レギュラーになれないきみへ の商品レビュー
競技は違うが、私自身もレギュラーから外れ、挫折を経験し、何者でもない今がある。図書館を歩き、偶然手に取って拝読。歳をとって思う。あの時があるから、今も多少頑張れている。
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〇岩波ジュニア新書で「学校生活」を読む③ 元永知宏『レギュラーになれないきみへ』(岩波ジュニア新書、2019) ・分 野:「学校生活」×「部活」(運動部) ・目 次: はじめに 1.甲子園のスタンドから巨人の星を目指す 松原聖弥 2.野球の世界に別れを告げてクリケット...
〇岩波ジュニア新書で「学校生活」を読む③ 元永知宏『レギュラーになれないきみへ』(岩波ジュニア新書、2019) ・分 野:「学校生活」×「部活」(運動部) ・目 次: はじめに 1.甲子園のスタンドから巨人の星を目指す 松原聖弥 2.野球の世界に別れを告げてクリケットに転向 山本武白志 3.三年生部員が挑む最後の試合「ラストゲーム」 塩見直樹 4.名門・広陵を準優勝に導いた背番号18のキャプテン 岩本淳太 5.26歳でIT会社社長になった「圧倒的な補欠」 須田瞬海 6.伝説の高校野球チームで得たもの なきぼくろ 7.東京六大学初の女性主務が見た「補欠の力」 小林由佳 8.「奇跡のバックホーム」を生んだ師弟の絆 矢野勝嗣 おわりに ・総 評 本書は、学生野球において試合に出場できない「補欠」だった人たちへの取材を通して、その時の経験が人生にどのように役立っているのかをまとめた本です。著者も立教大学野球部で「補欠」時代を長く過ごした経験を持ち、これまで学生野球に関する本をいくつか発表しています。 運動部――特に団体競技は、試合に出場できる人数が限られ、同じ部員でも「レギュラー」と「補欠」に分かれます。ただ、補欠であっても、あるいは、補欠「だからこそ」経験できることや担える役割があることに気づいて欲しいと思います。この本を読んで面白いなと思った点を、以下の3点でまとめます。 【POINT①】「いい補欠」の条件とは? いい補欠選手の条件とは何か――著者の取材を受けた複数の人が共通して挙げるのが「他人の能力を素直に認めること」です。自分より優れた能力を持つ人間を認めることで、逆に、自分の能力(長所)が見えてきます。団体競技では、出場する選手たちには様々な役割が求められます。チームメイトとの実力を比較して、自分の働き場所(=ポジション)を探すことで、活路を見出せることもあるでしょう。慶應義塾大学野球部において、初の女性主務として選手をサポートしていた小林さんは「試合に出られないからと言って競技から離れるんじゃなくて、「自分にできること」を探してほしい」とアドバイスしています。 【POINT②】勝てるチームにおける補欠の「役割」とは? ある野球指導者の話として、自分の高校が甲子園出場を決めそうになったとき、補欠の選手で素直に喜ぶのは「2割くらい」だそうです。しかし、グラウンドでは戦力になれないとしても、レギュラーの背中を押すこと、心に火をつけることこそが「補欠」の大事な仕事です。だからこそ、控え選手の気持ちをないがしろにするチームは「ここぞというときに勝てない」と言います。試合には出ていなくとも、チームの一員として戦うために、他人の活躍を心から喜び、チームメイトの成功も失敗も「自分のことのように」感じる力を身につける――これが勝てるチームの秘訣と言えるでしょう。 【POINT③】補欠の「経験」が持つ価値とは? 補欠として試合に出れない悔しさやレギュラーを獲れない悩み――そうした経験は、人生を生きる上での“財産”になります。大学時代は「圧倒的な補欠」として野球に挫折しながら、26歳でIT会社社長に就任した須田瞬海さんは、大学で味わった悔しさや反省から「日が当たらなくなっている人や成果が出なくて立ち止まっている人がどのような感情でいるのか」を「自分事」として考えていると言います。レギュラーとしてグラウンドで注目を浴びる存在になれなかったからこそ、社会に出た時、思うような結果を出せずに悩む人たちに寄り添える“強さ”を身につけられたと言えるでしょう。 運動部に入部した以上、レギュラーになりたい、試合に出て活躍したいと思うのは当然ですし、だからこそ練習にも熱心に取り組む人が多いと思います。しかし、試合に出られない=「補欠」となった時、その情熱を失いかけてしまう時もあるでしょう。本書では、そうした人たちに向けて、必ずしも「レギュラー」はゴールではないこと、今まで頑張ってきたことは非常に価値のあることだったと背中を押してくれる一冊です。もし、部活動で思うように結果が出せず、悩むことがあれば、手に取ってみて下さい。 (1381字)
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