この社会で働くのはなぜ苦しいのか の商品レビュー
著者は愛知大学で社会学を教えている。専門は社会学・精神分析(ラカン派精神分析の枠組みによる現代社会・文化分析)。 本書はその立場から「なぜ今労働がこれだけ苦しいのか」を多角的に分析した一冊だ。 私が特に面白く読んだのは、〈第1章『何者』と「就活」を結ぶ線〉と〈第4章浮遊する組織...
著者は愛知大学で社会学を教えている。専門は社会学・精神分析(ラカン派精神分析の枠組みによる現代社会・文化分析)。 本書はその立場から「なぜ今労働がこれだけ苦しいのか」を多角的に分析した一冊だ。 私が特に面白く読んだのは、〈第1章『何者』と「就活」を結ぶ線〉と〈第4章浮遊する組織を埋める「ストーリーテリング」〉だ。 〈第1章『何者』と「就活」を結ぶ線〉では、朝井リョウの小説『何者』を分析対象として扱いながら、日本の実際の就活現場を批判的に読み解いていく。 パフォーマンス過剰で内実のない「意識高い系」や、それらを嘲笑する「意識低い系」の対立。就職活動の現場にはびこっているのであろう、息の詰まりそうな話だ。 〈第4章浮遊する組織を埋める「ストーリーテリング」〉では、『もしドラ』の大ヒットを議論の起点とし、その頃流行していたストーリーテリング・マネジメントについて分析していく。 「ストーリーテリング」の手法は様々な場面で使われてきた。例えば、ブランドの危機を救うために。組織の失われたアイデンティティを、物語によって再構築する。 このようなストーリーテリングは現実を隠し、幻想を共有させる「新しいナラティヴ秩序権力」であると筆者は鋭く指摘している。 アカデミックな文章なので仕方ないが、読むのに疲れた。 一文が長い。接続詞が少なく、文章間の論理関係が掴みづらい。全編を通して文章が角張った感じ… しかし、これだけの様々なトピックを扱いながらこの長さにまとめた筆者に感嘆した。
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