SF作家は担当編集者の夢を見るか? の商品レビュー
今回は、大河と秀の大人カップルのお話…… って、読んでる方にはよくわかると思うんですけど、この大人カップル、一番情緒的には子供だと思うので、そんなに大人な関係! というのはまったくなくて。(主に秀) それでも月日は流れて、真弓と勇太は20歳の成人式を迎えた。 人よりゆっ...
今回は、大河と秀の大人カップルのお話…… って、読んでる方にはよくわかると思うんですけど、この大人カップル、一番情緒的には子供だと思うので、そんなに大人な関係! というのはまったくなくて。(主に秀) それでも月日は流れて、真弓と勇太は20歳の成人式を迎えた。 人よりゆっくり大人になっている秀がようやく周りに目を向け始めて、世界が“広がった”から、勇太が成人しても、思いの外、穏やかに受け入れている。 で、問題はですね。 前作からようやく秀が書いている小説がどのような話なのかが明かされつつあるのだけれど。 それはどうも、普通に読んだらとてつもなく救いようのない話のようで、そういうものは一部の人を引き付けるけれど、一部の人には厭われる。 それに秀が気づいた。 「自分の書いたものが人を傷つけるかもしれない」 ということに。 なんというか、大体、暗くて重いものを書く人って、自分もそういうものを読む人なので、自分の心を抉られることに喜びを見いだせるということがわかっていて書いているのだと思っているんですけど。 秀はそういう自覚もなく書いていた……のだとしたら、気づいたらショックだよね…… でも、新しく秀の担当についた久賀が秀に言ったことがすっごく痛くて。 「書いたものは人を傷つけます」 って。 そうなんだよ……そうなんだよね。 どんなものであれ、人を傷つけることを意図していないものでさえ、例えば事実を述べただけのはずの新聞記事でさえ、存在した瞬間に人を傷つける可能性が存在し得るわけです。 つらい…… つらいな…… ただそれを秀は知らなくて。 気づいてなくて。 見てなくて。 それと向かい合わされたのが今でよかった。 そして、それと向き合わせることができるようになったのは、仕事とプライベートを切り離すことができてからだっていうのが、またちょっとしんどいんですけど。 それはそれで、秀にとっては必要なプロセスなんだろうな……と思わせてくれる話でした。 もうずいぶん前から読み続けているシリーズなので。 秀の成長と、大河との関係性の変化が嬉しくもあり、寂しくもあり。 そして、この巻で終わったかと一瞬思って、心臓が止まりかけたんですけど、そうでなかったようで何よりです。 まだ、私がこのシリーズの最終回を読む覚悟ができていない…… 次の作品が楽しみです。
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