夢か現か人妻か の商品レビュー
現実感のある素敵な官能ファンタジー
現実に起こった事だと思ったら夢だった……という夢オチは大体において残念な結果を招くものだが、これを逆手に取ったかの設定に唸ってしまう。「夢か現か幻か」をモジったタイトルも読み終えると的を射ていると納得する。偶然に知り合った、もしくは身の回りにいる、ちょっと気になる女性とこんな関係...
現実に起こった事だと思ったら夢だった……という夢オチは大体において残念な結果を招くものだが、これを逆手に取ったかの設定に唸ってしまう。「夢か現か幻か」をモジったタイトルも読み終えると的を射ていると納得する。偶然に知り合った、もしくは身の回りにいる、ちょっと気になる女性とこんな関係になれたらいいなぁ、といった願望が夢という形で描かれ、なんだ夢か、と思わておいて現実ではそれ以上の関係が実現するというアップダウンが面白い。 さらには、当初の正夢との認識が、夢と異なる行動をとったことで結果が変わり、予知夢なのでは?と推移していく。予知夢ならば夢で見た結果を自発的に変えることができる、だとしたら……といったように、ただ首を傾げていただけの主人公が次第に変化を見せ、最終的には想い人を守るまでになっていく。この段階的な変化が見事である。また、主人公にいろいろな夢を見せることで多彩な官能シチュエーションを生み出し、意外性をもたらしているために小説としても優れていると感じられる。様々なヒロインが登場しつつ最後はメインヒロインと結ばれるストーリーの骨子は王道的とさえ言えるのに、肉付けの仕方でこうも変わるのかと唸るばかりである。しかもメインを出し惜しみするでもなく、割と早い段階で一度関係しているため、メインヒロインなのに官能的には最後に一度きり、といった歯痒さもない。 ただ、本作を含め、ここ数年の葉月作品には少々困っている。物語が面白いために先を読み進めたくなり、官能場面を流し読みしてしまう本末転倒が生じるからである。
DSK
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