特攻隊員の現実 の商品レビュー
特攻とは何だったのか。命令ではなく自主的自発的な意思に基づきというのは既に半ば否定されるべきではあるが、当時の世相、軍の命令絶対服従的な空気の中、直接的に指示せずともやらざるを得ない兵士たちを取りまく空気感。 日本は太平洋戦争で各地の島嶼部を次々と米軍に奪われ敗戦への道を突き進む...
特攻とは何だったのか。命令ではなく自主的自発的な意思に基づきというのは既に半ば否定されるべきではあるが、当時の世相、軍の命令絶対服従的な空気の中、直接的に指示せずともやらざるを得ない兵士たちを取りまく空気感。 日本は太平洋戦争で各地の島嶼部を次々と米軍に奪われ敗戦への道を突き進む。そのような中で既に昭和天皇を初め軍の上層部にはどのように戦争を終結させるかの議論が巻き起こる。むざむざと降伏するくらいなら、敵に最後の一撃を加えて後、有利に交渉を進めるという考え方自体が、現実との乖離をよく表している。科学技術や物量に於いて圧倒的に劣性の日本が精神力と気迫だけで果たして100倍の敵を屠る事など出来たものか。特攻に向かう若者の中には飛行操縦を短期間に習得できる頭脳明晰な若者が沢山いた。彼らは自分たちの死がその後の日本にどう影響するか、また一時的な戦局にどれほど軽微な影響しかもたらせないか、多くは理解できていたであろう。そのような中で飛び立つ気持ちを現代の我々が理解することは不可能だ。だからそこにあるリアル(現実)を追求する事に価値はあるだろう。だが答えなどは存在せず、1人の人間が爆弾として十死零生の空へと飛び立つ際の気持ちはそれぞれ持っていたはずである。世の中の情勢、個人の遺書やインタビューから見えてくる言葉、そして統率の外道と認識しながら推し進めていく人々。様々な観点から総合的に俯瞰的に「死にゆく彼らの」心の中を想像する事は可能だ。いや寧ろ戦争を知らない今の人々がそれをする事には大いに意味があるのではないかと思う。自ら命を断つ若者たち、テレビ映像で目にするウクライナやパレスチナの人々を見て傷ましく思う人々、残虐シーンが多いゲームや映画を観て楽しむ子供達。 我々が知るべきは表面的な事実よりも、実際そこにいた(いる)当事者の気持ちではないだろうか。そして命を賭した彼らを忘れる事なく、今の日本がある事、自分たちが多少の不自由があっても暮らせている現実に感謝することではないだろうか。他人と分かち合い理解し合い、手を取り合って今を懸命に生きる事の大切さと意味を教えてくれる本。
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特攻隊員や日本軍上層部、はたまたマスコミや国民の世論などが当時どう変遷していったのかについてまとめられている。 結局、特攻は最初期にアメリカに対策を取られ、ほぼ効果のない作戦となってしまった。 そうした現実を直視しようとせず、特攻を繰り返させたのは軍の上層部だけではなく、日本国民...
特攻隊員や日本軍上層部、はたまたマスコミや国民の世論などが当時どう変遷していったのかについてまとめられている。 結局、特攻は最初期にアメリカに対策を取られ、ほぼ効果のない作戦となってしまった。 そうした現実を直視しようとせず、特攻を繰り返させたのは軍の上層部だけではなく、日本国民全員の責任である。 こういう過去の事例から、日本人は現実を直視することや論理的思考を学ばなければいけないのに未だに学べず、コロナ禍では全く意味のない対策をまさしく一億総火の玉になって邁進してしまった。 海外では最早コロナなど過去の遺物になってしまったあとも懲りずに一億総火の玉と化して同調圧力のもと、マスク警察、飲み会警察、ワクチン警察に政府、マスコミ、国民が一丸となってしまった事実には総括が必要だと思われます。 このままでは日本が成長をするはずもなく、衰退する一方で、そのうち先進国から脱落するでしょう。
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特攻隊員の心情、特攻の意図、国民の特攻・戦争観という3つの視点から特攻を考察した本。一ノ瀬俊也「特攻隊員の現実(リアル)」、2020.1発行。
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特攻隊員といっても、やさぐれた人もいれば、「おとぎの国へ行きます」というメルヘンな人もいた。国民の方も、特攻隊員にモテモテだった15歳少女「なぜみんなこんなお転婆(死語)な私に夢中になるのかしら。どうせ死ぬなら撃沈させてね。大破なんてイヤ」みたいな子がいた。それはそれとして、志賀...
特攻隊員といっても、やさぐれた人もいれば、「おとぎの国へ行きます」というメルヘンな人もいた。国民の方も、特攻隊員にモテモテだった15歳少女「なぜみんなこんなお転婆(死語)な私に夢中になるのかしら。どうせ死ぬなら撃沈させてね。大破なんてイヤ」みたいな子がいた。それはそれとして、志賀直哉の「特攻隊員は死ぬための変態的な教育を受けているから再教育しないとダメ。」というのはいかがなものかと…かといって、坂口安吾の「特攻はいい!戦争も最初から特攻を中心とした体制にしていれば…」というのも贔屓の引き倒して引きずりまくっているような気が。
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太平洋戦争の特攻隊については何冊も本がでているが、こちらは司令部や隊員だけでなく、市中の声も拾っているところが目新しいところか。初期の宣伝にわきたつも、いくら戦時体制に協力しても戦況の悪化は隠しきれない。徐々に庶民もそれに気づいてきて、本当に特攻隊員は志願しているのか、いった疑問...
太平洋戦争の特攻隊については何冊も本がでているが、こちらは司令部や隊員だけでなく、市中の声も拾っているところが目新しいところか。初期の宣伝にわきたつも、いくら戦時体制に協力しても戦況の悪化は隠しきれない。徐々に庶民もそれに気づいてきて、本当に特攻隊員は志願しているのか、いった疑問も湧いてくる。それでも大勢としては終戦時までお上に逆らわない日本の同調メンタリティは、今でも続いていて恐ろしくもある。それにしてもこの手の本で毎回思うのは、司令部の冗談ではないかと思うほどの無策、無責任。特攻も初期の一撃講和という見せかけにせよ、筋のある戦略として立案したものが、いつのまにか、ただ止められないルーティンと化してしまう。これも日本のメンタリティであるようで恐ろしい。
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2020年1月読了。 相変わらず読ませる、考えさせる、一ノ瀬先生。 特攻隊員は何も全員が狂信的に敵の撃滅を心底から願って出征したのではなく、銃後社会での両親の生活の安寧を願えばこそ飛ばざるを得なかったり、いたいけない少女がまさに血の汗を流して学業をほっぽり出して生産活動に勤しんだ...
2020年1月読了。 相変わらず読ませる、考えさせる、一ノ瀬先生。 特攻隊員は何も全員が狂信的に敵の撃滅を心底から願って出征したのではなく、銃後社会での両親の生活の安寧を願えばこそ飛ばざるを得なかったり、いたいけない少女がまさに血の汗を流して学業をほっぽり出して生産活動に勤しんだ成果物である飛行機と彼女らの期待を無碍に出来なかったがために飛んでいったり、実に当たり前だけど諸相あることが史料を読んでいくことで明らかにされている。 翻って指導層は、端的に言えば「俺は特攻を命令してはいない」と犬にも劣る外道ぶりを発揮しているのもいる(陸軍では河邉虎四郎中将、海軍では淵田美津雄大佐の事案が紹介されている、238ページ)。 今だったら差し詰め「俺は過労死するまで仕事しろとは言ってない」とか「私は命を削ってまで金メダルを取れとは言ってない」みたいな話か。 戦後75年、「人間は自分たちが思っている程に劇的には進歩していない」(某先生の名言)を思い返すのに好適な1冊でした。
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