犬身(下) の商品レビュー
これだけページ数が多いのに、人間→犬に変身するというファンタジックな展開は数行で言及するだけで終わる。また、結末もあっさりしていて、物語の肝となる出来事の真相(朱尾の正体、ブログの書き手)は明確に語られない。その代わり、梓とフサの濃密な時間がじっくり描かれることで、読者も一緒に生...
これだけページ数が多いのに、人間→犬に変身するというファンタジックな展開は数行で言及するだけで終わる。また、結末もあっさりしていて、物語の肝となる出来事の真相(朱尾の正体、ブログの書き手)は明確に語られない。その代わり、梓とフサの濃密な時間がじっくり描かれることで、読者も一緒に生活を共にしていたような錯覚を得る。 「最愛の子ども」には及ばないが、その突飛な設定からはかけ離れているような生活に徹頭徹尾寄り添ったナチュラルな小説であった。 房恵と仕事相手である久喜の関係性と、「奇貨」の登場人物のリンクについて、時間があるときに考えてみたい。
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強い犬化願望のあった30歳の女性が、ある日犬になる。望みどおり知人の飼い犬として幸せな日々を送れるかと思いきや……。読売文学賞受賞作。 LGBTを通り越して、人間であることに違和感を覚える女性という設定にひかれ、また登場人物の名前も南総里見八犬伝の面々を用いて遊び心があったため...
強い犬化願望のあった30歳の女性が、ある日犬になる。望みどおり知人の飼い犬として幸せな日々を送れるかと思いきや……。読売文学賞受賞作。 LGBTを通り越して、人間であることに違和感を覚える女性という設定にひかれ、また登場人物の名前も南総里見八犬伝の面々を用いて遊び心があったため、愛犬家が気軽に楽しめるファンタジーかと思っていた。ところが、初っ端からなかなか生々しく、本に向かう姿勢を早々に改める。 話が進むほどに重苦しい展開となり、飼い主である女性の置かれた環境があまりにもおぞましく強烈で、読むのがつらくなってくる。またそのせいで、せっかくのユニークな設定や犬としての主人公の心のうちは、印象が弱くなってしまった感も。読みごたえはあったけれど、どちらをメインに書きたかったのか、長い割には半端な感じも否めなかった。
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分厚い本(上下巻に別れてないものを読んだので)。最初から気味の悪い描写が多くて、全く読み進めなくて挫折しそうだった。我慢して読んでいると、犬と飼い主の愛がほんわかと伝わってくる部分になって、なるほどふむふむと読んでいると、まさかのファンタジーに突入。えっ嘘でしょと思いながら、そこ...
分厚い本(上下巻に別れてないものを読んだので)。最初から気味の悪い描写が多くて、全く読み進めなくて挫折しそうだった。我慢して読んでいると、犬と飼い主の愛がほんわかと伝わってくる部分になって、なるほどふむふむと読んでいると、まさかのファンタジーに突入。えっ嘘でしょと思いながら、そこから本格的に気味の悪い世界になっていく。読んでいてどの登場人物も好きになれない。これでもかこれでもかと闇を描く。 犬としての感情、散歩の気持ちよさや飼い主に対する愛情表現はとても生き生きとしていて、引き込まれるのに、なぜ人間のことはここまで悲惨に描き出すのか?と思ってしまう。 最後までファンタジー部分は解明されないままだが、最後の数ページで突然気持ちが救われる。この数ページのために今までの暗黒があったのか?と思うくらい。 その数ページがあるために後味は悪くはないが、読むのが疲れた。
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