追跡 金正男暗殺 の商品レビュー
今となってはそうだよなという事実。 ただその裏にあるのが各国の選挙や何からの関係で人に命も決まってくるということ。 この事件、このまま終わるのか。
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2017年の金正男暗殺事件の全貌を明らかにしたノンフィクション。マレーシア警察の捜査情報(逮捕・起訴された実行犯の供述調書や監視カメラの映像など証拠資料を含む)が主要な情報の出所であるため、この種の事件としては異例なことにその全体像が判明している。朝鮮民主主義人民共和国とマレー...
2017年の金正男暗殺事件の全貌を明らかにしたノンフィクション。マレーシア警察の捜査情報(逮捕・起訴された実行犯の供述調書や監視カメラの映像など証拠資料を含む)が主要な情報の出所であるため、この種の事件としては異例なことにその全体像が判明している。朝鮮民主主義人民共和国とマレーシアの遺体引渡交渉の経緯、事件の訴訟の一部始終なども詳述されており、事実関係については本書1冊で事足りるといってよい。特に金正男が殺害の数日前に米国の情報機関員と接触していた事実は、事件が「金ファミリー」内の権力闘争を超越する大きな国際政治上のフレームの中で起こされたことを示唆している。一方、実行犯が職業工作員ではなく、何も知らずに騙されて利用された一般人であり、それにもかかわらず危うく死刑になりかかったという問題は、諜報戦の本質的な反市民性と暴力性を象徴しており、司法や警察の恣意性も含めて、そのあり方を批判的に考える素材となろう。 なお本書は朝鮮側には全く独自の取材をしていない。著者によれば朝鮮当局サイドからのアプローチはあったが「身の安全」を考慮して断ったそうだが、ジャーナリストとしては不甲斐ないし、公平性の観点からも問題となろう。分析の甘さを感じる所が散見されることを含め惜しまれる。
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クアラルンプールの空港で暗殺された男。持っていたパスポートには氏名キム・チョル、国籍はDemocratic People’s Republic of Korea(北朝鮮)とあったので、警官は最後のKoreaから韓国だと勘違いして、韓国大使館に連絡した。韓国側はキム・チョルは金正恩...
クアラルンプールの空港で暗殺された男。持っていたパスポートには氏名キム・チョル、国籍はDemocratic People’s Republic of Korea(北朝鮮)とあったので、警官は最後のKoreaから韓国だと勘違いして、韓国大使館に連絡した。韓国側はキム・チョルは金正恩の異母兄の別称だと知っていたので、金正男が暗殺されたと報じた。もし北朝鮮に連絡していたら、そのまま遺体は北朝鮮に引き渡され、暗殺の事実は闇に葬られていたかも。 という衝撃的な幕開けで始まる暗殺事件。 実行犯の女性はいたずら番組として男に液体をかけるように依頼されただけだが、まさかそれがVXだとは知らずに。 というような恐るべきドキュメント。ラジオ「東京ポッド許可局」で紹介されていた。面白かった。
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不都合な事実を隠し、なかったことにしようとする公権力の作用。 場当たり的で恣意的な政治判断が優先され、真相の究明や法の執行がおざなりにされるのを見て、事件の黒幕はほくそ笑んでいたことでしょう。 〈P186から引用〉 無力。
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本書は朝日新聞デジタルに掲載された「金正男暗殺を追う」を元にして書かれたもの。この特集を読んでいる場合は、内容がかなり重複していると感じるかもしれない。 同書は金正男暗殺事件をひたすら追いかけたもので、当時のニュース以上のものはないが、よくまとまっているために事件の整理をするのに...
本書は朝日新聞デジタルに掲載された「金正男暗殺を追う」を元にして書かれたもの。この特集を読んでいる場合は、内容がかなり重複していると感じるかもしれない。 同書は金正男暗殺事件をひたすら追いかけたもので、当時のニュース以上のものはないが、よくまとまっているために事件の整理をするのに役立つ。 さて、金正男暗殺である。 このニュースの第一報が入った時、私は仕事中で「韓国・聯合ニュースの飛ばし記事かな?」と疑いながら、続報がないかを一生懸命に探した記憶があり、個人的になかなか忘れられない事件だった。 金正男が憎めないキャラクターとして日本で扱われていることは承知しているが、私はあまり彼をそうは見ていない。彼は後継者としての権利を失い、北朝鮮国内に留まっていることも叶わず、外国をウロウロとしながら生きていかざるを得なかった。そういう環境で出来上がった「憎めなさ」だ。後継者として扱われていた頃はお世辞にも「憎めない」などと言えるものではなかっただろう。 ただ、彼の生い立ちに想いを馳せると、同情心もわく。夫である「最高指導者」に若い「妻」ができて心を病んだ金正男の母親は治療をするために国外に出て行き、金正男は父親からの愛情も失う。金正恩たち家族と鉢合わせしないように行動が制限され、同年代の友達もおらず、未来の見えない閉塞感に悩んだであろう青年時代。甥である金正恩が後継者となってからは、育ての親とも言える張成沢が殺され、自分にも暗殺の手が伸び、そのせいで息子まで進路をたたれる。第三者からみても決して幸せとは言えない生活を送る最中、突然、空港という場所で「公開処刑」されてしまうのだ。彼の罪は、金正日の長男として生まれたこと、だろうか。 北朝鮮はそれまでも何度もテロや暗殺事件を起こしている。多くは犯人が生存したまま逮捕されることで発覚してきた。そのためか、こね金正男暗殺には外国人が利用された。女優になりたいと願うベトナムの女性や、家が貧しく少しでも稼ぎたいと思うインドネシアの女性。彼女たちの思いにつけ込んで、体に触れただけでも死亡する可能性のあるVXを素手で触らせて。 何も知らない、何も関係のない女性たちを単なる暗殺の道具とした「真の犯人」たちは、今頃北朝鮮で「英雄」として称賛されながら暮らしているのだろう。その事実こそ、人間を人間とも思わない北朝鮮の姿を映し出している。 しかし、同書を読みながら一番恐ろしく感じたのは、実行犯たちを捕まえたマレーシアの検察や政府の行動だ。調べれば調べるほど「利用されていただけ」という証拠しか出てこない実行犯たちに頑なに死刑を求刑するのも。北朝鮮との関係を改善したい「上」からの要請で、あっという間に彼女たちを釈放する姿勢も。人の命というものが、政府の「偉い人たち」の心ひとつで左右されるということ、そういうことが今も存在し、・・・いや、まさに私たちはそんな世界の中で生きているという事実を突きつけてくるのだ。 今後もこれ以上、金正男事件が明らかにされることはないだろう。そして北朝鮮は今も、事件現場にされたマレーシアや、実行犯として国民を利用されたベトナム、インドネシアとの良好な関係を保っているという。
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