心したいとか、「もし染色体の病気の可能性があるという診断が出たらそのときに考える」と言った甘い考えで検査にのぞむのは間違っている(その通りだと思う)。 ちなみに私は妊娠初期に病院で、希望の有無を聞かれたとき、希望しないことを伝えた。どんな赤ちゃんでも産むつもりだという気持ち(もし胎児に何らかの異常が見つかったからといって堕胎したりはしないという気持ち)がはっきりとしていたからだ。しかし「きっと元気な赤ちゃんに違いない」という思いがあったことは確かだ。もし(あまり可能性はないが)45歳の今万が一妊娠したとしたら、あのときと同じように「希望しません。どんな赤ちゃんでも産むつもりです」と言えるかどうか、わからない。最終的にはそういう答を出したいが、悩むだろうと思う。 また、夫の親などがカップルに介入し、(例えばお嫁さんが高齢だという理由で結婚に反対し)、健康な赤ちゃんを産むことが親に認められる条件、みたいになっている場合は悲惨だ…実際にそういう例があったらしい。私には全く関係ないことなのに、本気で腹が立つ。 最後の最後、「あとがきにかえて」で、著者の結論(?)として、ある詩人の「見る前に跳べ」という言葉を引用し、「見る前に産め」という言葉で締めくくられている。 情報化の進む現在、情報量が非常に多く、情報格差なども問題になりつつあるが、情報が多ければ多い方が良いとは限らない。大量の情報を浴び、その都度悩み、多くの情報から自分で選んだ(と思っている)から幸せになれるとは限らない。情報が少なくても幸福な人だってたくさんいるはずだ。(この考え方に感動!)人生は選択の連続だ。こっちの選択の方が正解だった、なんてことはあり得ない。選ぶ度に人は、もう一つの選択肢の方が良かったのかもしれない、と後悔し続けるものなのだ。 ちょうど、女性の人生にいろんな選択肢があり、あっちを選んだらこんな人生だった…的なパラレルワールドを描いた小説、「森へ行きましょう」を読み終えたところでもあり、どハマりしました。読んで良かったです。

Posted byブクログ

2021/01/05

うしろの方の「出生前診断診断の過去と現在」とかも勉強になる。第4章の「出生前診断診断と人工妊娠中絶」も、お医者さんたちとしてはこういう感じが現場にいるひととしてあおちついた感じだろうなと思う。

Posted byブクログ