後妻の湯 種付けしてください 熟妻、若妻、隣人妻 の商品レビュー
よく練られた設定とストーリー
サブタイトルのうち「若妻」たる次男の妻【蘭】32歳と「隣人妻」の【美香】38歳は後妻であり、長男の妻だったが今は未亡人である「熟妻」の【しのぶ】34歳も後に後妻となる。これが例えば20代・30代・40代だったら正鵠を射たかもしれない若妻や熟妻といった表現だが、実際は年齢が近いため...
サブタイトルのうち「若妻」たる次男の妻【蘭】32歳と「隣人妻」の【美香】38歳は後妻であり、長男の妻だったが今は未亡人である「熟妻」の【しのぶ】34歳も後に後妻となる。これが例えば20代・30代・40代だったら正鵠を射たかもしれない若妻や熟妻といった表現だが、実際は年齢が近いために区分けとしてはやや苦しい。むしろ積極的で奔放な蘭の若々しさと、初心で淑やかで奥ゆかしく健気な、それでいてオンナに火が灯れば情熱的なしのぶとの対比で見るべきかもしれない。誰もが振り向くような美貌と抜群のプロポーションでクールな色気を振り撒く美香もまた妖艶かつ淫靡な一面を秘めている。 義息がいないので義母ではなく、義弟もいないので兄嫁でもない。故に「後妻」なのであろう。と言うのも主人公は60歳。つまり、美香を除けば義父と嫁という回春路線の作品である。ただし、美香には思春期を迎える義息がいて、ちょっとした彩りが加えられており、5歳になる蘭の実子には大きな秘密が隠されている。 美香の淫らギャップにこそ多少の力業を感じないではないが、蘭の積極性や、しのぶが亡夫に操を立てるにはちゃんとした理由がある。設定にせよストーリーにせよ、よくよく練られていることが窺える。官能ありきで物語性が二の次になりがちな最近のフランス書院文庫にしては骨組みのしっかりした作品と言える。そして、そんなストーリーにおいて主人公は割とガチな、浮気の域を超えた不倫の経験がある。妻への愛情が失せた訳でもなく、感謝の念もあるのだが、それはそれとして不倫の過去を有しているところに妙なリアリティがある。先立たれたことで初めて気づかされる妻の存在でもある。こうした奥行きのある人物描写が理性と感情の狭間で揺れる男女の心の機微を浮き彫りにさせている。 冒頭から人目を憚らないスキンシップから夜這いまで仕掛ける蘭。最後まで主人公の想いに応えるか否かを迷うしのぶ。旺盛な色気を醸しながらも楚々とした風情を見せつつ本性はやはりと思わせる美香。三者三様の魅力を放つヒロイン達が繰り出す官能描写もまた濃厚である。九州を巡る旅行で全編が描かれており、浴衣姿を基調としてチラリズムを内包した艶やかさも良好。旅館の部屋を主軸としながら露天風呂があれば束の間にラヴホテルへ抜け出すといった流動的なシチュエーションもまた良い。
DSK
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