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旅する黒澤明 の商品レビュー

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2020/06/01

パラサイトがアカデミー賞を獲りポン・ジュノ監督が世界の映画人から圧倒的に愛されることになった2020年。そのずっと以前に日本にも世界中から愛された(いや、今でも愛されている)監督がいました。そう、本書は「世界のクロサワ」を体感する一冊。彼の映画がグローバルに公開された時のそれぞれ...

パラサイトがアカデミー賞を獲りポン・ジュノ監督が世界の映画人から圧倒的に愛されることになった2020年。そのずっと以前に日本にも世界中から愛された(いや、今でも愛されている)監督がいました。そう、本書は「世界のクロサワ」を体感する一冊。彼の映画がグローバルに公開された時のそれぞれの国のポスター集というマニアックなコレクションです。先ずは映画のポスターが写真製版で統一のビジュアルで展開されることが当たり前の現代、それぞれの国でそれぞれの国のアーティスト、あるいはポスター職人が自らの筆でそれぞれに表現していたことが新鮮です。その多彩な表現の中にも、クロサワ映画は「日本語で言い切る」という特色を持っていたことを巻末の論考で国立映画アーカイブ主任研究員の岡田秀則が指摘しています。なるほど、「羅生門」が「ラショウモン」という音で世界展開されたように、「用心棒」は“Yojimbo”、「椿三十郎」は“Sanjuro”、「どですかでん」は“Dodeskaden”、「影武者」は“Kagemusha”、「乱」は“Ran”と表記されていて、わかるわからないを超えての「言い切りの美学」を持っていたことが世界躍進に繋がっているという分析です。つまり「題名の強度」が「映画の強度」に繋がりクロサワ映画を世界商品たらしめているということだと思います。それぞれの国で全くバラバラのポスターをパラパラと見ていると、「題名の強度」だけではないもう一つの力強いアイコンを感じました。それは三船敏郎の顔、「顔面の強度」です。眉毛、眼力、鼻筋、口元まるでハンコのようです。写真ではないドローイング時代の日本人にはあるまじき(?)顔面存在感です。無茶苦茶言うとクロサワ映画のグローバル力は三船敏郎の顔のグローバル力によって成し遂げられたのではないか?と思ったり…そんな妄想も楽しめるありそうでなかったアートブックでした。

Posted byブクログ