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21世紀の啓蒙(下) の商品レビュー

4.5

20件のお客様レビュー

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2024/02/18

下巻は上巻と変わってヒトの内面についての記述多めだが、引き続き科学的な知見でデータに基づいた意思決定を行なうことが大事という内容。 上巻の感想で保守だのリベラルだの書いたが、下巻でピンカー先生がどっちも否定してて笑った。トランプ全盛期でアメリカ独特の空気感が伝わってきた。 現在は...

下巻は上巻と変わってヒトの内面についての記述多めだが、引き続き科学的な知見でデータに基づいた意思決定を行なうことが大事という内容。 上巻の感想で保守だのリベラルだの書いたが、下巻でピンカー先生がどっちも否定してて笑った。トランプ全盛期でアメリカ独特の空気感が伝わってきた。 現在は経済発展の視点では沈んでいるイスラムだが、かつて科学技術で名を馳せたように将来復権できるかも楽しみ。

Posted byブクログ

2024/01/03

上巻より抽象度が高まった感じがしたのは、下巻は宗教や哲学、ヒューマニズムを論じるテーマを取り扱っているからだろう。人類の知性と幸福、啓蒙について考察する。知能指数は世界のあらゆる地域で、10年ごとに3ポイントのペースで上昇し続けているとする(フリン効果)。この要因は、栄養と健康、...

上巻より抽象度が高まった感じがしたのは、下巻は宗教や哲学、ヒューマニズムを論じるテーマを取り扱っているからだろう。人類の知性と幸福、啓蒙について考察する。知能指数は世界のあらゆる地域で、10年ごとに3ポイントのペースで上昇し続けているとする(フリン効果)。この要因は、栄養と健康、学校教育や日常における学術的概念の普及だと考えられる。頭が良くなっていると言えるのだろうか。 過去の偉人たちが現代の技術、数学的な理解が出来ていなかったからといって、知能が低かった訳ではない。旧約聖書の神は、何百万人の無辜の民を殺し、古代イスラエル人に集団強姦や虐殺を命じた。神への冒涜、偶像崇拝、同性愛、姦通、親への口答え、安息日の労働には死罪を宣告しながら、奴隷制度や強姦、拷問、手足の切断、虐殺を特に悪とはしていなかった。これは青銅器・鉄器時代に普通に行われていたことだからだ。つまり、宗教も科学も、その時代の価値観や技術の蓄積といった制約条件の中で成立している。 国連開発計画は毎年、「人間開発指数」を発表している。これは経済学者のマブーブルハックとアマルティアセンが考案したもので「平均寿命、一人当たりのGDP、教育水準」と言う人間開発における3つの主要要素で構成されている。幸福度を示す指標として見ることができるのだという。 労働時間は減り、家事の時間も減り、明かりを1時間確保するための対価も減り、余暇時間は増えた。あらゆる数値が向上しているのに、人間は幸せになっていない。 変化に慣れてしまう。社会的比較理論からの説明で周囲と比較してしまう。そのため、寿命が伸び、健康が増進し、知識や余暇が増え、様々な体験ができ、平和で安全に暮らせ、民主主義が広まり、数々の権利を獲得できていても、幸せを感じるどころか、ただ孤独にさいなまれ、自殺が増加したり、心の病が蔓延する。 本当にそうなのか。 実は、人は幸せになっていないという命題自体が誤りであった事が証明されているようだ。裕福な人ほど幸せを感じているし、豊かな国の人々はそうでな国の人々より幸せを感じていると言うデータがある。SNSによって自らを相対的に不幸だと感じてしまうと言う現象は、社会評論家が作ったヒステリックな誤解だという訳だ。実際にはSNSを利用する人間の方が幸福を感じるか、そうじゃない人と同等レベルであることがわかっている。自殺率も実際には低下傾向にある。 ただし。 意義深い人生を送ることと、楽に欲求を満たすこととは異なる。楽をする人生に日々の達成感があるかというと別だ。幸福と充実は異なる。怠惰は安寧で幸福だが、充実ではないのだろう。仕事に挑戦する事、自らの成長を感じる充実感は、時に過度なストレスを伴う。 ヒューマニズムを紐解き、その源をたどれば枢軸時代に遡る信念体系の中にも見つかるかもしれない。それが理性と啓蒙の時代に注目され、イギリスの権利の宣言1689年、アメリカのバージニア権利章典、1776年、フランスの人及び市民の権利の宣言1789年を生み、さらに第二次世界大戦後に国際連合を世界人権宣言1948年、その他の協力の枠組みへつながった。枢軸時代とは、世界同時多発的に戒律的、善的思想が体系化された時代の事だ。青銅器時代の価値観の上での説法だが、重要だった。 そして今、人は、自分が数多くの重なり合った部族に属していると感じている。部族、内集団、提携といった認知カテゴリーは、抽象的かつ多次元的なものである。国だけではなく、故郷、母国、宗教、民族に限らず、母校、クラブ、会社、スポーツチーム、社会団体。適用範囲の中で、利害を共にし、幸福を分かち合う、そのためにパーパスとルールを共有する事。多様化しながら、境界線が重なり合うコアな部分に、普遍的価値観としての平和や充実した幸福が浮かぶ事を願う。

Posted byブクログ

2023/10/31

ピンカー氏の流麗な語りは読んでいて楽しい。知性を信じてやまない氏の姿勢は私は好きだ(また本書の読者層もおそらく好むだろう)が、おそらく好みが分かれるところだろう。多くの人の支持を受けている宗教を理性の下位互換とするなど、受け入れがたい層も多いだろう。知性と理性を尊重するあまり、知...

ピンカー氏の流麗な語りは読んでいて楽しい。知性を信じてやまない氏の姿勢は私は好きだ(また本書の読者層もおそらく好むだろう)が、おそらく好みが分かれるところだろう。多くの人の支持を受けている宗教を理性の下位互換とするなど、受け入れがたい層も多いだろう。知性と理性を尊重するあまり、知性の外にあるものへの無意識な軽蔑がそこはかとなく透けて見える。そしてこれは日本を含め多くの社会で見られる構図だ。とても学びが深いし興味深い。 一部アラブ社会の経済成長の遅れが聖職者の干渉によるものというのは誤解が含まれるように思う。アラブ世界を対象とした研究結果を見る限り、他の要素の影響が大きいため、その二者が因果関係にあるとはいえない。

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2023/03/26

この長い論考の主張は、ヒューマニズムの擁護の一言に集約されるとだろう。長寿、健康、幸福、自由などを最大化するという考えをヒューマニズムと位置付け、これを実現するために人類は理性、科学を磨き、進歩を積み重ねてきた。しかし、現今、これらの批判が渦巻いている(ポストモダニズム、ポピュリ...

この長い論考の主張は、ヒューマニズムの擁護の一言に集約されるとだろう。長寿、健康、幸福、自由などを最大化するという考えをヒューマニズムと位置付け、これを実現するために人類は理性、科学を磨き、進歩を積み重ねてきた。しかし、現今、これらの批判が渦巻いている(ポストモダニズム、ポピュリズム、科学軽視の横行・・)。著者は種々のデータを提示しつつ人類はよりよい方向に歩みを進めていることを論証しつつ、上記の反啓蒙主義を批判。改めて理性、科学、ヒューマニズム、進歩の大切さを説く。「21世紀の啓蒙」とタイトルが付された所以だろう。 暗いニュースが続き、予測しがたい将来を見据えなければならない時代を生きているという実感を抱く中で本書に出会えたことは、非常に価値のあることと感じる。一市民として前向きに生活しようというモチベーションにもつながる。一方、政治家の皆さんなどは是非襟を正して本書を一読してもらいたいものだとも思う。

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2022/12/14

理性、科学の価値を再発見できた。 これからの世界のあり方について、深い安堵を抱くことができ、いくつかの事柄に希望が持てた。 宗教とニーチェについて容赦がない。

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2022/10/01

評論家やジャーナリストなど危機の煽り屋だ、とでも言いたげな、割と挑発的な論調となっていて、「第2分類の」人文学者などから忌み嫌われるのもわかる気がする。あまりに危機感を持ちすぎて絶望的になるのも良くないが、世の中全体が楽観に満ちてしまうのもまた恐ろしい結果を招きそうだし、その辺の...

評論家やジャーナリストなど危機の煽り屋だ、とでも言いたげな、割と挑発的な論調となっていて、「第2分類の」人文学者などから忌み嫌われるのもわかる気がする。あまりに危機感を持ちすぎて絶望的になるのも良くないが、世の中全体が楽観に満ちてしまうのもまた恐ろしい結果を招きそうだし、その辺のバランスは難しいな。

Posted byブクログ

2022/08/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「第1部 啓蒙主義とは何か」「第2部 進歩」では、18世紀の啓蒙時代以来人類が歩んできた進歩について、事実の一部だけを見て悪い方向に進んでしまっている(または、進んでしまう)と思い込みで判断を誤らないよう、世の中は人類の叡智により確実に良い方向に向かっていることを丁寧にデータで示している。  「第3部 理性、科学、ヒューマニズム」では、台頭するポピュリズムに対し、啓蒙主義として「理性」の大切さを滔々と説く。

Posted byブクログ

2022/01/11

「フリン効果」IQが全人類的に毎年上昇していること23 「信仰をもつ者が懐疑論者より幸福だというのは、ちょうど酔っぱらいがシラフの人間より幸福だというのと同じようなもの」ジョージ・バーナード・ショー113 左右どちらのポピュリズムも「ゼロサム競争」という経済の俗説を信じている...

「フリン効果」IQが全人類的に毎年上昇していること23 「信仰をもつ者が懐疑論者より幸福だというのは、ちょうど酔っぱらいがシラフの人間より幸福だというのと同じようなもの」ジョージ・バーナード・ショー113 左右どちらのポピュリズムも「ゼロサム競争」という経済の俗説を信じている。左は経済的階級。右は国家間あるいは民族間。204 ポピュリズムの支持者は経済競争の敗者だと思われていたが、じつは「文化競争」の敗者だったとデータが結論した(文化競争の敗者=人の多様性やマイノリティの権利とかの現代社会の趨勢を学んでこれなかった、あるいは理解出来なかった低学歴者、地方の男性など)イングルハートとノリス216 科学に関する格言「葬式があるたびに進歩が起きる」221 アメリカのある左派の記者が「トランプによってアメリカが墜落すればより早く改革的な考え方が浸透するだろうから、逆にそうなったほうが良い」と言ったように左派メディアの社会の描写は過激化している。ことさらに社会のデストピアを強調して、自国が「燃え盛る巨大なゴミ箱」のように表現する。それをウンザリするほど聞かされる若者は「世の中はメチャクチャで最悪、解決の仕様がない」と早合点する。それが彼らの政治離れ、低投票率の原因。つまり過激で煽動的な誇大社会描写は逆効果だ。222 民主主義の利点は「選挙にある」は誤解。本来の利点は、選挙以上に「権力が制限され、国民の要求に敏感に反応し、かつ政策の結果に注意を払う政府」を持てることである287 科学の第一原則は「自分を騙してはいけない。自分というのは一番騙しやすい相手だ」リチャード・ファインマン302 治療法開発、臨床実験などに倫理、ポリコレで規制する事に対し「年に10万人の命を奪う致死性疾患の治療法開発を一年遅らせることは、その10万人の死の責任を負うことになる」と批判 ジュリアン・サバレスキュ このような行き過ぎた規制は社会各所で起きていて、ハーバードの「一般教養科目の習得要件」にも反映されている323 美術史の一分野として始まった考古学(!)は、今やハイテク科学の一分野でもある(科学と人文学の協力)331 「政府そのものが人間性の最も偉大な反映でなくして、いったい何だというのか」ジェームズ・マディソン331 多様な文化が共通の基盤を築く必要に迫られると、その模索はヒューマニズムへと収斂する(これは歴史が証明している。『世界人権宣言』など)352 白い衣にサンダル姿の男(キリスト)359 神の存在は検証可能である。例えば出産で命を落とす母親、小児癌で衰弱する子供、地震と津波の大量の犠牲者は全て「自業自得」だというデータがあるのか?と質問すれば良い。360 今日の(良識ある)信者は神の命令(聖書など)から人道的な部分だけ選び出し、そうでないものは寓話と解釈したり、修正したり、無視したりする。これが重要な点。つまり宗教信者は「ヒューマニズムのメガネ」をとおして聖書を読んでいる。(本気で信じるんなら「害悪あるヒューマニズム」なんて使うなよ!)372 2004年の調査では日本、チェコ、スウェーデンでは「神を信じていない」と答えた人が50%を越えた426

Posted byブクログ

2021/12/23

やっと一読終了、きつかった 下巻は、第2部途中から、知識を得て人間は賢くなっている から、スタート 教育がひろまり、男女格差も縮小している、幸福感、リスク、核の脅威の縮小、そして今後とも進歩は続いていくが、第2部の結論 第3部 理性、科学、ヒューマニズム ・理性を失わず合理的に議...

やっと一読終了、きつかった 下巻は、第2部途中から、知識を得て人間は賢くなっている から、スタート 教育がひろまり、男女格差も縮小している、幸福感、リスク、核の脅威の縮小、そして今後とも進歩は続いていくが、第2部の結論 第3部 理性、科学、ヒューマニズム ・理性を失わず合理的に議論しよう ・科学を養護しよう、自然科学と人文科学を融合しよう ヒューマニズムは、人類を進歩させる新しい神話であり、人類全体の物語である、が最後に語られる

Posted byブクログ

2021/07/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

下巻の中盤までは「FACTFULNESS」(ハンス・ロスリングほか)の拡張版というイメージです。 長い眼でみた人間の生活はとても良くなっているということを、これでもか!という調子でデータを駆使しながら実証していきます。日々、良くないニュースばかりが報道され、数日間の報道では世界はドンドン悪い方に向かっているように見えても、1世紀・2世紀という単位でニュースを報じれば、確実に社会は良くなっていると言います。後半は啓蒙主義の主張で、かなり熱が入ってきますが、同時にトランプ大統領(&ニーチェ)をやり玉にあげており、著者と真逆に位置するのだと思いました。 理性と科学を軸に考えるのが「啓蒙主義」の考えのようです。確かに、科学の進歩によって、我々庶民でも、かつてのローマ皇帝より良い生活ができるようになりました。残る課題は、温暖化問題と核兵器としながら、これらも長期的には解決の方向に向かうであろうと、「楽観主義者」ならぬ「可能主義者」は説きます。こうしたトーンなので、著者の博覧強記に驚きつつも、読後感は希望に満ちた明るいものとなります。 一方、個人的には、科学が進歩して生活環境が変化しても、古典を読むと人間の心や人間関係などは変わらないのかなと思ったりしたのですが如何でしょう? PS 文中、いま流行のコロナウイルスに関連した以下も参考まで。 「風邪のウイルスのように人から人へと急速に感染する病原体は、自然淘汰の結果、今では宿主を生かして歩行できる状態に保とうとするようになっている。そうすれば宿主ができるだけ多くの人々と握手し、その人々に向かってくしゃみをすることで、増殖していくことができるからだ。病原体が狂暴化して宿主を殺そうとするのは、宿主から宿主へと移動するための別の手段-蚊(マラリア)や汚染された水(コレラ)、負傷した兵士でいっぱいの塹壕(スペイン風邪)など-を見つけたときである。(中略)宿主に何の症状も出さないまま長いあいだ潜伏と続け、そのあいだに宿主がパートナーを感染させるようにするのだ。病原体が宿主の身体を蝕むのは、そのあとになる。つまりある病原体に感染力があるといって、殺傷力も強いわけではないということだ。」

Posted byブクログ