内親王の降嫁 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
ほぼ一気読み。 面白く、なおかつ読み応えのある作品でした。 本書を見つけたのは、たまたまアマゾンで面白そうな小説を探していたときです。 タイトルにまず惹かれ、次に平安時代という設定に興味を持ちました。 内容としては、女装花嫁ものであり、BLにはありがちなストーリーではありながら、読者を飽きさせずにラストまで引っ張る魅力的な作品です。 帝の妹宮を臣下が帝の命によって娶り、実はその内親王が男性だったという設定は、正直、かなり前の宮乃崎桜子さんの作品「斎姫異聞」シリーズを思い出しました。 私はあのシリーズも大好きで、シリーズ全巻読破したファンです。 (ただ、「斎姫異聞」は内親王が男ではなく両性具有でした) 大納言の要職にある藤原光則は、義賊十六夜を捕縛するため、大納言と検非違使別当を兼任することになりました。 そして、その十六夜が他ならぬ妻として迎えた皇女、楓の宮だったのです。 なかなか言いなりにならない妻を持てあまし、無理に関係を持ってしまうも、自分を翻弄する妻に次第に惹かれてゆく光則の心の動き、また、妻が十六夜であると知りつつも断罪できない葛藤などがよく描かれていました。 楓の宮側の光則に対する気持ちの揺れや変化も丁寧に描かれています。 2人が少しずつ距離を縮め、心を通わせてゆく過程がよく伝わってきました。 重厚な世界観と洗練された文章で、BLというよりは何か歴史小説を読んでいるような気持ちになります。 素晴らしい作品に巡り会えました。 なお、本書の前に姉妹編のような作品があると知り、早速調べてみたところ、既に紙書籍は新品としては流通はないようです。 本作品にも登場した光則の弟狭霧が主人公であり、狭霧もまた男ながら姫として育てられたとのこと。狭霧は最後は男性に戻り、本来の性を取り戻して生きるという道を選びましたが、こちらの楓は光則の側で「妻」つまり、女性として偽りの性で生きる道を選択します。 それらの対照的な人生の選択というのも興味深く、同じ境遇ながらそれぞれ違う道を選んだ2人の主人公、しかし、違うように見えて実は「愛をまっとうする生き方」である根本は同じなのだと判り、読了後に深い余韻を感じます。 姉妹編の「姫君の輿入れ」も古本で入手可能なので、手配しました。そちらも楽しみです。
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