西への出口 の商品レビュー
とある中東の国の戦火を逃れる二人が潜ったのはある「扉」。 どこでもドアのごとく、どこか別の国に通じているその先にあっても、住民との軋轢や摩擦がもちろんあり、安住の地があるわけではない一方で、どこか別の人もまた、その扉をくぐり続ける。 180ページ程度の小説に鮮烈に描かれたグロ...
とある中東の国の戦火を逃れる二人が潜ったのはある「扉」。 どこでもドアのごとく、どこか別の国に通じているその先にあっても、住民との軋轢や摩擦がもちろんあり、安住の地があるわけではない一方で、どこか別の人もまた、その扉をくぐり続ける。 180ページ程度の小説に鮮烈に描かれたグローバルな世界の縮図。いまだに小説って新しいことができるんだなあ。
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粗筋からいうと結構悲惨。中東が舞台。宗教はイスラムっぽい。既にこの土地に難民が入り込んでいるが、武装勢力と政府の紛争で周りの人や知り合いが死んだりしていて、外出も制限され、食糧物質は不足。船や飛行機でなく、仲介者により「扉」を使用し、別の場所に行けるという。若いカップルは旅立つ準...
粗筋からいうと結構悲惨。中東が舞台。宗教はイスラムっぽい。既にこの土地に難民が入り込んでいるが、武装勢力と政府の紛争で周りの人や知り合いが死んだりしていて、外出も制限され、食糧物質は不足。船や飛行機でなく、仲介者により「扉」を使用し、別の場所に行けるという。若いカップルは旅立つ準備をする。最初から貧しい生活をしていたせいか、逃亡した先でも2人とも精神的に安定していて、悲壮感はそれほどない。うーん。普通の本って感じで、どうも他の方ほど、この本に陶酔する要素は見当たらなかった。
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内戦で荒れる国で暮らすカップルが、別の国にワープできる扉を幾度も開きながら、新しい世界へ移動していく。難民の物語といえば国境を超える部分をドラマチックに描く事が多いが、この小説はそこをばっさりカットして新らしい切り口。移動するたび二人のキャラの違いが出てくるのが面白いし、無条件に...
内戦で荒れる国で暮らすカップルが、別の国にワープできる扉を幾度も開きながら、新しい世界へ移動していく。難民の物語といえば国境を超える部分をドラマチックに描く事が多いが、この小説はそこをばっさりカットして新らしい切り口。移動するたび二人のキャラの違いが出てくるのが面白いし、無条件に結束固めていく話より納得できる。ただこの所謂「行先指定できないどこでもドア」がマジックリアリズム的な雰囲気を醸し出す唯一の要素なのが少し物足りない。あと文章がドライすぎて少し読み辛かった。感情を排した文体嫌いじゃないけど
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著者はパキスタン出身の英語作家。中東を思わせる国。付き合い始めて間がないサイードとナディア。内紛により、市街戦が激しくなる中「別の国に繋がる不思議な扉」の噂がたちはじめた。そして2人も1つ、また1つと扉を潜る。溢れかえる移民・難民、拭えぬ不安、底を尽きるお金、飢え。さらに排外主義...
著者はパキスタン出身の英語作家。中東を思わせる国。付き合い始めて間がないサイードとナディア。内紛により、市街戦が激しくなる中「別の国に繋がる不思議な扉」の噂がたちはじめた。そして2人も1つ、また1つと扉を潜る。溢れかえる移民・難民、拭えぬ不安、底を尽きるお金、飢え。さらに排外主義者による暴力。支え合えるのはお互いだけなのに、すれ違い始める2人を見るのがとても悲しかった。扉は増え続け、状況は変わりつつあり、2人の絆の形も変化していく。ファンタジーの中に生々しいフィクションを思わせる部分もある。わずか200ページ弱だが、強烈な印象を残す話だった。特にサイードの人物描写が素晴らしい。
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