教材・教具・ICTの教室活用アイデア の商品レビュー
発達障害をもつ子どもにICTを使いつつどう接していくか、を書いた本。 極論を言えば「ICT」というフレーズで読者を釣って、発達障害をもつ子どもへの接し方を書いた本。 「これまでのICT活用というと、教師が指導に使うものがほとんどでした。しかし、発達障害のある子どもたちにとっては...
発達障害をもつ子どもにICTを使いつつどう接していくか、を書いた本。 極論を言えば「ICT」というフレーズで読者を釣って、発達障害をもつ子どもへの接し方を書いた本。 「これまでのICT活用というと、教師が指導に使うものがほとんどでした。しかし、発達障害のある子どもたちにとってはそういった側面よりも、学びを支えるもの「支援ツール」としてのニーズが注目されるようになってきました」という一節が、最終章のp.121に出てくるのがその端的な一例。 読み手はICTでどう伝えるかを意識しつつICT技術を見てる。でも、教師だけでなく発達障害をもつ子どもの側も、ICTで伝えられることが増える。話すのが苦手なこどもが、絵を指さすことで意思表示するのを支援するソフト(VOCA)や、距離感を意識するのが苦手な子どもに具体的な距離を図るソフトを使って指導する例などがその端的な例。 発達障害を持つ子どもは結果的にコミュニケーションをとる段階でトラブルを起こしがちで、結果的にまわりと良好なコミュニケーションを取れず、良好な社会参加も難しくなる、という循環にはまりがち。その最初のコミュニケーションをスムーズにして、二次的なトラブルを少なくする必要がある。 「このような子どもの存在を理解し、彼らの考え方を理解しようとすることが大切[p.19]」で「「普通はこうだ」と押し切るのではなく、少数派の子どものものの捉え方を理解しようとすることが重要[p.19]」だからこそ、こちらの思うことを伝えることよりもあちらの思うことをより伝えやすくする必要がある。そこにICTが役立つシーンもあるが、ICT以外の旧来の手法にも役立つものがたくさんある。 それを「こういう障害がある子にはこういう手法がある」という形で説明してくれる。 発達障害はいろいろな障害の総称。それを単純化したがっている側に「問題の原因にはいろんなものがあるし、その対応もICTでパッと解決できるようなものではなく、いろんな対応を絡めていく中でICTもある」という現実をやんわり指摘してくれる一冊ではある。 ただ、発達障害を抱えた子どもが適切に対応されないと、結果的に周りから理解されないこと前提のコミュニケーションを取る人がでる(その例は非常に多い)。それがある種のパーソナリティ障害的に固定化している場合、発達障害の「まずは聞いていく」姿勢が果たして正しいのかよくわからない所がある。 一見HOWTO本に見えるし、そういう面もあるんだけど…なんか考えさせられた本でもありました。
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