平成怪奇小説傑作集(2) の商品レビュー
匂いの収集/小川洋子★★ 一文物語集(244〜255)/飯田茂実★ 空に浮かぶ棺/鈴木光司★★ グノーシス心中/牧野修★★ 水牛群/津原泰水★ 厠牡丹/福澤徹三★ 海馬/川上弘美★ 乞食柱/岩井志麻子★★★ トカビの夜/朱川湊人★★★★ 蛇と虹/恩田陸★ お狐様の話し/浅田次郎★...
匂いの収集/小川洋子★★ 一文物語集(244〜255)/飯田茂実★ 空に浮かぶ棺/鈴木光司★★ グノーシス心中/牧野修★★ 水牛群/津原泰水★ 厠牡丹/福澤徹三★ 海馬/川上弘美★ 乞食柱/岩井志麻子★★★ トカビの夜/朱川湊人★★★★ 蛇と虹/恩田陸★ お狐様の話し/浅田次郎★★ 水神/森見登美彦★★★ 帰去来の井戸/光原百合★★★ 六山の夜/綾辻行人★★ 歌舞伎/我妻俊樹★★ 軍馬の帰還/勝山海百合★ 芙蓉蟹/田辺青蛙★ 鳥とファフロッキーズ現象について/山白朝子★★★ 第一巻よりも、妖、幻想譚の傾向が強くなった気がします。あくまで好みの問題になりますが、幽霊譚的なホラーが好きなので、評価としてはイマイチです。
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平成、という時代を切り取って振り返る各分野での企画に関して、これまで意義を見出したことはあまりなかったが、このアンソロジーも2冊目に入りいざ通読してみると、世紀末から新世紀に至るあの時代の空気を色濃く反映し、それを読者に想起させる仕上がりになっていると感じた。 特に「リング」シリ...
平成、という時代を切り取って振り返る各分野での企画に関して、これまで意義を見出したことはあまりなかったが、このアンソロジーも2冊目に入りいざ通読してみると、世紀末から新世紀に至るあの時代の空気を色濃く反映し、それを読者に想起させる仕上がりになっていると感じた。 特に「リング」シリーズに内包される「空に浮かぶ棺」や、「ぼっけえ、きょうてえ」を引っ提げて文壇に降臨した当時の岩井志麻子氏のどす黒いパワーが漲る「乞食柱」、「幽」が元気だった頃に誌上で活躍していた作家群の作品などに、そうしたノスタルジーを覚えた向きは私以外にも少なからずいるのではないだろうか。 いずれにせよ、こちらも編者の志向が強く表れた一冊である。
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個人的に好きな作家もいたので、楽しく読めた。浅田次郎は他のも読んでみたくなった。グノーシス心中はグロすぎて腹の奥がムズムズした…。山白朝子「鳥とファフロッキーズ現象について」は乙一、中田永一と同じようにどれもオチがちゃんとあって読みやすい。いい読書体験でした。3にも期待。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
白眉は津原泰水と川上弘美と恩田陸と綾辻行人。 思えば1983年生まれの私。魂は昭和の終りに成立したが精神は平成で培われた。 坪内祐三「昭和の子供だ君たちも」に倣えば、平成の子供よ僕たちは、である。 だからこそこのアンソロジーは他人事ではないのだが。 白眉とは別に「過去の自分に刺さりまくる」のは牧野修「グノーシス心中」。 酒鬼薔薇聖斗や桜井亜美や柳美里やエヴァやを、まだ引きずっているのだな>俺。 @ ■小川洋子「匂いの収集」 ※実は小川洋子の単著は碌に読んだことなく雑誌で断片的にしか。しかしイメージ通り、人体フェティッシュで静謐で。よき。 ■飯田茂実「一文物語集(244~255)」 ※編者が悔し紛れに言う通り「とっておき名短篇」で読んだことあり。 ■鈴木光司「空に浮かぶ棺」 ※短編集「バースデイ」(「空に浮かぶ棺」「レモンハート」「ハッピー・バースデイ」収録)を高校生くらいに読んだ20年前を思い出す。当時はビデオだったのだ。さらにいえば、遥か遠いことだと想っていた性行為や出産や……。思えば鈴木光司は「よきパパ」化してからは鼻について遠ざけていたが、中高生当時の私にとってはホットな作家だったのだなあ……と遠い眼。 ■牧野修「グノーシス心中」 ※酒鬼薔薇聖斗+「ナチュラル・ボーン・キラーズ」=中二病の逃避行→バルザック「セラフィタ」へ跳躍。36歳の自分は遠い眼で見るしかないが、16歳の自分なら熱中したかもしれない。そういうたぐいの小説。 ■津原泰水「水牛群」★ ※幽明志怪シリーズは全作読んだが、この作品、あまり記憶になく、それなのに今回読んで胸を打つ。父のことが、いったん忘れられて甦る創作と並行して描かれる……手練れの小説だ。 ■福澤徹三「厠牡丹」★ ※短編小説の見本のような素晴らしさ。視点人物がぐるりと入れ替わる凄まじさ。 ■川上弘美「海馬」★ ※人魚が現在の都市にいればこうだろう……と安部公房「人魚伝」を連想。とはいえあそこまで具体的ではない寓話止まり。だからこそ跳躍力のある。「龍宮」は手に入れよう。 ■岩井志麻子「乞食(ほいと)柱」 ※乞食柱は境界。またいでくる男。性交で巫女の素質は失われる。 ■朱川湊人「トカビの夜」 ※遊んであげればよかった、と地の文にすら差別意識が現れている。ノスタルジーや長屋生活への懐古で、差別意識をよきものとしていっしょくたに見做そうとする語り手の(作者の)無意識が、透けて見えて、どうにもいや。 ■恩田陸「蛇と虹」★ ※姉と妹の会話は喰い違う。やがて射殺事件に踏み込んで。恩田陸はミステリーではなくミステリアスなのだ、と誰かが言っていた。姉妹が凶事を行ったのは間違いないが、その詳細は曖昧なまま(三島由紀夫が十代で詩作した「夕な夕な 窓辺に立ち待った 椿事」を連想)。「いのちのパレード」は手に入れたい。 ■浅田次郎「お狐様の話」 ※意外や初めて読む浅田次郎は、文体の作家……スタイリストであったのだ。血みどろ少女という個人的な好みを超えて、無関係の作家ではなくなった。これぞアンソロジーの意義。 ■森見登美彦「水神」★ ※お通夜小説というジャンルがあると判った。山尾悠子「通夜の客」とか、滝口悠生「死んでいない者」とか。いずれ10作くらい挙げてみたい。あるいはお通夜泥酔小説というジャンルか。 ■光原百合「帰去来の井戸」 ※よきジュヴナイルというか、ジュヴナイルの臭みというのか、すれすれ。 ■綾辻行人「六山の夜」★ ※ロジックとしては何が何やらわからないが、どうやら地獄の蓋が開いたという印象があり、よき。衒学趣味こそが、わからぬままに何やらを引き起こすという印象を持ってきて、わからないままに幻惑されるという。この作品を含む「深泥丘奇談」もまとめて読みたい。もう、積ん読を増やしてくれちゃって。 ■我妻俊樹「歌舞伎」★ ※ラジオから判らない言語が聞こえてくるという体験は、わが思春期の体験そのもの。 ■勝山海百合「軍馬の帰還」 ※東北弁そのものが異界発生装置。 ■田辺青蛙「芙蓉蟹」 ※うーん。 ■山白朝子「鳥とファフロッキーズ現象について」 ※むしろ理に落ちすぎているかもしれない、とすら思わせられたのは、東雅夫の配列の妙か。
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第2巻。 鈴木光司は何が収録されるのかな、と思っていたが、『空に浮かぶ棺』だった。岩井志麻子は『ぼっけえ、きょうてえ』じゃなく、『乞食柱』なのね。この短編、好きだったから良かった。 収録されている作家も、作品も、概ね妥当だと思う。続きが楽しみだ。
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面白かった! 好きな作家さんの作品が多かったので、重なってしまったのが、ほんのすこしだけ残念。 ですが、平成はホラーの良作が多い。
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