氷の轍 の商品レビュー
「詩」と「親子」がモチーフで思い出すミステリーといえば「人間の証明」なのだが、この作品もまさにそれ。 過去は過去として忘れられはしないけど、今の生活が平穏なら今を大切に生きていこうとする人と、 なんとしてでも昔のことをはっきりさせよう、親子の対面を果たそうとする人の、 悲しい結末...
「詩」と「親子」がモチーフで思い出すミステリーといえば「人間の証明」なのだが、この作品もまさにそれ。 過去は過去として忘れられはしないけど、今の生活が平穏なら今を大切に生きていこうとする人と、 なんとしてでも昔のことをはっきりさせよう、親子の対面を果たそうとする人の、 悲しい結末。 どちらも悪者ではないし、前者が薄情なわけでもないし後者だって善意。 さまざまな人間模様に、ページをめくる手が止まらなかった。 やっぱりたまには読みたくなる桜木紫乃。 文章がとっても好き。
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殺害されてしまった彼は、けして悪い人では無いし何なら良いこと善意で動いていたのだけど。善意が時として悪意と変わらない、というのが辛いですね。 北海道を舞台としており、戦中戦後の話も混じるので、令和の時代にピンと来ないこともあるのですが、こうやって歴史というのは繋がっているんだなと...
殺害されてしまった彼は、けして悪い人では無いし何なら良いこと善意で動いていたのだけど。善意が時として悪意と変わらない、というのが辛いですね。 北海道を舞台としており、戦中戦後の話も混じるので、令和の時代にピンと来ないこともあるのですが、こうやって歴史というのは繋がっているんだなと感じます。 私はミステリーが好きなので、それ以外の作品は読むか分かりませんが、良い作者でした。
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良かれと思い行動に移すことが時として、他人を傷つける。 結果として、独り善がりとなる。 人の性とは なんとも やりきれない
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良質なミステリーです、言葉の一つ一つや文章全体から発せられるものは、桜木紫乃さんの作品に間違いありません。
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血の繋がりに固執する人間と、情が薄く、それを意識もしないで生きていく人間。戦後の混乱期に離れ離れになった人々を調べていく過程で、また、自らの出自にそれを重ねざるを得ない主人公の心情。深いです。ドロドロです。 釧路という舞台。夏がなく、濃霧や曇天が極端に多い土地。これが、この物語の...
血の繋がりに固執する人間と、情が薄く、それを意識もしないで生きていく人間。戦後の混乱期に離れ離れになった人々を調べていく過程で、また、自らの出自にそれを重ねざるを得ない主人公の心情。深いです。ドロドロです。 釧路という舞台。夏がなく、濃霧や曇天が極端に多い土地。これが、この物語の背景にピッタリはまっています。 氷原と比べると、プロットがしっかりしていて、完成度の高い1冊になっています。
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絡み合った人間模様。 拭いきれない過去。 そうだったんのか。と思ったところもあるが、淡々と進む内容に若干の物足りなさを感じました。 過激さ?を求める自分がいます。
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桜木紫乃の釧路を舞台にした女性刑事シリーズの第二弾。第一弾に登場の松崎刑事の後輩が主人公。釧路〜札幌〜八戸とつながる昭和30年代的な親子別れの悲しい物語と刑事自身が養子であることの母との葛藤がギリギリうっとおしくない程度に微妙に絡まる。 前作よりも釧路らしさは薄まり家族とか親娘と...
桜木紫乃の釧路を舞台にした女性刑事シリーズの第二弾。第一弾に登場の松崎刑事の後輩が主人公。釧路〜札幌〜八戸とつながる昭和30年代的な親子別れの悲しい物語と刑事自身が養子であることの母との葛藤がギリギリうっとおしくない程度に微妙に絡まる。 前作よりも釧路らしさは薄まり家族とか親娘とか父娘がミステリーのサイドストーリーかな。 桜木紫乃の作品でよくある話が複雑すぎてメインストーリーに迷ってしまうのは相変わらず。塩谷省三の解説が良かった。 3.5
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釧路市の千代ノ浦海岸で発見された老人の他殺死体。孤独だった被害者が人生の最後に、恋心と悔いを加速させすがろうとした縁。直木賞作家唯一の長編警察ミステリー最新作。 人間は年齢を重ねると、自己中心的な考え方が自分の中で正論化される。他人の気持ちよりも自己満足が優先されるため、所謂お節...
釧路市の千代ノ浦海岸で発見された老人の他殺死体。孤独だった被害者が人生の最後に、恋心と悔いを加速させすがろうとした縁。直木賞作家唯一の長編警察ミステリー最新作。 人間は年齢を重ねると、自己中心的な考え方が自分の中で正論化される。他人の気持ちよりも自己満足が優先されるため、所謂お節介が過ぎてしまう。誰も悪くないのに起きた不幸…やりきれない思いが残る作品。
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テレビで見かけ、昔関係があった人物を訪ねたことが遠因となって殺されるというシチュエーションは、松本清張著『砂の器』を連想させる(テレビと映画の違いがあるが)。 だからといって、もちろんこの小説の質を貶めるものではない。 主人公の女性刑事の家族環境が、事件関係者のそれと重層的に設定...
テレビで見かけ、昔関係があった人物を訪ねたことが遠因となって殺されるというシチュエーションは、松本清張著『砂の器』を連想させる(テレビと映画の違いがあるが)。 だからといって、もちろんこの小説の質を貶めるものではない。 主人公の女性刑事の家族環境が、事件関係者のそれと重層的に設定されることで、彼女たちを同一線上に立たせる。 殺人事件の捜査が主筋となるミステリー仕立てだが、釧路の気候と登場人物たちの背景が見事にマッチング。 北原白秋の詩が、被害者の心境を映すかのように全編に通奏低音の如く流れ、馥郁とした文芸作品となっている。
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少しずつ紐解かれていく被害者の過去と最後に出会った女性生い立ち。 どこにも逃げ場のない釧路の町で生きている人と過去の悔恨から行動を起こした老人の考え方、価値観の違いが悲しかった。 どちらの言い分も分かる。お互いがお互いの考えを譲らないゆえの悲劇。 桜木作品はどれも北海道の底冷えす...
少しずつ紐解かれていく被害者の過去と最後に出会った女性生い立ち。 どこにも逃げ場のない釧路の町で生きている人と過去の悔恨から行動を起こした老人の考え方、価値観の違いが悲しかった。 どちらの言い分も分かる。お互いがお互いの考えを譲らないゆえの悲劇。 桜木作品はどれも北海道の底冷えする温まることのない寒い長い冬を連想する。 どんなに凍えるような冬を過ごすことになってもそこで生まれ育った人はそこで生きていくしかないという諦観をおぼえる。
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