指揮者の使命 の商品レビュー

ラルフ・ヴァイケルト(著者),井形ちづる(訳者)

2019/12/28

著者ヴァイケルトは、度々来日してオペラやコンサートを指揮していることは知っているが、実際に聞いたことはない。図書館の新着図書の案内で見かけて、興味本位で借り出してみたが、意外と面白かった。本人も自認するとおり、いまはドイツ系音楽を得意とする指揮者と思っていたら、若い頃かはイタリア・オペラも歌劇場修行時代にせっせと振っていたみたい。本書でも書かれているが、ヨーロッパの、歌劇場をスタートとする指揮者の経験の厚みは、アメリカや日本のようなコンサート指揮者から始めるのとは大きなハンディがあることが、改めてよく分かる。井形ちづるさんの訳文はこなれており、巻末の音楽用語の追加説明等々、丁寧な本づくりは、出版社の良心を感じる。