ギリシアの聖夜 の商品レビュー
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面白かったです。 「選択制の記憶喪失」って、そういうのがあるんだと初めて知りました。判りやすくいえば、ある特定の事柄についてのみの記憶が失われ、他の一切は覚えているということですね。 ヒロインのイーデンはまだ生後九ヶ月の幼い男の子のお母さん。ですが、早々に二人目を妊娠しています。 物語りはイーデンとその夫アリスティドが車で走行中に起きた事故直後から始まります。 アリスティドは意識不明の状態が続き、切迫流産だったイーデンは夫と面会もできませんでした。やっと危機を脱して再会した夫は何故かイーデンの存在だけを忘れていて-。 そりゃあもう、ショックでしょうね。夫がすべての人を覚えているのに、妻である自分だけが忘れ去られているなんて。 しかも、イーデンは事故が起こる直前、アリスティドに -離婚しましょう。 と、爆譚発言をしているのですから。 二人の夫婦仲は随分前から、こじれていました。アリスティドはイケメンで凄腕の実業家で、結婚後は離れて暮らす方が多いくらい、しかも個人秘書をイーデンからすればいささか「過度に重用」しすぎていて、それもイーデンの気に入らない一つでた。 イーデンは夫が自分と結婚したのは「婚前に妊娠してしまったから」だと思いこんでいます。愛されて必要とされて妻となったわけではなく、子供のための結婚だと思っているのです。 そんな状況ですから、イーデンが -夫は自分を愛していない、疎ましい存在だから、私のことだけ記憶を失ってしまったんだ。 と思っても仕方ない面もあるにはあるんですが、実はそうじゃなくて、アリスティドは「愛する妻と別れたくない」からこそ、妻の記憶を失ってしまったんですね。 彼にとっては、それほどまでに妻からいきなり突きつけられた離婚要求が大打撃だったわけです。 思い出さなければ、失うこともない-なんかよく判るような判らないような理由ですが。 読者の立場から物語りを読んでゆけば、その辺りの理由は意外としっくりと想像も理解もできます。 ラストでアリスティドがすべての記憶を取り戻し、クリスマスのサプライズとしてイーデンに挙式をプレゼントする場面が素敵ですね。 一件落着で、めでたしめでたし。 読後感も良い、ほっこりと楽しめるお話です。
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