国際収支の基礎・理論・諸問題 の商品レビュー
国際収支の包括的なテキスト。 国際収支統計の見方から始まり、国際収支の背景にある経済理論を解説し、近年話題となるグローバルインバランス問題、国際収支と為替レートの関係を取り上げる。 著者は、外銀の為替業務を経て、今は財務省国際局にいる方。それもあって、理論の解説に止まらず、市場参...
国際収支の包括的なテキスト。 国際収支統計の見方から始まり、国際収支の背景にある経済理論を解説し、近年話題となるグローバルインバランス問題、国際収支と為替レートの関係を取り上げる。 著者は、外銀の為替業務を経て、今は財務省国際局にいる方。それもあって、理論の解説に止まらず、市場参加者にとってのインプリケーションなどを取り扱うなど、実務家にとって有用な内容となっている。 興味深かった点を挙げていくと、 ・金融収支は貸方借方が常にバランスしており、国際収支の赤字黒字は常に貿易・サービス・所得収支といった経常収支サイドによって発生する ・90年代から2000年代初頭にかけての通貨危機とそれ以降の危機は性質が異なり、後者は危機から比較的早期に立ち直っている。一番の違いは前者は事実上の固定相場制とその崩壊で後者は曲がりなりにもフロート制であったこと ・貿易の決済通貨や為替ヘッジの状況を加味して経常収支に起因する為替フローを推計すると、ネット円売りが一貫して継続している。経常収支が黒字だから円高圧力がかかるはずという議論には注意が必要 ・高金利通貨が低金利通貨に対して減価することと、金利の引き上げによって通貨価値が上昇することは理論的に矛盾しない ・複雑な為替市場を説明する一般理論は存在せず、その場その場で当てはまりの良いアプローチを適用していくしかない。
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