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私の墨東綺譚 増補新版 の商品レビュー

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2020/10/24

安岡章太郎 「私の墨東奇譚」、1999.6発行。昭和11年2月2.26事件、5月阿部定事件、昭和12年盧溝橋事件から日中戦争に。そんな昭和12年4月、2つの新聞小説が。横光利一の「旅愁」と永井荷風の「墨東奇譚」。子供と大人の作品と揶揄され、「旅愁」は連載中断に。カフェに飽きて玉の...

安岡章太郎 「私の墨東奇譚」、1999.6発行。昭和11年2月2.26事件、5月阿部定事件、昭和12年盧溝橋事件から日中戦争に。そんな昭和12年4月、2つの新聞小説が。横光利一の「旅愁」と永井荷風の「墨東奇譚」。子供と大人の作品と揶揄され、「旅愁」は連載中断に。カフェに飽きて玉の井に河岸を変えた永井荷風。当時7~800人もいた玉の井の娼婦、お雪を描いた物語。木村荘八の挿絵が当時の雰囲気を醸し出しています。

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2020/09/22

昨年文庫本で荷風の小説全編をも付した決定版が出た様なのだが、私は単行本の感想を記す。 荷風の「濹東綺譚」は名作の誉れが高い。評論家加藤周一はいう。「(荷風は)明治国家のみならずその社会と明白な距離を置き、組込まれを拒否して批判的な立場を貫き、しかし幸徳秋水や河上肇とは違って、そ...

昨年文庫本で荷風の小説全編をも付した決定版が出た様なのだが、私は単行本の感想を記す。 荷風の「濹東綺譚」は名作の誉れが高い。評論家加藤周一はいう。「(荷風は)明治国家のみならずその社会と明白な距離を置き、組込まれを拒否して批判的な立場を貫き、しかし幸徳秋水や河上肇とは違って、その社会の変革を志す変わりに彼ら自身の自己実現を目的とし、信念と原則にしたがって生きることに自覚的であった。(略)(「綺譚」は)荷風の小説の頂点であり、戦時下の日本に見るべき文学作品として「細雪」と双璧をなすだろう」(「日本文学史序説」) そういう文章は固いと思う御仁には映画を紹介する。新藤兼人監督「濹東綺譚」(1992)である。当時の色街の「雰囲気」を見事に再現し、お雪役の墨田ユキがまた素晴らしかった。彼女はこの1作で女優賞を獲り、その後お雪のように見事に消えていった。原作とは違うラストが評価は分かれるが私は好きだ。 味わい深くかつ柔らかい文章となればこの著を推薦したい。本文に則して、自らの感慨と共に当時の雰囲気を紹介する。簡潔にして的をえた16章。1冊をもってこの本よりも薄い「濹東綺譚」を語り尽くしている。新聞連載当時の木村荘八の挿絵、荷風自ら玉の井を写したスナップ写真、その他貴重な資料が豊富に入っていて、本文とは関係ないところで私は感慨に耽った。 追記。私は、この案内本を読んで実に15年後に濹東を歩いたのだが、もはや古い建物の「欄干」に僅かにその痕跡を残すのみだった。大人の文学案内である。

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2020/05/04

本書は、安岡章太郎の「濹東綺譚」を巡る随想と、「濹東綺譚」を併せて収録した、とてもお得な一冊であり、ページを行きつ戻りつしながら濹東綺譚を味わうことができる。小品ながら、卓抜した荷風論ともなっている。

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2020/01/15

名作の舞台と戦争へと向かう時代を合わせて読み解く、昭和の迷宮への招待状。評論「水の流れ」を増補し、荷風『?東綺譚』を全編収載。〈解説〉高橋昌男

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