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平成怪奇小説傑作集(3) の商品レビュー

4.2

14件のお客様レビュー

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2020/01/14
  • ネタバレ

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最終巻は平成20年(2008年)から平成30年(2018年)までに発表された15編が収録。 読んだことがあるのは『成年』(京極夏彦)。数ある中からこれを選ぶか、という感じ。 『鬼のうみたりければ』(澤村伊智)は、比嘉姉妹シリーズの1編でしょうか。双子、取り換えっ子とか、好きな要素が詰まっています。 一番好きだと感じたのは『雨の鈴』(小野不由美)です。 喪服の女は明らかに災いをもたらす存在だけど、因果関係や理由がわからない。対処方法はあるにはあるけど、相当強引なことをしなければならないし、自分に害が及ばないようになっても、消えるわけではなく、存在を感じ続ける。とまぁ、ちょうど良い匙加減の怖さだと思います。 このシリーズ3作を通して、いろいろな怖い話、不思議な話を読むことができ、読書の幅も広がりそうです。

Posted byブクログ

2020/06/07

全3巻なので、楽しみにして読んだ。いわゆる実話系怪談が入っていたのもこの巻だけだったように思う。恒川光太郎が好きだったので「風天孔参り」が入っていて嬉しかった(個人的には風の古道がベストではあるが)。特に好きなのは最後の2話「海にまつわるもの」「鬼のうみたりければ」怖いと思いなが...

全3巻なので、楽しみにして読んだ。いわゆる実話系怪談が入っていたのもこの巻だけだったように思う。恒川光太郎が好きだったので「風天孔参り」が入っていて嬉しかった(個人的には風の古道がベストではあるが)。特に好きなのは最後の2話「海にまつわるもの」「鬼のうみたりければ」怖いと思いながらもページを繰る手が止まらない体験は初めてだった。やっぱり恐怖は好奇心をくすぐるものだと思う。

Posted byブクログ

2019/12/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

怪談実話のブーム。 編者がその渦(真っ最)中の人だからその色が濃くなるのは必然なのだが。 面白いのはピックアップされたその系列の作品群が、意外やジャンルに甘んじることなくジャンル自体を脱構築しようとする……内側から破ろうとする力(内破)に満ちていることだ。 たとえば京極夏彦「成人」舞城王太郎「深夜百太郎」黒史郎「海にまつわるもの」澤村伊智「鬼のうみたりければ」。 しかし個人的に好きなのは、もっと「まっとうな作り物」(という言い方がどうか知らんが)の高原英理「グレー・グレー」大濱普美子「盂蘭盆会」恒川光太郎「風天孔参り」藤野可織「アイデンティティ」諏訪哲史「修那羅(しょなら)」あたり。 特に文体の力。端正であったりねちゃっとしていたりからっと乾いていたり。 私小説のしがらみから純文学を飛躍させるには、文体、あるいは幻想小説というスタイル、が必要なのか。歴史的には。 このへん、スタイリストを自称する澁澤龍彦や中井英夫に考えを聞いてみたいところだが。 また数年前ならジェントル・ゴースト・ストーリーに属するだけで涙腺がゆるんでいた自分が、そうではなくなった、という個人史にもいずれ光を当てて内省していきたい。 いずれにせよ東雅夫さんの労作に今回もまたお世話になった。 ■京極夏彦「成人」 ※複数の文章が引用されるうちに、怪談実話ものの脱構築が行われ、最終的には本編自体が作者自身の怪談実話である、という高等テクニック。 ■高原英理「グレー・グレー」★ ※作中でその単語は出ないが、ゾンビもの。ゾンビ化した恋人が腐らないよう心を配る男性の語り。あらすじに起こすと単純だが、文体の機微。そして抒情。津原泰水に匹敵する文章力だ。 ■大濱普美子「盂蘭盆会」★ ※これは恐い。部屋にでんと腰を据えて、姉夫婦と姪の死を見送り、死後をも見ている、視点人物の怖さ。物言わぬ女の怖さ。あらすじに起こしてみるとそうでもないが、文章の細部に、冷静な加虐心といったものが宿っていて、文章そのものが冷え冷えと恐い。 ■木内昇「こおろぎ橋」(※「こおろぎ」は「虫」偏に「車」) ※視点人物が実は……という王道。 ■有栖川有栖「天神坂」 ※これはずいぶんと調子のいい話(男性にとって)で、とりたててフェミニストならずとも鼻白んでしまう。 ■高橋克彦「さるの湯」 ※東日本大震災を経て。これもまたしかし、話のための話という程度にとどまる。 ■恒川光太郎「風天孔参り」★ ※ある人物が「人間は、弱いね」と呟くのだが、その一文に至る積み重ねが凄まじい。樹海=自殺志願という公式を、少しずらした視点で見(続け)る、傑作。 ■小野不由美「雨の鈴」 ※話のために作った設定、という感は否めない。が、「恐ろしいものなのに、やはり悲しげに見えるのはなぜだろう」という一文はよい。 ■藤野可織「アイデンティティ」★ ※ひとつのオブジェから奇想を紡ぐ。まさに最高の現代作家! ■小島水青「江の島心中」 ※好みとしてはいまひとつかな。それにしても子持ち石というのは、いいな。 ■舞城王太郎「深夜百太郎(十四太郎、十六太郎、三十六太郎)」★ ※【三十六太郎 横内さん】の畳みかけるような抒情よ!これぞ舞城の持つモノローグの魔力。「ごめんだけど、本当に嬉しい」には怖さと愛おしさが宿って。 ■諏訪哲史「修那羅(しょなら)」★ ※古めかしい言葉遣いだが、県道、プロデューサー、メールなどで現代だと示されている。流浪と性。 ■宇佐美まこと「みどりの吐息」 ※サンカ的な話かと思いきや、ファンタジックへ。それにしても、伝聞に伝聞を重ねる形式は、怪談実話を経たジャンルの特性なのだろうか。 ■黒史郎「海にまつわるもの」 ※怪談実話をスルーしてきた身としての感想。これでもかというほど実話的怪談が収集・披露される。ここに至っては収集後いかにコンセプチュアルに開陳するか、という手腕が評価の対象になるのだろうか。テーマと、断片の関連性に、その空隙こそにうすら怖さを感じるという、けっこう高等な遊戯。あるいは平成の徒花、しぶとく残り文化になるのかもしれない。 ■澤村伊智「鬼のうみたりければ」 ※新聞記事→ファナティックかつユーモラスな語り→新聞記事、という見本のような短編。 ■東雅夫 編者解説 ※やはり3・11。現実世界を凌駕しかけた恐怖を物語の中に追い込むこと。

Posted byブクログ

2019/11/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

第3巻、完結編。 全3巻というのが惜しいアンソロジーだった。あと2〜3冊出してくれても一向に構わないのだがw 大濱普美子と藤野可織が収録されていたのが嬉しかった。

Posted byブクログ