奥東京人に会いに行く の商品レビュー
奥多摩、浅草、佃島、羽田、大島、青島と、東京の果ての日常生活と伝承を知ることができる。学術的でなく、かといってエッセイでないので、奥東京を知りたいというニーズは満たされた。 旅をしたくなる本。
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丁寧な取材。伝承を聞くのは自分から聞きにいかなきゃいけない。当然、取材を受ける側も昔良いことも悪い事も話せる状況でなくては話せない。著者のコミュ力が羨ましい。 僕はちょっと人間が苦手。対人援助職なんだけどね。だから駄目って訳でなくて、苦手だから援助の受け手の中にある苦しみを...
丁寧な取材。伝承を聞くのは自分から聞きにいかなきゃいけない。当然、取材を受ける側も昔良いことも悪い事も話せる状況でなくては話せない。著者のコミュ力が羨ましい。 僕はちょっと人間が苦手。対人援助職なんだけどね。だから駄目って訳でなくて、苦手だから援助の受け手の中にある苦しみを推察する事はできる。「理解できるとか」「理解する事が大事」とか言うのを、聞くと虫酸が走ってた。まあ、正確には「理解しようする姿勢と推察する力は大事」なんだけど。人の苦しみが理解できるなんて、援助の受け手に叱られる。 さて、この本は一言で言えば"東京の中の絶えていく日本の地域文化と香りを見せてくれる本"だと思う。 著者は、"井の頭公園の「いせや公園店」で遺跡が発見され、その場所で旧石器時代の人達がバーベキューをやっていた"という記事を読み、好奇心を刺激され町を調べるようになった。日本各地に残された伝承や文化も調べるようになり、東京の端っこだけを巡ってみて著書の知らない東京を見つけにいった。端っこを最近のはやりの「奥」と呼んだ。 第1章:奥多摩 著者の丁寧な取材に好感がもてる。 今でも民話伝承が残るこの地は今後の人口減少で町はどうなるのか。さらなる人口減少に地域そのものが消えてしまうかもしれない。文化や民話伝承が消えてしまうのかもしれないと僕の感想。 第2章:葛飾区江戸川区 江戸時代以前の歴史も語られ、現在60代以上の方々に丁寧にインタビューをしている。読みやすい文章に好感がもてる。東京の東側。川が生活に密着していた時代はほんの数十年前であった。自分達の生活から川が離れてきたのは、交通手段やスマホなど伝達手段の変化が大きいと思う。僕は震災などで文明の利器が使えなくなると川が生活の中心になるのかなと夢想してしまった。 第3章:東京の海羽田 東京湾の地理だけでなく、様々な魚の宝庫を教えてくれる。そして東京湾に流れ込む隅田川の佃島の河口は羽田と同じように多くの無縁仏が流れる場所であったらしい。戦後、東京で広まった盆踊りの起源との記述。僕は、なるほどと思い感心しました。現代は都市での伝承は人の流動化があるからどの程度語り継がれるのだろうか。 第4章:伊豆諸島・新島村・青ヶ島村 題の副題が"最果ての地に生きるということ"とある。ここは昔から流刑地であるが流人は拘束されず様々な文化も持ち込んだらしい。島民は様々な、文化に触れられたようだ。また、どこにも逃げられない中で、絶海の孤島は自然も厳しくシャーマニズム的な儀式などが近年まで残っていた。自然が厳しく危険な場所だからだろう。それでも伝承も絶え少しづつ変化していく。人の生活の仕方が変われば、変化は必然なのだと思う。僕は、一体どう変わっていくのだろうかと想像してしまう。 著者の大石始氏は武蔵野美術大学を卒業後、レコード店店主をへて音楽雑誌編集部に在籍。約1年間の海外放浪し2008年にフリーランスのライターになった。ならばこの本はインタビューで作成した本ではなくほぼ著者の自筆なのだろう。とても読みやすく感心しました。 変化の激しい時期の現在。本書は文化伝承の繋ぎ手のような役割も担えるし、エッセイのようにもとらえられる。日本のアニメや映画を愛する人には是非読んでもらいたい。日本の香りというか、雰囲気を少し深く、人によってはより深く知ることができる一冊だと思います。また、僕の"人の心を推察する力"にもなりそうだ。
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10/10放送TBSラジオで話題 10/12発売!そんな奥東京人たちのポートレイトから東京の知られざる一面を描き出したディープ体験記。
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