未完の計画機(3) の商品レビュー
『未完の計画機』もついに3冊目。「より速く!より高く!」とあり、高速と高高度を目指した機体が中心。より高く、には宇宙船も含まれる。 中でもインパクトがあるのがアメリカのプルート計画。原子力ラムジェットの構想を知って「これは爆弾落とさなくても敵国上空を飛べばそれだけでダメージにな...
『未完の計画機』もついに3冊目。「より速く!より高く!」とあり、高速と高高度を目指した機体が中心。より高く、には宇宙船も含まれる。 中でもインパクトがあるのがアメリカのプルート計画。原子力ラムジェットの構想を知って「これは爆弾落とさなくても敵国上空を飛べばそれだけでダメージになるのでは?」とのツッコミがあったが、アメリカはマジでそれを考えていた。 超低空をマッハ3で飛び、ソ連に到達したら複数目標に核爆弾を投下し最後は自分も突入する。この過程で多大な放射能汚染をまき散らす。原子力ラムジェットなので離陸して数日は飛べるとか無茶苦茶。 あと、ソ連のブラン計画も出ている。「スペースシャトルは不経済」という結論を出しておきながら、結局は類似した計画を進めることになったソ連。米ソの冷戦は軍拡競争の末ソ連の経済破綻で幕を閉じる。ソ連を追い詰めた一手がこれ(というか自爆)。 スペースシャトルが西海岸から極軌道に飛ぶとすぐソ連に到達する。ならアメリカはその際にソ連を爆撃する計画があるはずだ、という疑心暗鬼からの決めつけがソ連を動かしたという。 そこには、ミラー・イメージングという心の働きがあったのではと推測する。自分が考えることは相手も考え、行動するはずだ、という思い込み。往々にして人は他人と戦うのではなく、相手の中に見出した自分と戦ってしまう。 飛行機を通して、かくも深く人間が描き出される。
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